こんにちは、JUNです。
台風19号によりトレイルランニング大会がいくつも中止になりました。事前情報により超大型の台風であることやその暴風雨による被害予測は広く伝えられており、これによる運営の中止判断は適切だったと思います。
一方、その判断を当日まで待ち続けた大会もあり、それについて私の知る範囲でもネットで色々な意見が寄せられていました。それぞれの大会にそれぞれの考えや事情があるので、今回の対応の良否を述べるつもりはありません。
しかし、大会中止の判断が当日になってしまうとどういう影響があるのか?私自身も大会運営をしていた経験を踏まえ考えてみました。人それぞれ、自分の意見を持つことは大切です。
●選手・スタッフが現地に来てしまう
トレイルランニング大会のスタートは早朝が多いです。多くの選手は遠方から大会に出向く人が多いので、中には前日から泊まりで大会に参加する人も多いです。今回も「開催するかも知れないのでとりあえず宿泊先へ向かう」という人もいたようです。もし、前日の昼頃までに中止の判断があったなら、そうした人も無駄足にならずに済んでいたでしょう。
ここで注意するべき点は「選手を台風の中を移動させた」という事実です。最近の大型台風では数日前から公共交通機関が計画運休を発表しています。これは事前に運休を決めることにより事故防止のみならず、台風の中の外出を控える事により、人々の安全を確保すること。計画運休により計画的に会社に出向くのを控えてもらい、突然の運休による帰宅困難者を出さないようにするなど、既に社会的な外出抑制として機能し始めています。
そのような社会の中で選手を台風の中を移動させ、結果的には無駄足にさせてしまったに留まらず、遠方から来た人にとってはわざわざ危険な地域に集めてしまった。更にはこの地域の周辺では高速道路が土砂崩壊により通行止めになっており、今日現在でもまだ開通していない箇所もあります。自家用車でも公共交通機関でも帰宅するには大変な混乱があったと思います。この結果を招いた事についてどう考えるか?という問題があるかと思います。
ネットには「行くのも行かないのも自己判断」という意見も目にします。確かにそれはそうなんですが、今回は主催者としてどう考えるか?なのでここではあえて割愛します。
●開催地の地元スタッフの困惑
前置きさせてもらうと、この大会への地元の対応・協力度合いがどの程度のものかはわかりません。そもそも中止の判断は主催者の独断なのか?地元と協議なのか?地元は資金を出しているのか?地元はどれだけ人手を出しているのか?大会の地元協力と言っても様々な形がありますが、人件費も予算も全て地元住民の税金です。それを回収できるだけの効果が果たして大会開催にあるのか?大会と地元の関係はホントそれぞれ一概ではない世界。
大会開催地は台風の直撃コースの一部でした。事実、その周辺では今回の台風により甚大な被害が出いるのはご存じの通り。地元スタッフももちろん台風通過地域の住民です。本来であれば自宅にて台風の備えをしたり、場合によっては避難などの対応をしていても全くおかしくありません。
しかし、大会がまだ開催されるかも知れないとなればそういう訳にはいきません。地元スタッフこそ責任感を持って大会に関わっていると思います。今回は前日受付もしていたと聞きました。「笑顔で対応してくれた」「地元も開催したがっている」などのコメントも見ました。確かにそういう人も居るかも知れませんが、そうではない人も居ると考えるのが当然です。台風に対応したいけど、大会を抜ける事が出来ず、という人の心中はお察しします。
●地元の緊急対応を含む公共機関の混乱
ここで言う公共機関とは警察や消防、役所などを言います。大会を行う上でこの機関の協力無くしての開催はあり得ません。特にトラブルのない平時はそれぼどお世話になることはありませんし、最後までそうであることが望ましいです。ですが、一度トラブルが発生すれば、第一に協力を要請する機関です。
