分水嶺 1 分水界になっている山稜(さんりょう)。分水山脈。2 《1が、雨水が異なる水系に分かれる場所であることから》物事の方向性が決まる分かれ目 のたとえ。(デジタル大辞泉参照)
分水嶺トレイルに行ってきました。チームで出場したものの、関門への到着予定の時刻を大幅に勘違いしていることにメンバー3人が気付かないゆるさで、制限時間内に通過できずに結果はリタイアでした。
東京、山梨、長野にまたがる「秩父多摩甲斐国立公園の百名山4つと源流4つを踏破する大縦走の旅」です。僕たちが出場したのは短い方の鴨沢コースで、距離84km、累積標高8,200m。誘ってくれた友人いわく、「選考基準が厳しいので出るだけでも大変」とのこと。長い方は120kmです。短い、長いという基準が最近はよく分からなくなりつつあります。
選考の結果発表が遅かったので、僕たちは当落線ギリギリのチームだった模様。そんなギリギリのメンバーはというと、不必要なまでに大きい12kgのザックを背負った京都の修行僧、大会に誘ってくれたブラジルから帰国したての晴れ女、直前までジェンガの携行に悩んでいた僕の3人です。
僕をのぞく2人は登山経験が豊富ですが、今回の山行では「走りたくない」と2人が主張したことで、制限時間53時間を目一杯つかって全行程を歩き倒すことに。どうせなら長く楽しんだ方がいいですもんね。
リタイアの流れは「3人が寝不足→初日の夜を迎える→眠い→現在地を間違える→眠い→あれ、現在地どこだっけ→地図で確認→気付いたときには関門に間に合わず」。とても静かなリタイアでした。
30kmほど歩いただけですので、道中は静かなものでしたが、実は大会前に大きな「分水嶺」がありました。
大会前日の夕方に出張先のブラジルから帰国した晴れ女氏。行く先々で曇天を晴れに変えてしまうという異能の持ち主です。
持っているのか、引きが強いのか、地球の真裏から日本に向かうフライトでも、その引きの強さを発揮しました。
消灯時間に入っていた機内に異変が起きます。晴れ女の座る座席から通路を挟んで隣に座っていた乗客が苦しそうにうずくまっていました。呼吸すら満足にできていない尋常ならざる様子に気づいた彼女はCAに知らせるために、暗い通路を急ぎました。
その間にも急病人の容態は悪化していき、呼吸困難に陥り、一刻を争う状態に。駆けつけたCAが状況を察して、冷静に呼び掛けます。
「どなたかお医者さんはいませんか」
映画かドラマのような緊迫した展開。通路を歩きながら医師を探すCA、目をさます乗客、意識を失う急病人。そして、立ち上がる乗客。医師が見つかった瞬間でした。
適切な治療ができたそうで急病人は回復。晴れ女氏の迅速な対応により、生死の狭間という大きな分かれ道で1人の乗客を光ある方角に導くことができました。
大会前にハイライトを迎えていたのですから、まあリタイアもやむなしです!