市街地を抜けて山に入ると、どこまでも続きそうな竹林が広がっている。いかにも中国という雰囲気たっぷりで、藪からパンダがひょいっと出てきそう。
おっと危ない、そんなことを想像していると、細いトレイルの足元にはタケノコがにょきっ。行く先々で土から顔を出していて、気を抜いていると足を引っかけそうになる。
竹の葉を揺らしていた風が弱まり、しっとりとした空気がさらに重みを増す。空に向かって勢い良く伸びた竹林に霧が漂い始めた。やがて、白いもやが広がり、鮮やかな竹の緑を覆い隠すように景色をモノトーンに変えていく。水墨画の世界である。
夢と現実の狭間とも思える幻想的な森を走る。
風が止み、周囲が静けさに包まれた。足元の落ち葉を踏む音がやけに響く。湿った空気を吸い込むと、かすかに土の匂いがした。
はかなげな線描に満ちた水墨画の中で、自分の感覚だけが、ここが現実だということを示している。日本を離れて中国へ行ってきた。向かった先は上海から車で5時間ほど南に下った浙江省臨海市。UTGK(Ultimate TsaiGu Trail Kuocang)という100kmレースの出場が目的だ。普段の生活から遠く隔たった桃源郷のような日々が、そこにあった。
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というわけで、22日に中国で行われたUTGKをご紹介しつつ、短期集中で中国の旅を振り返ります。