この機関こそ、台風などの自然災害に対して多大な影響を受けます。それこそ事前の準備や対応に大忙しになることは容易に想像がつきます。もし事前に中止が決まっていれば全力で台風に備える対応ができますが、今回のように開催の判断が当日になれば、当然その機関も大会を無いものと考える訳にはいけません。
詳しい事は分かりませんが、例えば防災ヘリがあったとして、災害時に制限なく自由に活動ができる前提が望ましいですが、もし大会で数百人が山に入る計画があるとしたとき、本来ならもっと遠くへ行けた防災ヘリの活動が、もしかしたらその大会の計画のために「そんなに遠くへ行くのは難しい」という判断になるかもしれない。あくまで災害救助計画の段階としての話ですが。
本来、大会運営としてはそこまで考える必要はないかもしれません。以前、消防へ出向き大会開催に関する意見を求めたときの回答は『我々は大会の開催や内容について意見はしません。ただ何かあった時には全力で救助するだけです』という言葉を頂きました。その言葉の重みは今でも忘れません。考える必要はないかもしれませんが、そういう方々の重みを決して軽く扱う訳にはいかないと強く感じました。
今までは事前の対応への混乱でしたが、当日もし開催となれば更に混乱に拍車がかかります。こうした事を踏まえた判断が必要になりますよね。
●台風後の登山道は脆い
前後しますが、今回の当日まで判断を待った大会の開催は日曜日でした。台風の通過は結果的には土曜日の夜には通り過ぎ、雨も止んだのだと思います。そうした予報を受けての当日判断だったのだと思います。
ですが、日曜日に今回も台風一過で晴天になりましたが、大雨のあとの山は危険です。日本の多くの登山道は土が柔らかく降雨後は脆く崩れやすい箇所がとても多いです。降雨中の大会に出た事がある方なら分かると思いますが、多くの選手が通過した道は場所によっては深刻な影響が出ることも少なくありません。有名な大規模大会でもその被害から幾度となくコース変更をしてきました。コースを変更しても、被害を受けた路面が直ぐに回復する訳ではありません。長い年月をかけて多くの方が踏み固めてきた路面。今後、復活することができるのか?もしくは荒れたことにより敬遠され、そのまま荒廃してしまうのか?それは容易には予測できない難しい問題なんです。
今回のコースがどういう路面かは分かりませんが、シングルトラックのような登山道なら土でグチャグチャになり、林道なら雨水の流れによる路面の轍化も深刻です。それ以前に、そもそも路面や法面の崩落もありますし、山全域において台風後に侵入してはいけない地域になるのは当然です。今回の台風後の報道では主に河川の氾濫を中心に取り上げていますが、山間部における被害も相当な数と程度の被害が出ています。
事前の台風の規模からそのような被害状況を事前に予測をすることができたのか?それは誰にも分かりません。今見ている被害はあくまで結果論です。ですが、降雨後に数百人を山に入れたときに登山道がどうなるのか?それはコースを分かっていれば予想はできるハズです。それに対し、今回の当日確認の判断がどうだったのか?それは考える必要があるかと思います。ちょっと話の趣旨がズレてしまいましたけどね。
大会運営に限らず、行政にしても何にしても対応に100%はありません。ですが誰もがそうありたいと思い判断をしている事と思います。その判断による結果がどうであったのか?その考察は如何なるときも怠るわけにはいけません。
今回の記事や、ネットのコメントを鵜呑みにせず、それぞれが「自分はどう考えるか?」という自分の意見を持ってほしいです。それも100%正解なんてないので人と違っても気にする必要はありません。人の意見を否定したりバカにしたりせず、「なぜ他人はそう思うのか?」という他人を尊重した考えを持てば、見識が深まり世の中が熟成していくと思います。
今回の台風では本当に多くの被害が出てしまいました。こと山に関しては多くの山域で近年例を見ないほどの被害が出ています。今後、あの穏やかなであり楽しさや安らぎを与えてくれる、あの山々が戻って来るのか不安にさえなります。
私も山岳地方の住民として地元を中心に山の再生に微力ながら力を注ぎたいと思います。
地元被害のホンの一部
出典:Twitterより