2025年4月9日から22日までの13日間、九州を一周する自転車旅に出た。今回の旅はその第一弾として、新門司港(福岡)から志布志港(鹿児島)まで、約900kmを走り抜けた記録をお届けする。
DAY6:2025年4月14日(月)
国東市国東町内発→ 杵築城 → 酢屋の坂 → レストラン東洋軒 → 血の池地獄・龍巻地獄 → 湯けむり展望台 → 鬼山地獄・かまど地獄 → 鉄輪むし湯 → 別府市内の宿泊施設泊。
移動距離:66.5km (計:396.3km)
累積標高差:725m(計:3,919m)
この日は、強風と雨に翻弄された一日だった。予定していた別府観光を大幅にカットし、早めに宿にチェックインする判断を下した。
杵築の朝、静かな城下町を走る
最初の目的地は「杵築城」。開館前だったため城内には入れなかったが、城前から望む杵築市街と守江湾の景色は、朝の静けさの中に穏やかさがあり、心が落ち着いた。
その後、城下町にある「酢屋の坂」へ。土塀、石垣、石畳が美しく調和したその坂道は、時代の記憶を静かに伝えるような風情があった。
ご当地グルメ体験:とり天発祥の味
昼食は、とり天発祥の店「レストラン東洋軒」へ。外はカラッと揚がり、中はふっくらジューシーなとり天に、オリジナルのかぼす酢醤油が絶妙にマッチ。 「食べる」というより「体験する」と言いたくなるような、印象深い一皿だった。
荒天の中の地獄めぐり
別府といえば外せない「べっぷ地獄めぐり」。まずは柴石温泉近くにある「血の池地獄」と「龍巻地獄」へ。血のように赤い熱泥の池と、一定間隔で噴出する間欠泉は、それぞれ自然の力強さを感じさせてくれた。
続いて「湯けむり展望台」を目指して急坂を登っていくと、雨風が一層激しくなってきた。展望台に着いた頃には本格的な荒天に。かんなわの街を覆う湯煙も、今日はどこか寂しげに見えた。
ここで、立てかけていた自転車が突風にあおられ、大きな音を立てて倒れた。起こしてみると、左のブレーキレバーが大きく内側に曲がってしまっていた。ショックだったが、幸いブレーキ操作に支障はなかったため、そのまま次の目的地へ向かうことにした。
その後も「鬼山地獄」「かまど地獄」を足早に巡った。鬼山では温泉熱を利用して大量のワニが飼育されていたのが印象的だった。だが冷たい雨と風に体がすっかり冷え切り、残りの「白池地獄」「鬼石坊主地獄」「海地獄」は断念し、温泉へ向かうことにした。
身も心も温まる「鉄輪むし湯」
訪れたのは「鉄輪むし湯」。浴衣に着替え、薬草「石菖(せきしょう)」が敷かれた石室に横たわる。蒸気と熱で体の芯まで温まり、10分後には全身汗びっしょり。 内湯で汗を流す頃には、冷え切っていた身体も心もすっかりほぐれていた。
曲がったブレーキレバーは、宿で慎重に力をかけて元の位置に戻した。とりあえずの応急処置ではあるが、今後再び緩んだ場合は、自転車店で修理を依頼するつもりだ。
宿でのひととき
今夜の宿は、かつて勤めていた会社が制服をプロデュースしたホテル「AMANEK」。
スタッフがその制服に身を包む姿を見て、自分が関わった仕事の成果を間近に感じ、少しだけ誇らしい気持ちになった。
最上階の展望風呂から眺める夜景が、雨風に耐えた一日の疲れをやさしく癒してくれた。
あとがき
荒天に予定を削られた一日ではあったが、その分、予定外の発見や深い癒しがあった。旅は、思い通りにいかないからこそ、心に残るのかもしれない。