北海道一周4,000km・49日間の自転車旅日記。
北の大地に広がる豊かな自然、歴史、文化、食との出会いを綴る。
【期間】2023年7月25日〜9月11日(49日間)
DAY14:2023年8月7日(月)
あわび山荘 発 → ろうそく岩 → 三本杉岩 → 茂津多岬灯台 → モッタ海岸温泉旅館(泊)
DAY14移動距離78km
累積移動距離1,065km
セコマの「神クロワッサン」
朝食は、セイコーマート(通称セコマ)で買った「バタークロワッサン」と「チョコクロワッサン」。
店内のオーブンで焼かれたクロワッサンは、バターの香りがふんわり広がる。正直、予想以上のクオリティ。
この瞬間から、この旅の“朝食定番リスト”に即・殿堂入り。
トンネル祭り
今日のルートを一言で表せば「トンネル祭り」。なんと合計21本を通過。最長は3,340mの太田トンネル。
せたな町〜島牧村の区間は交通量が少なくて走りやすいが、トンネル内は湿気が強く、照明も薄暗くて不気味な空気が漂っていた。
途中、漁港で見かけたイカ釣り漁船。その無数のガラス製の集魚灯が並ぶ姿に、無骨で機能美のある美しさを感じた。
出会いがつなぐ、温かなおもてなし
せたな町に入ると、名所「三本杉岩」が現れる。高さ30mの3本の巨岩が、荒波の中にそびえ立つ光景は圧巻。
近くには、海から垂直に突き出すように立つ「ろうそく岩」。瀬棚港のシンボル的存在だ。
せたなでは、数日前に奥尻港のフェリーターミナルで出会ったサイクリストを訪ねた。彼は空き地を3年かけて開拓し、自らの手で石と木材を使った小屋を建てていた。まるで『北の国から』の黒板五郎さんのようだ。
ご厚意に甘え、ジンギスカンやホッケなど北海道らしいBBQをご馳走に。お腹だけでなく、心まで満たされた昼食だった。旅先での何気ない出会いが、かけがえのない思い出を作ってくれる。この場を借りて、改めて感謝を伝えたい。
熊の気配が迫る──茂津多岬灯台
午後は、標高290mの断崖に立つ「茂津多岬灯台」へ。灯台としては、日本一の高さを誇る。
だが、そこへ至る坂道が強烈。最大勾配は15.5%。さすがに自転車では登りきれず、押して歩く。汗が滝のように流れる。
灯台に到着すると、周囲は霧と静寂に包まれていた――が、突然、熊の糞を発見。
さらに、「ウゥーウゥー」という小熊らしき鳴き声まで聞こえてくる。距離は…明らかに近い。
これはマズい、と直感した。写真だけさっと撮って、すぐに引き返した。
これまでの旅で一番「命の危機」を感じた瞬間だった。
モッタ海岸温泉旅館で、ほっとひと息
今夜の宿は島牧村の「モッタ海岸温泉旅館」。周囲には飲食店もコンビニもないため、2食付きのプランを選択。
目の前に広がる日本海と、露天風呂から望む夕陽。そして、食卓には新鮮な海の幸。
ハードな一日だったぶん、静かな時間が身体に染み渡る。
2週間で1,000km越え
旅も気づけば2週間が経過。毎日が濃密で、時間が飛ぶように過ぎていく。
そして今日、累積距離がついに1,000kmを突破。人生でこれほどの距離を自転車で走ったのは初めてだ。疲れもあるが、達成感の方が大きい。