“選手とペーサーが求めることが違う時ありません?”
トモヤと帰りながら、車内でこんな会話になった。
10/9〜10/11は、台風で開催が危ぶまれたKOUMI100に、滋賀赴任中に加入したシガウマラ族の友人のペーサーとして参加。
前日入りして、テント泊の予定が、友人の宿に泊まれるということで、前日は快適にすごす。
大会当日はテントを張って、選手を待つつもりが、前日から振り続いている雨は全く止まず、族長にお願いして僕も車内に居させてもらうことに。
我がシガウマラエイドは、ビニールシートのタープも完備して最高に快適な状態w
サポート選手は4名ほど。
5:00 AM いよいよレーススタート。
相方のKさんは33hでの完走目標ということで、一周目は5:30とゆったりと入る予定。
選手を送り出すとかなり暇になる。
ターキーさんのペーサーの族長としばし車内で仮眠。
到着予定1h前からお湯を沸かしたり準備をする。
それにしても雨が止まない。同じ場所に居続けると底冷えする。
選手も寒いかもしれませんね…
とサポート同士で話す。
時間通りにKさん到着。
まだまだ元気ですぐに出発。
そしてまた仮眠。
雨は15時過ぎには上がったが、気温はあまり変化なし。
2周目から帰ってくると、徐々に周りの選手に疲労の色が現れてくる。Kさんはオンタイムで帰ってきて疲労感もさほどない様子。
気になっていた寒さは、それほど感じていない様子。
3周目は夜間パート。HURT100の経験から、同じ感覚で走っていても夜間はタイムがガクッと落ちて気持ちが沈むことを経験していたので、Kさんにはネガティブにならないよう伝えておく。
22時過ぎ、ターキーさんが3周目から帰ってきた。明らかに消耗している。
雨と選手が耕した結果、トレイルが極悪になっていて、田んぼのような林道。通し穴のような水溜りがあってかなり厳しいとのこと。
落とし穴てw
4周目、族長とターキーさん出発!
レジェンドの二人なので安心感がある。
23:55にKさん到着。疲労感がかなりある様子。胃も調子悪いみたいだ。念のため、ガシンサンとジンジャーエールを摂取してもらう。ニュウからの下りがかなり悪く、滑るとのこと。
いよいよ4周目、ペーシングがはじまる。
4周目は、事前の取り決め通り、僕が後ろについてサポートすることに。
まずは疲労度、平地のスピード、登り下りのスピード、どこか痛めているかなどを会話や観察などて把握していく。
どうやらチョウケイが少し違和感がある様子。
登りは問題なく行けそうで、スピードも出せている。林道の途中でふとKさんが
“建物が沢山ありますね”
と言う。いや、横には木しかない。
幻覚を見ているのだ。
どうやら、なかりの睡魔に襲われている様子で、少し蛇行している。
“建物が幻覚だっていう意識あります?”
と僕がいうと、そこは分かっている様子。
僕もUTMBで幻覚をみた経験があるので、自分で認識出来ているならそれほどヤバくは無いと判断。フラスコの水を目に入れて、顔を洗うと良いです。
と僕がよく眠気覚ましにやるティプスを伝授。
少し持ち直したかに見えたが、途中なんども眠気で立ち止まるように。
とりあえず最初のエイドまで頑張りましょう!励ましながら進む。
最初のエイドで5分ほど仮眠を取ってもらう。補給が進んでいなかったので、まずはジェルをゆっくり入れましょうと、ジェルを飲んでもらうと、直後に嘔吐してしまった。
とにかく、気持ちも悪くてなにも食べられないとのこと。こういう時の切り札であるガシンサンだが、それも効果がなかったようだ。
エイドはコロナ対応で水しかない。
止まっていても解決しないので、少しずつ進みだす。ロードではチョウケイが痛むとのことだったので、体操してもらい、僕がさらに大臀筋にマッサージを施す。コレもこれまで経験したティプスで、リョウくんがHURT100で同じようになった時に、これを施してもらって良くなった経験があったから。
結果、気にならなくなり、少し順調に進む。
ニュウの登りになると再び蛇行しだす。
やはり、単調な上りはかなり眠気がキツい様子。途中の岩でなんども休みながら進む。カフェインも胃がダメで摂取は難しそう。
経験上、下りは眠気もなくなり、幻覚もみなくなるので、なんとかピーク超えましょう!と励ましながら進む。
フラフラしながらもなんとかピーク付近に。
突然、ズボ!っと自分の足が沈んだ。
ただの水溜りだと思っていたら、なんと膝までの深さ。根っこも中にあるので靴が脱げそうで本当に焦った。
これが落とし穴かw
ニュウの下りもなかりの荒れ具合。
泥がこねられて、すべるすべる。
ただ、自分は割と得意なサーフェイスだし、HURT100のマノアも同じくらい劣悪なのでそれほど苦手ではなかった。でも、靴を滑らせて下る系の人じゃないと、かなり苦戦すると思うし、既に100km以上進んだ選手にはかなり厳しいはず。テクニックと経験が試される難しい部分だった。
夜が明けてきた。
Kさんに、
“夜が明けると全く違うレースが始まるので、眠気も無くなるし、ここからですよ!”
