渋井さんからこんなテーマの提案あり。
「2018年のベストギア」
5つ挙げてみた。迷いなく間違いなくこれだ。他にも愛用品はたくさんあるけど、2018年に新たに使い始めたもので、特に良く使ったもの。
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揺れる揺れないなんていうのはもはや論外な時代になった
Focus light/Answer4
トレランザックの揺れる、揺れないの話は永遠の課題かと思っていたけれど、もうそんなことは大前提でトレランザック=揺れないものという時代なのかと思わされたのがAnswer4のFocus light。UTMF2018が初投入。直前だったのであまり使わずに挑んだけれど、そこはすでにロングレースに何度も出ているから大丈夫という経験則で。だけどそんな心配は全く必要なく、「当たり前でしょ」と言わんばかりに揺れない。わたしのむっちりした体型には頼んだサイズ感がちょっとタイトだったんだけども(笑)、荷物でいっぱいになった重い状態でも、背負ってしまえば重みを感じない一体感。これが基準になったらとんでもないな、と思わされた。もちろん、サイドポケットはもっと入口が深くて広い方がいいとか、三角錐の収納が難しいとか、好みはあると思う。でもやっぱり、トレイルランニングというアクティビティでは【揺れない】ってそろそろ当たり前であって欲しいと思いませんか。UTMBの装備も入るという謳い文句のFocus ultraはモノが多いわたしには小さくて、友人の作っているプロダクトだとしても購入は踏みとどまっていて。結局そのままなんだかんだでちゃんと使ったことがなかった。Focus Lightは自分のトレイルランのスタイルにちょうど良いサイズ感だった。あまりレースに出なかった2018。UTMFとASO ROUND TRAILで使い、どちらも必携装備+ちょっと入れすぎくらいの行動食がちゃんと入った。確実に入れすぎだったけどね。間違いなくおすすめ。
スプーン3すくいしか、食べられなかった夜
Trail Butter
もうそろそろ飽きられてるんじゃないかとビビっているピレネーネタ。よく「何が大変でしたか」「苦労話を教えてください」と聞かれる。なぜみんなそんなに不幸?苦労?話を聞きたいのか(笑)。苦労話、感動話で涙したい願望があるのかな。そんななかで鉄板ネタがこれ。「トレイルバター3スプーンの夜」というエピソード。後半で食糧計画がうまく運べず、思っていたところで食べ物を買えなかったり、銀行やATMがなくて現金が尽きそうになったり。どんどん食べるものがなくなり、数日間の食料計画も見通したたず、いまあるものであと5日はなんとかしなくちゃいけない。しかも毎日山を30km以上歩きながら。そんな時に助けられたのが、ボトルのTrail Butter。主にパンに塗って食べていたけど、パンさえなくなった時、節約できるとすれば夜。日中は歩いているので断続的に補給しなければ山中で動けなくなるかもしれない。でも夜は寝るだけなので、究極の選択として夜ごはんを我慢するという状況だった。カロリーが高くGI値が低い優秀な行動食Trail Butter。スプーンですくってひと口。しばらく過ごしてから、もうひと口。そして、もうしばらくしてひと口。ゴロゴロとしたナッツをゆっくり噛み、じっくり味わいながら食したあの夜は忘れられないよ。
うんちの上から氷点下の雪上まで、狂ったように使いまくった我が家
Crossover dome f/heritage
ピレネーがレースではなく縦走になり、どこでもどんな状況でも張れる超軽量なテントが必要になって今年から使い始めたクロスオーバードームf。これまでも欲しいとは思っていたものの、フロアレスシェルターやツェルトもあるし、なかなか買えずにいたもの。なんと言ってもとにかく設営がとんでもなく簡単で早い。子供でも立てられるくらい簡単。そして収納時のサイズ感がとんでもなく小さい。バックパックの中で見失うくらい小さい。生地が薄いので破れが心配だったけれど、いまのところ一度も穴は空けていない。わたしはかなり大雑把なほうだけど、いまのところ特に問題なし。馬や牛のうんちだらけの湖のそばで張ったり、砂利だらけのダートの道のはしっこ、かた~いキャンプサイト、マイナス20度くらいの雪の上でも張った。
ちなみにわたしは身長が156cmで(最近測ったら154cmだった)、ん~横幅はありますけども、それでも小柄な方なんで、だからこそちょうど良いサイズ感だということは重要なポイント。わたしで、ちょうどいい。幅がかなり狭いけれど、冬装備でも全部テント内に入るくらいではある。中央に寝て、左右に荷物を並べる。バックパックは荷物を全部出してぺたんこにして、膝下のマット替わり。そういう使い方でもって、わたしにとって「超最高の我が家」なのだ。こういう類のテントというかシェルタータイプは「ちゃんと理解して使うこと」と注意喚起されることが多く、もちろんその通りであるけども、わたしはとにかくもうこいつでどこにでも行けそうだ。さすがに水どころか靴紐まで凍りつく冬の南アルプスで張っていたら、こいつ気が狂ってんじゃないかという視線を浴びた。ま、そりゃそうか。(ほかにも同じ様におかしい人が1人いた。仲間よ。)
30日連続で履き続けても全く顔色を変えない頼りがいある奴TransAlps/columbia montrail
