ショップをオープンさせて3年半、先月初めてレース開催・運営を行いました。
個人経営の小さなショップなので、事前準備はもちろん土日祝日に連休を取るのが難しく、興味はあるがなかなか実現出来なかったレース開催。コロナ禍で今まで開催されてきたビッグレースや人気レースの中止が相次ぎ、ニューノーマルとしてイベントの延長的レースが多発開催されるようになった昨今、「どうせやるなら面白い事、新しい事を」と常に考えていたタイミングでお声かけいただいたのがBackyard Ultra Last Samurai Standingでした。
Backyard Ultraとはアメリカ・テネシー州のラザレス・レイク氏が2011年に創設したウルトラレースで、2019年を機に小規模かつ簡易的に開催できることからアメリカ以外の国々でも盛り上がりを見せ、現在は50ヶ国以上で187のBackyard Ultraが存在します。Backyard Ultra Last Samurai Standing(以下、BULSS)は日本で開催されている本国アメリカのBackyard Ultra公認レースの名称となります。通常のレースはざっくり言うと「A(スタート)地点からB(ゴール)地点まで誰が一番速く移動出来るか」ですが、Backyard Ultraはそこからして全く違います…と言う事で、まずはBackyard Ultraのルール説明から入りたいと思います。
①1時間以内に6706mの距離を走ります
②次の1時間までの残り時間をリカバリーに使用出来ます
③各ループは厳密に1時間毎にスタートします。
④スタートする3分、2分、1分前にホイッスル音でスタート警告をします。
⑤全ての出走者は定められたスタートエリアからスタートの合図と同時にスタートしなければいけません。
⑥これを最後の1人が残るまで継続します。
⑦最後にコースを1時間以内に走り切ったものが勝者となります。
⑧ループ中にサポートを受けることは出来ません。
⑨選手はループを終えて、次のスタートまでの間はサポートクルーによるサポートを受けることが可能です。
とてもシンプルかつ過酷なルールで、最後の一人のみがフィニッシャーとなり、それ以外の選手はは全てDNF(途中リタイヤ)となります。
私がBackyard Ultraを知ったのは日本初開催となった2020年2月のBULSSをSNSで知ったのが始まりでした。
その時の感想は「何、この面白そうなレースは?」と、ワクワクしたのを今でも鮮明に覚えてます。
今年から東京の高尾大会と同日・同時刻スタートで、他の都市での開催が計画されBULSSの総合レースディレクターであるTomo’s Pit代表のTomoさんより、Nadi KItayamaさんを通じて京都大会開催の打診があり、「俺も走ってみたい」と本気で思っていたところ、走るより先に運営に携わる事になりました。
BULSSは本国アメリカのBackyard Ultraのルールに則って開催される事、過去に三回、東京高尾大会が開催されている事で大会運営形式がある程度フォーマット化されており、ある意味「ゼロからのスタート」でなかった点はとても助かりました。
また、我々が京都大会開催を決定する上で一番の決め手になったのが、「コンパクト開催可能」という点です。
競技の特性上、6706mの周回(または往復)コースで行われる為、エイドは一箇所だけスタート・ゴール地点に設置(水とお湯の提供)しますが、通常のレースのようにコース上の誘導等は基本不要(京都大会は一人配置)で、少人数での開催が可能という点でした。今回のLast Samuraiの栄冠に輝いた選手は30Lap走られ、距離換算すると200kmになるのですが、200km級のレースを5人/組×3組(8時間交代制)で運営した事となります。
ここまでの所、至れり尽くせり感が満載でたいした苦労もなく開催出来た様に見られがちですが、Backyard Ultraと言う競技特性が逆に大きな壁になった事が二点あったので、解決策と併せてまとめてみました。
①コース選定
単純に6706mの周回(または往復)コースを探すだけであれば簡単な話なんですが、昼夜問わず走れて、信号や車の往来がなく、おまけにレースがいつ終わるか分からないとなると話が大きく違ってきます。
スタート・ゴール地点となる会場では1時間おきにスタート合図のホイッスル音が響き、夜になると会場に灯りを灯しランナーもヘッドライトを点灯し走るため会場付近やコース上に民家があるとご迷惑をおかけしてしまいます。また信号ストップや車の往来がある道路の横断もタイムロスにつながるため避けなければなりません。それに加え、選手及び関係者の駐車場や選手のサポートエリア(3m×3mスペース/選手×参加選手数)の確保等、コース決定に至るまでは本当に苦労しました。
今回は会場、駐車場に関しましては大森リゾートキャンプ場様に全面協力いただき、コースはキャンプ場周辺の林道を「道路使用許可」を受けた上で使用させていただきました。
②インターネット環境
今回は福島、群馬、東京、京都、島根の5会場にて同日・同時刻開催となったのですが、大会期間中ずっと全5会場をオンラインで繋いで大会を盛り上げようと言うことになったのですが、大森リゾートキャンプ場があるエリアは限界集落でネット環境が劣悪で動画を数日間流しっぱなしと言うのは非常に高いハードルとなりました。様々な事をテストしましたが最終的に最近発売された工事無しで使用可能なWi-Fiルータを購入して解決する事が出来ました。
初のレース開催・運営と言う事で、この二点以外にも細かな苦労は数えきれないくらいありましたが、スタッフ全員で協力する事で乗り切る事が出来ました。エントリー開始してからも選手が集まるのか心配でしたが17名の方にエントリーいただき、レース当日は晴天に恵まれ、選手より多い23名ものボランティアスタッフのご協力を得て、勝者が決した30Lapまで、反省点や改善すべき点がなかったとは言い切れませんが、大きな問題もなく無事に大会を終える事が出来ました。
今回の経験は私自身にとって非常にいい経験となったと同時に、今まで気付かなかったレース開催・運営の苦労を身を以て知る事が出来ました。今後はこの経験をレースを走る時に思い出し、今まで以上にレース関係者への感謝を込めて走りたいと思います。最後になりましたが、ご参加いただいた全てのサムライ、ご協力くださった全てのボランティアスタッフ、大会開催を全面的にバックアップしてくださった大森リゾートキャンプ場、大会に協賛いただいた全てのスポンサーに改めて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
色んな苦労があったけど、今となってはBULSSロス(^^)