と励ます。
実はニュウの登りでKさんは完走を諦めている様子が見られた。事実、補給は相変わらず取れていないし、力が入らなそうだ。
僕もこのまま補給が取れない場合は、かなり厳しくなると考えていた。
ロードで歩きながら、ジェルを渡して、
“舐めるくらい少しずつで良いので、ジェルを含んですぐ水で薄めて飲んでください。”
と進めた。
“摂らないとだめですかね?”
と聞いてきたので、
“多分、この周回が8hなんで、つぎは8hで周らないといけません。その場合、いまのタイミングで補給して遅れを最低限にしないと、次の周回が厳しくなると思います。”
と摂取目的を明確にして、完走という大義名分を示した。少なくとも僕はまだ完走してもらうつもりですよと。
ロードで世間話をなるべくしながらなんとかジェルを飲み切ってもらった。
ここからの林道の下り。
マージンを産むのは、夜が明けてからのここしかないと踏んでいたので、先頭になって引っ張る。全然動けている。
結果、30分も貯金をつくって、7h30minで4周目終了!制限時間まで、あと8h30minもある。
ここで、ジェルが無理なKさんに、フラスコ全部コーラにすることを勧める。
僕もジェルがダメになるとよくやる手で、コーラだけでも40kmくらいは普通に進める。
コーラならいけるようで一安心。
念のため僕が多めにジェルを持ち、すぐに5周目に突入。
やはり夜が明けると、全く違うレースが始まる。暗く、苦しかった4周目とは全然違い、ハイキングのように楽しく会話しながら進む。5周目は僕が先頭で引っ張っていく。
途中、知ってる面々に挨拶しながら本当に楽しい。
フラフラしていたニュウもバッチリ登れ、下りもスムーズ。最後のくだりも気持ちよく?(本人は足裏がかなり痛そうだったが、あえてゆっくりでも走っていただく)走りぬけ、34:12で見事完走!!
シガウマラ勢は、完走率28%の中、なんと全員完走!
素晴らしい思い出に残る大会となった。
ペーサーとしては、最近だと、去年の信越100mileのトモヤ、1月のHURT100の藤岡さん、岩垂君のペーサー、今回のKOUMI100でかなり色々な経験を積むことができた。
なんといっても、これまでの自分の引き出しにしまってきた100mile Tipsをフルに動員して、選手が良い方向に行ってもらえるのが本当に楽しいし、醍醐味だなと思った。
ところで、冒頭のやりとり。
例えば、目標やペースを共有してても、僕がその達成のために良かれと思ってペーシングしても、実はランナーが望んでなかったりするパターンもあるなと考えてしまった。
案外、自分の価値観を押し付けてしまいがち?にならないかな?とも考えた。
例えば、トモヤは信越の時に戸隠で僕がキロ4で引っ張った時に、トモヤとしてはそこまで出力しなくても良かったけど、僕が経験もあるし、信頼もしているから全くついていくのに躊躇はなかったらしい。
その発言凄い嬉しかったけど、同時に、僕は自分ならここでこうやるなと考えてやったことが、ある意味、自分よがりな戦略で、もしかしたら越権行為なのかもしれないな。そう思った。
本来ならランナーに寄り添うだけにすべきなのに、無駄に価値観を押し付けてるのかも。
そんな事をブログをかきながら考えているのだが、やはり奥が深くてペーサーも面白いなと思った次第。
でも、次は自分のレースを考えなきゃw
参加された選手の皆さん、ペーサーサポートの皆さん、大会関係者の皆さんお疲れ様でした。
今年最初で最後の100mileレース大変堪能しました。ありがとうございました。