一週間のうち最大一時間を使って、気になったことを自由に書く「トレイルランニング一時間一本勝負」。
先週末に開催されたウェスタン・ステイツ。私もコーチングしているランナーのサポートとペーサーとして現地に行ってきました。ペーサーとして参加するのは今年で5回目でした。
レース期間中の最高気温は34℃で、昨年ほど涼しくはなかったものの、ウェスタン・ステイツとしては並の暑さでした。しかし近年は山火事が多く、木が焼けて日陰が少なくなっており、ランナーは日光にさらされて暑さを感じたと思います。
今年は例年より多い9名の方々が日本から参加し、全員が完走しました。素晴らしいですね。
今やウェスタン・ステイツは抽選で当選するのに何年もかかるレースになっており、多くの人にとって一生に一度走れるかどうかというイベントです。
日本から来た方々の中にはシルバーバックルが貰える24時間切りを目標にする方、完走を目標にする方がいましたが、それぞれが好走し完走できたのは、決してレースが簡単なのではなく、またとない機会ということを強く意識して最高のパフォーマンスができたからだと感じます。
日本から来られた方々には、それぞれにストーリーがありました。例えば、ESTAの取得を忘れて予定の飛行機に乗れず、前日登録も代理で行ってもらい、なんとかギリギリでスタートにこぎつけた方。また、全力を出し切ってフィニッシュした後に鼻血が止まらなくなり、疲労困憊で車椅子で医務室に運ばれた方などです。
エイドステーションを回っていて感じたのは、やはり100マイルでは序盤は抑えめに入るのが鉄則だということです。
24時間、あるいは30時間で完走する目安のペースがウェスタン・ステイツのサイトで公開されていますが、前半のチェックポイントでは目安より遅れていても全く問題なく、中盤のフォレストヒルまでに徐々にペースを戻していけば、十分に目標タイムに間に合います。
序盤に突っ込んでしまうと深部体温が上がってしまい、外気温が高いために体温が下がりにくく、胃腸のトラブルなどが起きやすくなりペースの維持が難しくなってきます。また涼しくなった夜以降に走れるようにするためにも、前半は飛ばさないことがとても重要になってきます。
上位争いも見どころが多かったですね。レベルが高く、女子は6名、男子は5名が歴代タイムのトップテンに入りました。特に最近の女性のレベルアップは顕著で、歴代トップテンのうち、去年と今年のレースが9つを占めています。
また総合優勝したジム・ウォルムズリーから一時間以内に9人がフィニッシュしており、上位のランナー同士のタイム差も縮まっており、競争も激しいものでした。
全体的なレベルの底上げも進みました。男女ともにマスター(40歳以上)の歴代記録や、60歳以上の歴代記録も更新されました。
今年は視覚障害者が初めての完走を目指しました。公式にフィニッシャーとして認められるには日曜日の午前11時までにフィニッシュする必要がありましたが、彼がスタジアムに戻ってきたのは10時59分で、トラックを走っている途中に11時を回ってしまい、時間内での完走にはたった30秒、足りませんでした。
今年のウェスタン・ステイツに視覚障害者として初めての完走を目指していたWilliam Barkan。
公式にフィニッシャーとして認められるには午前11時までにフィニッシュする必要があるが、彼がスタジアムに戻ってきたのは10時59分。https://t.co/9Tj7Idx6VF
— 藤岡正純 / Masazumi Fujioka (@masazooomi) June 30, 2024