⑩Vallorcine – Chamonix(149.2km – 167.7km)
Vallorcineについて、まず補給。いつもの通りスープにパンを浸して食べる。
ジップロックにチョコを入れる。
それにしても大石さんが来ないなぁ。もう少し待ってみることにする。
待っていると、チーム100mileメンバーの黒瀬さんがやってきた。
この方はUTMFで27時間代だったから、この位置にいるのは意外だった。
聞けば、大腿四頭筋がやられているらしい。
20分くらい待っただろうか、大石さんが来た。と思ったら、救護テントへ直行。
10分後出てきたので話しかける。
「大石さん、大丈夫ですか?」
「あれ?ナミネム君。待っててくれたの?眠いし、もう足が痛くて」
「あのね、ここにいるアランがね、ずっと付き添いながら来てくれたんだ。」
といって、小柄なフランス人、イケメンのアランを指さす。
この先もアランが先導してくれるみたい。なんていい人なんだ。イケメンだしw
「これで、安心ですね。ちょっと、僕これから最後の山いってきます!」
と大石さんと別れを告げ、30分滞在したVallorcineを後にする。
Vallorcineを出るとしばらくは川沿いの平坦な道を行く。
少しVallorcineで休み過ぎたのか、足が固まって、今度は左足のシンスプリントも痛くなってきた。
こんな状態で、本当に最後20kmいけるんだろうか?
不安がまた出てきた。エイドに戻ろうかとも思ったけど、もう矢は放たれている。
このままいくしかない。
しばらくすると、最後の山Montetsが見えてきた。
選手のヘッドランプが見える。でも、ありえない角度のところまでランプが入り込んでる。
Montetsにとりついたら、アドレナリンが出てきた。すでに登りでも足は痛かったけど、
もう最後だからと思って頑張る。
反射板付きのマーカーを頼りにどんどん行く。
どんどん行く。どんどん。。。どんだけだよ!!
ほんと、行っても行っても、先がある。次第に、ここは日本じゃないか?という気がしてきた。
眠気からか、これはなんかOSJの企画かなんかで、山でロゲでもやってるんだっけか?
店長やタッキーさんはどこだ?と思うようになってきた。
Montetsの頂上でチェックを受けた時に、あ、これUTMBだった。と、ふと我に返った。
やっとついた。Montetsの頂上。
ふと見下ろすと、シャモニーの灯りが見える。
この時、不思議とまったく感動しなかったのははっきり覚えている。
それよりも、レースとしてのUTMBを諦めてしまった後悔や憤りから、一人泣いた。
今回は写真はとらない。でも、この悔しさを目に焼き付けておこう。そう思って頂上を後にした。
下りは長いので、ロキソニンを服用して、よろよろとゆっくり下り始める。
もう一歩一歩が痛くて、足首を動かすと、筋がギシギシ音がするのが分かる。
しかも右膝の内側まで激痛が走ってきた。
登りで抜いた人全員に抜かれ、そのたびに「congratulations!!」と挨拶をする。
もうここまで来るとみな一様に笑顔だ。
のりさんがお気に入りのFlégèreについた。でも、どこに小屋があるのか分からず、そのまま通過。
後は下るのみ。でもいってもいっても、左手に見えるシャモニーの街はまったく近づかない。
そのうち、僕だけ同じところをグルグル回っているんじゃないか?
というとてつもない恐怖に駆られた。やっぱり悪い夢でも見てるんじゃないか?
暫く行くと、黒瀬さんが見えた。
黒瀬さんも足がヤバそうで、ご一緒させていただくことに。
もう何度、スイッチバックしただろうか。急に見覚えのある道にでた。
宿泊しているコテージ近くの道だ。帰ってきた。やっと帰ってきたんだ!
黒瀬さんと歩きながら、やっぱりUTMBは長かったですね。など会話をした気がするが、実はあまり覚えていない。
ただ、早くベットで寝たいな。ビール飲みたいな。とか思いながら歩みを進める。
川に出た。市街地を流れる川だ。
ここで、ザックから皆が寄せ書きしてくれた日の丸を取り出す。
まだ暗かったので、人はあまりいないかなと思ったら結構人がいてびっくり。
「ブラボー」「ジャポネ」と言ってくれて、称えてくれている。
本当に沿道の声援がありがたかった。僕も日の丸を振りながら、ゆっくりだけど走る。
ゴール近く、なんと菊池ご夫妻とユキさんが待っていてくれた。
誰もいないと思っていたので本当にびっくりするとともに、うれしかった。
「おつかれー、おかえりなさい」
「ナイスラン」
と言ってくれている。
よかった。本当によかった。待ってくれている人がいるのがこんなにありがたいとは。
そして黒瀬さんと一緒にゴールゲートをくぐる。
36時間26分52秒
目標から遅れること4時間30分。
2009年激走モンブランをみて、翌2010年からトレランを始め、足掛け3年。
全てはこのゴールの為に費やしてきたと言っていい。
僕は、ついにそのゴールに立つことができた。
以上が、僕の体験したUTMB2013である。
今回、レースとしては全く納得いっていない。けれど、100mileのもう一つの側面である
「旅」ということについては存分に堪能することができた。
「旅は人生に似ている」といわれるが、100mileはまさに人生のようだと思った。
本当に困難な時に直面した時こそ、その人の真の強さや弱さが垣間見れると思う。
UTMBは凝縮された人生とも言える時間の中で、自分でも普段気づいていないような、自分自身の強さや弱さを見つめさせてくれた。本当に今までの人生最高の経験だったと思う。
今回、モンブランにてご一緒させていただいた仲間、また夜遅いにも関わらず日本で応援してくれた仲間、いつも迷惑ばかりかけている奥さん、そしてUTMBに参加できるような強い体に生んでくれた両親、関係するすべての人に感謝したいと思う。
ありがとうございました。
またいつか、今よりもずっと成長して、この最高な舞台に帰ってきて、今度はレースを最後までやり遂げたいと思う。
2 コメント
[…] い出していた。あそこもこんな感じで石があって、きつかったな。あの時はキツかったし、本当に悔しかったな(UTMB part6)。 と思いだしていたらいつのまにかピーク付近に。 ピーク手前の […]
[…] 夢にまでみたUTMBの舞台を走った直後に書いたブログは、こう締められていた。 […]