ぼくは「ボランティアスタッフ」という言葉が好きではない。
ボランティア:自分から進んで社会活動などに無償で参加する人。
金銭という意味では、たしかに無償かもしれない。しかし、勇気、高揚感、感動、共有する時間など、お金に換えられない多くの喜びを得ることができる。
極端な言い方をすれば、選手たちや大会の成功のためだけに参加しているわけではない。自分たちの喜びのためでもある。
寝付いてから数時間後、枕元に置いていた携帯が鳴っていた。なんとか起きて電話にでると、事務局からだった。予想はしていたが、トップ選手のエイド到着時間がかなり早まりそうという連絡だった。
慌てて準備をして、ホテルを飛び出す。まだ深夜といえる時間帯。外は真っ暗だ。
ぼくと事務局スタッフ、早めに現地入りしてくれたメンバー数名でエイドの準備を整え、トップ選手が到着する前に準備OK。朝6時30分にPau Capell選手がエイドに入り、5分も経たずに出発した。慌ただしく始まった長い一日。
A8二十曲峠エイド運営をMMAが担当させていただくのは、前回に続き二回目になる。ただし、前回はきららでレース中止になったので、稼動するのは今回が初めて。A8二十曲峠はUTMFの141k地点で、新コースではA7山中湖きららから続く30kのトレイルの中間地点にあたるため、小さいながらも重要なポイントと事務局から聞いていた。
プレッシャーもあったけど、ぼくがトレイルランニングを始めた頃からのラン友を中心に、エイド運営のベテランからエイド初心者、トレイルランニング未経験者までトレイルLOVEなメンバーが幅広く集まってくれたことで不安は払拭された。当然のことながら、エイド運営はぼくひとりの力ではどうしようもなく、スタッフたちの力があってこそ。あとはやるしかないのだ。
今回のエイドの最大のトピックは、レジェンド石川弘樹さんの参加だろう。エイドに到着する選手たちにとってもサプライズだろうし、ぼくらエイドスタッフにとっても喜びは大きい。朝イチから現地に入っていただき、準備ではエイドの動線、備品の配置から、レース経験値に基づいた的確なアドバイスをいただいた。
そんな弘樹さんからのご提案で、スタッフのためにエイド稼働中の食事をご用意していただいた。エイドが円滑に稼動するように、スタッフの食事と休憩をケアする。その発想は様々なレースをプロデュースする弘樹さんならでは。なによりぼくたちにとってはエイド稼働中は弘樹メシをいただけるなんて一生の思い出でモチベーションアップ!弘樹さん、ありがとうございます!
UTMF開催中の4月29日は弘樹さんの誕生日。エイドスタッフの提案でサプライズバースデー!
トレイルランニングというと厳しいスポーツでシリアスな雰囲気が漂うけど、もともとみんな「楽しい」から始めたのだと思う。スイーパーの箒、エイド飯、サプライズバースデーなどなど、今回の大会中にご一緒させていただいた周りの激走モンブラン世代のラン友からは、あらためて「楽しんでナンボ!」という気持ちを教えてもらった。
深夜でも多くの選手が山の中から現れ、山の中へと消えていく。その精神力にはあたまが下がるばかり。こちらスタッフ側は、エイド初心者のスタッフも一生懸命声を出し、弘樹さんもこまめに選手に声をかけている。ぼくらのエイドは特別な仕掛けがあるわけではないが、一生懸命さはスタッフみんなが持っている。二十曲峠エイドが選手たちの力になれていればうれしく思います。
午前5時に関門制限時間となる。しかし、まだまだぼくらの業務は終わらない。最終ランナーの到着待ち、スイーパー、撤収作業、クリーンナッパーと、やることはたくさん。ぼくはこの大会以外の運営に携わったことはないけど、本当に多くの人たちが関わり、大会が成り立っていることを実感する。
どの大会も「人出が余っている」なんてことはないと思う。もし、ぼくのブログを読んで「スタッフとして参加したいな」と思った方がいたら、なんの大会でもいいから是非一度でも経験していただきたい。選手としては感じられない何かを得られるのではないだろうか。
12時30分にエイドでの業務をすべて終了し、大池公園へ。二十曲峠エイドでお会いした撮影隊の方と再会した。某国営テレビ局で7月の放送予定で、編集部隊もホテルに缶詰で編集しているらしい。撮影隊も編集隊も、おそらくほとんど寝ていないのではないだろうか。
UTMFは多くの選手にとっては二晩を超える挑戦。でも、事務局、スタッフ、撮影隊も長い長い耐久レースなのだ。走る選手もすごいけど、この壮大な大会を運営する人たちも本当にすごい!
今の日本のトレイルランニングシーンの盛況さに、間違いなくUTMF/STYは大きく影響している。選手でもいい。サポートでもいい。スタッフでも、何か仕事で絡むのも、どういう形であれ、この大会に関わることは、決して小さくない喜びを与えてくれる。
UTMF/STYを味わい尽くしたい。だから来年もこの場所に来ることだろう。
1 コメント
Thank you so much for your work. It was a great event!