UTMBまであと2週間と少しになりました。相変わらず足の骨が折れたままで、今年のPTLは絶望的です(でも参加します)。
そんな訳で私が絶望的な状況で暗澹たる気持ちなのとは逆に、周りのUTMB参加予定者たちはなぜか強気な人が増えてきているように思います。
強気な理由がどうもUTMFを結構ゆとりをもって完走できたからという人も多いのですが、「これって少し違うぞ」と感じています。
まずUTMBとUTMFでは以下のような違いがあります。
1.UTMFは国内レースでメリットがたくさん、一方UTMBはアウェイの戦いでデメリットがたくさんです。
2.UTMBのほうがUTMFより歩きにくい(道が悪いという意味ではありません)。
少し詳しく見ていきます。
まず1ですが、エイドの内容が全然違います。
エイドの飲食物は、パン、チーズ サラミ、パスタ、コーヒー等で、UTMFのようにカレーや焼きそばなどの日本食は出てきませえん。短いレースではあまり関係ないですが、UTMBのように長いレースでは後半結構ストレスになります。
ですから洋食が苦手な人はお湯をいれるだけで食べられる乾燥米や味噌汁、日本茶そしてパスタにかける日本風味の(たとえばたらことか梅の)スパゲティーソースなどを日本から準備しておったほうがいいと思います。
そしてエイドでのサポートの内容もかなり違います。聞くところによるとUTMFでは友人のサポーターがもろもろ準備してエイドで待っていてくれて、シュラフや毛布にくるまって休憩することもできたようですが、UTMBではサポートは一人までで、サポーターのザックは35L以内、サポートできる区間もエイド内とそこから前方500m以内です。そして大半の人はサポートなしだと思います。
また言葉のハンディがあります。情報をつかむのも遅くなりがちですし、何か要望があってもなかなかうまく伝えることができないと思います。
以前イタリアに留学したことのある知人のトレイルランナーが「言葉ができないとUTMBは本来の実力より2-3時間は余分にかかると思う」といっていましたが、私も同意見です。
また大半の人が試走できません。私は試走はしない主義なのですが、完走のためには試走は明らかに役に立ちます。
かなりの人がリタイアするシャンぺラック(123㎞)ではその先のコースを知っているかいないかで、行くかやめるかの判断が違ってきます。
私の友人も何人かがシャンぺラックでリタイアしているのですが、彼らはまだもう少し先までなら行けるが、深夜にゴールまであと峠越えが三つある44㎞をコースの状況がわからないため行けるかどうか判断できず辞めたといっていました。
サポートや言葉や試走に関してはたいていの人には今からでははどうにもしようがないことなので、対策としては事前にUTMBのウエブサイトの説明を読み込む、地図(フランスの国土地理院のようなところの発行している地図、シャモニの本屋やスポーツ用品店でUTMBをカバーする地図と言えばすぐにわかってもらえます)でともかく詳しい情報を頭に入れておくことが不利な点を少しでもカバーすることにつながると思います。
次に2ですが、UTMBはコースの中心が標高1,500m-2,000mです。
一方UTMFは1,500m以下がコースになっており、やはり標高が低い方が多少ですが体の負担は少ないです。 このように書くと多くの人がそれでは低酸素室に入ってみようと思うかもしれません。
ただ詳しくは書きませんが私は低酸素室の利用は原則として反対です。代わりに奥秩父や八ヶ岳、富士山の5合目といった2000mから3000mぐらいへの登山をすればいいと思います。
次にあまり言われていないことですが、UTMBでは幅の狭い道のところでの追い越しが結構大変です。日本のように後ろが詰まっているのに気付いて自発的に道をゆすられることはまずないです。道をあけてくださいと声を出さない限りまず譲ってもらえません。これは結構ストレスがたまります。
そして大きな気温差です。昼間は標高の低いところでは30度近くなり、夜は山の上では氷点下になります。大きな気温差は2晩目にこたえてくると思います。対策としては夜間に南北アルプス、富士山等の標高3,000mを超えたところでトレーニングをすること(それもその前に体をかなり疲労した状態にして)ぐらいしかこの時期にはないように思います。
そしてかなりの確率で道を間違えます。マーキングはたくさんありますが日本のように親切なマーキングではありません。このコースを何回も歩いている人でさえ夜間はミスコースをしています。フランス人も間違えていますので自分で用心するしかありません。
事前に地図(大会のホームページの地図は簡単すぎて役に立ちません)を読み込んで コース(特に夜間に歩くことになる部分)を頭に入れておく(たとえば小さな川を三本渡ったらその先の尾根を右に回り込み、後ろに戻るような方向の尾根に取り付くとか)ことも必要だと思います。
このようなことを考えるとUTMFを完走できればUTMBも完走できるというのは少し楽観的過ぎると思います。 私はUTMFを42時間以内で完走できた人ならUTMBをぎりぎり完走する実力はあると考えていますが、完走する実力がある=完走出来るではありません。
あまり心配するのはいい結果につながらないと思いますが、楽観しすぎるのも問題です。今から半月で自分に足りないもの、修正したほうがいいところは何かを冷静に分析したらいい結果につながると思います。
私はたぶんPTLの最初の関門でひっかかりUTMBのコース上のどこかで皆さんの応援をしていると思います。MMAの渋井さんデザインの蚊取り線香Buffを身に着けていますので、コース上で見かけたら声をかけてください。
では皆さん完走に向けて頑張っていきましょう。私も1週間限定で最後の悪あがきをする予定です。