ピレネー山脈縦走で履いたシューズがcolumbia montrailのTrans Alps。いままで同ブランドのカルドラドを履いていて、ほんの数キロのトレイルから100mile、トルデジアンまでどこでもカルドラドカルドラドカルドラドカルドラド。国内のアルプス縦走でもカルドラド。なんなら普段履きでもカルドラド。それくらいカルドラド信者だったけれど、どうしても岩で擦ったりするとアッパーに穴が開くことと、15kg以上の荷物を毎日十何時間も背負って歩き、それを30日以上繰り返すとなるとカルドラドじゃだめだ、となって困っていた時におすすめしていただいたのがTrans Alpsだ。正直なところ、最初は、ちょっとゴツいかなぁ、重いかなぁ、という印象だったけれど、足型に合うことを優先して何年も履きなれているmontrailのシューズの中から選ぶことにした。実はほとんど履かずに(苦笑)、2~3回歩いたりジョグしたりしただけでピレネーへ。
幅は広すぎることも狭すぎることもなく、アウトソールはすごくグリップするわけでもなく滑りやすいわけでもなく。クッションもほどほど。すんごく目立った特徴はないけれど、とにかく私には合うんだ!という(誰の参考にもならない)感想だった。実はシューズのインプレッションの仕事をほとんどしたことがなくて(笑)、全く詳しくなくてお恥ずかしい限り。そんなわたしでもたぶん言えることは、これは「ブナン」だということ。ブナンって無難って書くんですよ。難無いんですよ。
それから、これは確実に語れるというポイントは、耐久性。ピレネーの最初の数日間一緒だった知人のシューズは1週間ほどですっかり穴が開いていたけれど、わたしはまだ新品のよう。2週間経っても変化なく、爪潰れも靴擦れもマメもなし。3週間経ってもアッパー・ソールともに変化なし。最後の1週間で岩場が多くなり横を擦るようなシーンが増えてアッパーにちょっと破れがあったけど、結局1足で歩ききった。穴の開いた部分は、内側に薄いメッシュがあって、表面は破れたけどそのメッシュが最後まで耐え抜いてくれたおかげで、砂利や石が入ってこなかったのは驚いた。内側にそんな最終兵器があったとはね。あとは写真を見てもらえれば他に言うことはない。アウトソールの耐久性、すごいわ。残念ながら次のシーズンはメンズのみとのこと。在庫を買い占めておこうかな。
以下は、1000km踏破後の写真。縦走中、3回くらい洗ったかな。
やっぱり旅が好き!わたしらしさとわたしの可能性をうんと広げてくれたOwn/ogawand
Answer4同様に、友人が作っているのに使ったことがなかったogawandのown。ほんと、ごめんなさい。とりあえず謝りたい。かなり、かなり、かなり、かなり、か~~~~なりワガママを言って、そりゃもう言いまくって、カスタム盛りにして作ってもらったもの。もうこれは一生ものだ。きっともともとのプロダクトのコンセプトとか、ここはこうだからいいんだというポイントがあるはずなのに、そんなことはひとつも言わずにわたしの要望をひとつも欠けることなく叶えてくれた。もうそれに脱帽。匠だ、って。
ownは、おそらくスルメみたいなもんで(?)、使えば使うほどしっくりくる、良さがジワジワと身に染みるバックパックだと思う。最初は、ちょっとどころか結構難解で、あらゆるパーツや仕組みが、なぜそういう構造になっているかという作り手の意図を理解していないと「ん~?」と思う人もいるかもしれない。それはすごくもったいない。わたしも実はまだ試行錯誤しながら使っていたりする。パッキングがバシッと決まる時もあれば、あ~今日はミスった~という時もある。パーツを移動させることで容量が変わっても綺麗にパッキングできる仕組みは、便利だけど難しい。でもそれがいい、そう思える人に向いていると思う。愛着ってこういうものに沸くんだ、わたしは。
本体は一気室の袋状。いたってシンプル。ファスナーやベルクロはない(ウエストの取り外しはベルクロ)。実は、途中で穴が空いたり、縫い目が切れたりほつれたりするんじゃないかと真剣に考えていて、修復できるようにパッチやダクトテープ、針と糸も携行していた。今までの経験では、わたしの使い方が雑なのか、荷物が重すぎるのか、他のバックパックではショルダーが切れそうになったり、ファスナーが壊れたり、メッシュに穴が空いたりもした。そんなことはよくあることだけど、バックパックが壊れることとシューズが破れることが一番の心配ごとだった。
だけど、全く、本当に全く、なんにもなかった。全くなんにもなかった。えー!まじでー!という感じだ。岩の上にドスン!と置いていたし、バックパックの上にも座るし、寝るときはマット変わりにしていたし、目を離した隙に馬に引きずられたこともあった。川に落ちてずぶ濡れになったこともあったし、iphoneが落ちるほど高温の中で歩いたりもした。だけどビクともしない。プラパーツがあるので、それが割れることもあるかと思ったけど、それもなく。なぜなんだ。なぜなんだ~。なんでこんなに壊れないんだ~。
15kg以上20kg以下の荷物は、100L背負うような山岳部やワンゲル部の人にとったら軽く笑われるかもしれないけれど、わたしにとってはなかなかの重さで、それを10~15時間×30日背負い続けたわたしを支えてくれたのはこのバックパックだ。ウルトラライトなギアが好きなくせに全然ウルトラライトじゃないわたし。バックパックが軽いことでどれだけ軽量化できたか。軽いバックパックの概念を変えてくれた。うんと可能性が広がった。わたしのアウトドアライフの可能性がうんと広がった。もっと色んな使い方をしてみたい。もっと色んな旅に出たい。
パックパックひとつで旅に出る。
バックパックひとつでどこにでも行ける。
国境の端から端まで歩けるんだ。
大陸を横断できちゃうんだ。
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やっぱり旅が好き!
今回紹介したベストギアはどれも、そう。
そんな風に思わせてくれるギアって最高だと思いませんか。