2013年4月26日-28日の3日間開催された日本最大級のトレランレースUTMF(STY)が終わった。富士山麓を一周する距離161km、制限時間46時間のUTMFと半周する距離84.7km、制限時間24時間のSTYがある。私はSTYにエントリーした。
13時のスタートに向けてカウントダウンが始まる。どんな旅となるのか期待と不安が交錯する。気持ちが最高潮に高まる瞬間。これがレースの醍醐味のひとつ。日常にこんなにドキドキすることはない。この非日常のドキドキ感が堪らない。
STY攻略の3つの戦略を立てた。一つ目は、序盤のA7まではペースを抑え、後半の林道、ロードはしっかり走ること。二つ目は、エイドで十分な補給と休憩をとること。三つ目は、体調変化に備え、早目に胃腸薬、痛み止めを服用すること。
目標タイムは17時間とした。
①START富士山こどもの国(標高923m)-A5水ケ塚公園(標高1449m) 区間距離12.5km
序盤は戦略通りペースを抑える。3月の伊豆トレイルジャーニーでは前半飛ばし過ぎて後半潰れたからだ。A5 INは1時間53分。試走していないため自分のペースが掴めない。エイドでは水餃子、フルーツ、コーラを頂く。トイレ後、軽くストレッチをして8分でA5 OUT。
②A5-A6富士山御殿場口太郎坊(標高1441m) 区間距離7.1km
標高1800mのレース最高地点、四辻までの走行禁止区間は早歩きで歩を進める。四辻より多くなった砂礫にシューズがもぐりこみ走りにくい。さらにシューズに砂礫が入り込む。太郎坊までの砂走りは、面白いほどにスピードが出る。A6 INは3時間13分。しかしここでスピードを上げたことを直ぐに後悔することになる。エイドではスイーツとバナナを頂く。シューズの中の砂礫を取り除き、4分でOUT、先を急ぐ。
③A6-A7すばしり(標高848m) 区間距離9.4km
急に胃痛が始まる。砂走りで胃が上下したことによるものだろう。胃腸薬を服用すると15分ほどで痛みが和らぎ始めたが、スピードを上げると胃が痛むためスピードを上げられない。A7 INは4時間12分。エイドでは雑煮を頂く。ここでトイレ(大)に行く。時刻は17時を過ぎたためヘッドライトを準備する。ここから中盤の核心部に突入する。16分でA7 OUT。
④A7-A8山中湖きらら(標高984m) 区間距離16.4km
三国山の手前からヘッドライトを点灯する。長い夜間走が始まった。ヘッドライトを点灯してからまもなく、派手に転倒した。最悪なことに転んだ瞬間に両脚の脹ら脛が攣った。動けないためしばらく転んだままの体勢をとる。何とか立ち上がり、身体を点検するが、幸いにも外傷はない。脹ら脛の痛みだけは残るが走れないほどの痛みではない。動きながら回復を待つ方法を選択した。下りが終わり、ロード走に変わる。A8が近づく。応援してくれる仲間、ランオアダイの加藤ちゃんがA8で待っていてくれるということだけで力が沸いてくる。彼は故障のため今回のUTMFをDNSした。走りたくても走れない彼の分も走りたいと思いながら走った。A8 INは7時間26分。加藤家の手厚いサポート受ける。レッドブル、カップスープ、フルーツ、塩熱サプリを頂く。エイドではバナナを頂く。居心地が良すぎて30分でA8 OUT。
⑤A8-A9二重曲峠(標高1152m) 区間距離5.9km
自分の前後にランナーが見えない孤独を感じる時間が増える。疲労と孤独感で心が折れそうになる。A9 INは9時間8分。腹を下したようでトイレ休憩。パンとコーヒーを頂く。パンを飲み込めず吐きそうになる。内臓疲労で徐々に食物を受け付けなくなってきた。10分でA9 OUT。
⑥A9-A10富士小学校(標高704m) 区間距離15.2km
杓子山(標高1597m)を一気に450m上る一番のタフな区間だ。頂上手前の100mの岩場も登る。フラフラになりながら手足を使い岩場を登る。休み、休み、なんとか急坂を登る。やっと着いた杓子山頂上から次は10kmの距離を900m下る。林道に入り戦略通りペースをあげる。調子よく走っていたが、残り3.5km地点で手がしびれ始めた。ハンガーノックの症状だ。補給が足りなかったようだ。エイドまでいけると踏んでいたが誤算だった。気分も悪くなり、激しい吐き気をもよおす。直ぐに補給をしないとこれ以上走れなくなる。フラフラと歩きながら、ENERGY BARに噛り付き、それを水で胃に少しずつ流し込む。吐き気を抑えるために胃腸薬も服用する。15分ほどで手の震えが収まり、再びゆっくりと走り始めた。12時間29分にA10 IN。腹の調子が良くないためトイレの列に並ぶ。エイドでは吉田うどん、ババナ、コーラを頂く。21分でエイドを後にする。
⑦A10-FINISH河口湖八木崎公園(標高835m) 区間距離18.2km
林道の九十九折りの登りが足に堪える。標高1400m程のロードに出るが緩やかに登り基調。ロードから下りの長い林道に入る。残りは10km程、もう登りはない。ペーサーとなるランナーに引っ張ってもらうがスピードについていけない。徐々に離される。膝がまた痛み始める。最後の痛み止めを服用する。最悪なことにまたハンガーノックの症状がで始めた。胃が受け付けそうにない状態であったが無理やりGELを水で喉に流し込む。これで身体は動くはずだ。しばらくして手の痺れが消え、足が動き始める。後はなにも考えずに、ひたすら一歩一歩足を前に出すことだけに集中した。河口湖大橋を超え、ゴールを迎える瞬間、やり切ったという充実感で満たされ、本気で泣きそうになった。FINISHは16時間15分08秒だった。
振り返れば、心身共に辛いレースではあったが、沢山のサポーター、ボランティアの温かい運営、応援によって、大変楽しいレース体験となったことには、心から感謝したい。温かいサポート、声援に後押しされたランナーは私だけではないであろう。日本においてこれだけの規模のレースを継続して開催することは難易度が高いことであろうと想像する。是非とも継続開催を願う次第です。次回は、100mileに挑戦したいという気持ちが高まった。まだまだ実力が不足しているが、心身を鍛え上げ、またこの地に戻りたいと思う。
2 コメント
いつも興味深く読ませていただいています。更新が遅く、富士山の結果心配してました。無事完走お疲れ様でした。小生、自転車のレースと10キロロードには頻繁に出ますが、トレイルランは未経験で凄く興味あります。今度、実家近くの黒姫のレースに出ます。登山は好きで昨年は甲斐駒ヶ岳、立山に行きました。今後の活躍も勝手ながら期待してます。頑張ってください。それでは。
書き込みありがとうございます。お陰様でSTYは無事に完走できました。ロードと登山の経験があるならきっとトレランの魅力に直ぐにはまりますよ。7月20日の黒姫トレイルレースに参加されるのでしょうかね。とても良さそうなレースですね。いいレースとなることをお祈りしています。