北海道一周4,000km・49日間の自転車旅日記。
北の大地に広がる豊かな自然、歴史、文化、食との出会いを綴る。
【期間】2023年7月25日〜9月11日(49日間)
DAY10:2023年8月3日(木)
函館市内ビジネスホテル 発 → 函館朝市 → 函館元町 → 灯台の聖母トラピスト大修道院 → サラキ岬 → こもれび温泉 → 知内町農村公園(泊)
DAY10移動距離70km
累積移動距離737km
海産物満載の函館朝市
朝食を食べに「函館朝市」へ。戦後、農家が函館駅前で野菜を立ち売りしたのが始まりとされ、現在は250軒以上の店が軒を連ねる大規模市場に。
海産物や農産品の直売はもちろん、食堂では新鮮な海鮮丼が味わえる。名物の「元祖活イカ釣堀」では、自分で釣ったイカをその場で食べることもできる。活気と観光感に溢れた朝の時間だった。
元町の歴史的建築物や街並み
函館は、横浜・長崎と並ぶ日本最初の国際貿易港の一つ。いち早く海外文化が流れ込んだ街だ。
元町エリアには、当時の各国領事館や教会、和洋折衷の建築物が残されており、街並みはどこか異国情緒を感じさせる。
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函館市旧イギリス領事館(現・開港記念館)
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旧函館区公会堂
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函館ハリストス正教会
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カトリック元町教会
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函館聖ヨハネ教会
異文化が溶け合う独特の美しさに、歴史の厚みを感じる街歩きだった。
函館ラーメン かもめも今はない
開店を待って、名店「函館らーめん かもめ」で朝ラー。もちろん注文したのは塩ラーメン。
透き通ったスープはあっさりとしながらもコクがあり、ちぢれ麺に絶妙に絡む。具材はチャーシュー、ワカメ、メンマ、ネギとシンプル。まさに函館ラーメンの王道の一杯だった。
後日、この記事を書くために調べ直したところ、なんとこの店は2023年10月に閉店していたことを知る。名店の幕引きに、寂しさを覚えずにはいられない。
ハセストの出来立てやきとり弁当
昼食は、函館のローカルコンビニ「ハセガワストア」――通称「ハセスト」――の名物「やきとり弁当」。
店内のカウンターで注文用紙に好みを書き込むと、その場で焼き上げてくれるスタイル。
ちなみに「やきとり」と言いながら実際は豚肉が基本というのも函館流。これぞ地元民にも愛されるソウルフード。
トラピスト大修道院へ続く牧歌的な道
次に訪れたのは、日本最初の男子修道院「灯台の聖母 トラピスト大修道院」。
静かな修道院の敷地は、まっすぐに伸びる並木道に囲まれ、牧歌的な風景が広がる。どこかヨーロッパの田舎町を彷彿とさせるような、穏やかで美しい場所だった。
直営店で買ったトラピストクッキーを添えたソフトクリームは、濃厚でまろやか。今日は朝からずっと食べてばかりだ。
修道院に真っ直ぐと続く並木道は牧歌的な風情があり異国情緒があった。
咸臨丸終焉の地 サラキ岬
「サラキ岬」は、咸臨丸が沈んだ地として知られている。咸臨丸は幕末〜明治初期に活躍した西洋式軍艦で、以下のような数奇な運命を辿った。
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1857年:江戸幕府がオランダで建造
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1860年:日本船として初の太平洋横断を成功させる
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1866年:老朽化により帆船へと改装
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1871年:台風に遭遇し、木古内沖で座礁・沈没
岬には咸臨丸の縮小模型が静かに置かれており、海の彼方を見つめていた。
知内町農村公園にただ一人
今夜の宿は、知内川の河川敷にある「知内町農村公園」。設備は小さな炊事場と簡易トイレが2基あるだけ。管理人もおらず、ミニマル極まる無料の野営場だ。
だだっ広い芝生にぽつんと一人。3日前に泊まった「東大沼キャンプ場」のような整備された無料キャンプ場とは違い、こちらは“野営”の名にふさわしい、素朴で簡素な場所。
野営場にもいろんなタイプがあることを、体験を通して学んでいく。
日が沈むと、ヒグマの存在が頭をよぎる。広い空間にひとりでいると、普段なら気にしない音や影が気になってくる。
夜9時頃、駐車場に一台のオートバイが入ってきた。
「誰か来た、これでひとりじゃなくなる」と期待したが、そのバイクはわずか数分で走り去っていった。何だったのだろうか。
心細さと、野営の静けさの中で、「どんな環境でもキャンプを楽しめるようになりたいな」と思う。そんなことを考えながら、眠りに落ちた。