こんにちは、藤岡です。シアトルは熱波です。クーラーがない我が家にはキビシイ。
さて、今年のウェスタン・ステイツ(Western States Endurance Run)をインターネットで追っかけていた方はご存知の通り、フランソワ・デンヌ(François D’haene)をねじ伏せたロブ・クラール(Rob Krar)や、途中でコースミスをしながらもステファニー・ハウ(Stephanie Howe)を破ったマグダレナ・ブーレ(Magdalena Boulet)もさることながら、やはり今年のハイライトは、灼熱の161キロの道のりを制限時間である30時間の6秒前、29時間59分54秒で最後にゴールしたガンヒルド・スワンソンさん(Gunhild Swanson)でしょう。
初の70歳代の女性完走者となった彼女。最後の1マイルは優勝者のロブ・クラールが並走して励まし、その甲斐もあってか最後の1.3マイル(約2キロ)を16分で駆け抜けました。ゴールシーンの映像がこちら。周りのみんなが声援を送り、興奮しました。
ウエスタン・ステイツの直前に、定期購読しているウルトラランニングマガジンの最新号が送られてきたのですが、その特集の一つが三人のベテランランナーに関する記事で、そのうちの一人がちょうどガンヒルド・スワンソンさんでした。読んでみると、彼女が今回最年長での完走記録を打ち立てたのが偶然ではなく、しっかりとした裏付けがあり、彼女だったから成し遂げられたということがわかります。
ちなみに、彼女は私と同じくワシントン州在住で、私も大好きなレインシャドウ・ランニングのレースのファンだそうです。
以下、記事をざっと訳してみました。(いかにも翻訳した感たっぷりな文章ですが、お許しくださいませ。)同記事はウェブでも公開されているので、原文をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
ガンヒルド・スワンソンの胆力
61回目の誕生日の一週間前、ガンヒルド・スワンソンは2005年のウェスタン・ステイツを25時間40分で完走し、60歳以上女子の最速記録を打ち立てた。彼女にとって二度目のウェスタンステイツ、五度目の100マイルレースだった。夫のジャックは由緒あるこのレースで彼女のペーサーをしたかったに違いない。しかし彼は直前に白血病と診断され、それは叶わなかった。
それから10年、70歳になったスワンソンはJavelina Jundredを27時間24分で完走した。おそらく100マイルレースを完走した最高齢の女性となっただけでなく、彼女は再びウェスタン・ステイツの出場資格を満たしたのだ。2008年に他界してしまったジャックが生きていたら、きっと興奮していたに違いない。
「走るようになってしばらくしてはじめて、自分に能力があることに気づいたわ。」スワンソンは、微笑みながらそう言う。彼女の人柄は、彼女の走りそのものだ。いつもは物静かだが、一度話を向けると、彼女の話は、その走りのように、いつまでも止まない。趣味の話になったかと思えば、レースの話になり、家族の話題に、というように。ドイツ出身、ワシントン州スポケーンに住んで数十年。快活でエネルギッシュで、いつも笑顔を絶やさず、何事も決して諦めない。いつもショートカットで、明るい色のランニングウェアが好き。ランニング以外の趣味は、編み物や孫のトゥーランについて冗談をいうこと。
実はスワンソンの2015年のウェスタン・ステイツ出場は一度主催者から却下されていたが、その数週間後に特別に出場が認められた。その知らせを聞いて俄然やる気になった彼女は、さっそくコーチを雇ったほどだ。高校や大学で走ってなかった彼女にとって、70歳にして初めてのコーチを受けることになったのだ。
スワンソンのお気に入りのレースは、人気のレインシャドウが主催する50キロのレースとクール・ダレンヌ・マラソン。それからジャックがブルームスデイ・ロード・ランナーズ・クラブの役員を務めていたこともあって、ブルームス・デイ・ランは39年間で走らなかったのはたった2回だけ。ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンも彼女のお気に入りだ。
そのヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンの前夜祭で2014年に講演したのは、キャサリン・スイッザーだった。当時女性が走ることが認められていなかった1967年のボストン・マラソンを走っていたスイッザーは、途中でレースディレクターから止められそうになったのだが、ボーイフレンドのトム・ミラーがレースディレクターを押しのけてくれたおかげで、ゴールできたのだった。その時の様子を収めた写真は当時またたく間に世界に知れ渡り、50年近くたった今でも、スワンソンを含む多くの長距離ランナーに影響を与えているのだ。
その2014年のヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンのあと、レースディレクターのレノール・ドルフィンは、スイッザーがボストン・マラソンでつけていたゼッケン261番を2015年ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンのゼッケンとして提供することをスワンソンに提案した。261番を提案したのには、もう一つの理由があった。2015年のレースまでにスワンソンがマラソンやウルトラレースを含め通算で260のレースを完走する予定だったからだ。たが69歳の時点で247のレースを完走したものの、あと1年で13のレースを完走するのはなかなか厳しいものだった。レノールともうひとりの友達リサ・ブリスがキャサリン・スイッザーにスワンソンの計画とこれまでの功績について話し、それを受けてスイッザーがボストン・マラソンでつけた261番のゼッケンのレプリカの後ろにメッセージを添えて、ブレスレットと一緒に2015年ヤキマ・リバー・キャニオン・マラソンでスワンソンに送ったのは、スワンソンにとってサプライズだった。
2007年のバッドウォーターに優勝し、バッドウォーターの殿堂入りメンバーでもあるリサ・ブリスはスワンソンについてこう言う。「ほとんどの人は知らないかもしれないけれど、彼女は怪我や挫折から何度も復活してきた人なの。普通、歳を取るごとに復活するのはどんどん難しくなってくるというのに。復活するのに時間がかかることもあるけれど、彼女は言い訳せず復活してくるの。そして常にベストを尽くして、結果を残すの。」そしてこう続ける。「それでいて彼女は走りながら、小さな野花を見たり、鳥のさえずりに耳を済ませたり、場合によっては立ち止まって、落ちているコインを拾ったりするの。彼女は勝負師だけれど、勝負することが彼女を駆り立てるのではなく、彼女の生き様が、彼女を勝負に駆り立てるのね。つまり、彼女には勝者のメンタリティーが生まれつき備わっているの。そのうえで、たまたま彼女はすばらいランナーとしての才能も持っていただけなの。」
2015年のウェスタン・ステイツは世界中のエリートランナー、記録保持者、年代別の強者ランナーが集う大会になる。でも、そんな中で、すでに年代別の記録をもち新たに年代別の記録を狙うガンヒルド・スワンソンは、おそらくもっとも肝のすわったランナーに違いない。
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[…] 昨年のウェスタン・ステイツで初の70歳代の女性完走者となったガンヒルド・スワンソンさん(Gunhild Swanson)です。 […]