6年ぶり2回目のUTMBが終わった。
この6年で、100mileレースに対する考え方など変わった事は沢山あるけれど、変わらなかった想い(シャンペラックからレースをすること)を胸に今回はレースにのぞんだ。
今回、ホテルは、スタート・ゴールから徒歩20秒くらいのパークホテル スイス&スパ。
お陰でスタートギリギリまで休めるし、ゴール後も快適だった。
昔と異なり、スタート前はかなり混むとのことで、スタート2h前には並びはじめた。
途中でにわか雨が降りはじめて、レインを慌てて羽織る。
スタート2分前、conquest of paradiseが流れ凄まじくテンションがあがる。
落ち着け、とにかく落ち着いてスタートしよう。と心の中でつぶやく。
※()内は実際のInのタイム。
1. Chamonix 0km 18:00
スタート!
特に渋滞にハマるでもなく、スムーズに進む。約8kmを40分くらいで行かないといけないので、そこそこのペースで進む。しかし、暑い。気温はそうでもないのに、汗がヤバイ。短パンがすでにビショビショに。
2. Le Houches 7.9km 18:42(18:42)
404位。予定通りの時間で到着。
疲れてはないが、汗が止まらない。
ここから約800mほどゲレンデみたいなところを登る。6年前は、ここで夢見たいな感じで感動してたけど、今回は冷静。
途中で、タッキーさんにお会いする。30h切りにしてはペース遅いのでは?
と言われたが、まあ、こんなもんですよ。
と返答。タッキーさんには先に行って頂き、自分のペースを維持して進む。
しかし、外人は上りが早くバンバン抜かれる。
3. Saint Gervais 21.51km 20:29(20:40)
746位。想定より少し遅れて到着。ここでもまだ余裕だが、汗の出方が気になるので経口補水液を摂取し始める。
4. Les Contamines 31.81km 22:00(22:12)
660位。大体予定通りに到着。岩垂君と山屋さんに会う。鏑木師匠、JR田中さん、小島さんなど皆順調そうに通過したみたい。
じっくりいきます!と山屋さんに言って通過。いよいよここから山岳地帯。
5. La Balme 40.13km 23:16(23:39)
497位。登っていて、少し疲れというか、ダルさを感じる。少し胃もムカムカする。前の経験から、早めにガスター10を入れる。
そうすると気持ちよくなり、動きはスムーズに。
6. Ref de la Croix du Bonhomme 45.73km 0:41(1:03)
496位。前回はさほど長く感じなかったけど、今回は何故か長く感じたボンノム峠。すこし眠気も感じたのでカフェインジェルを投入。少し目標タイムより遅れているのはわかっていたが、とにかくダメージを負わないように慎重に下る。
7. Les Chapieux 50.68km 1:21(1:43)
501位。10分(1:53)でエイドを出る。いよいよ、前半最大の山場、セーニュ峠へ(1000mUP)。ボンノムと同じで、斜度は大したことないけど、ダラダラとした上りが続く。途中、大きめのギャップを超えた時に、右の内転筋がピクッとなる。ヤバイ!もう攣り始めたのか?と思っている内に、今度は左も。
まだ半分も行ってないのにこれか…
ここまで大した負荷をかけていないはずで、明らかにナトリウム系が不足している攣りだ。1h毎にジェルを取るときに炎熱サプリもとっていたけど、追いついてないのかな?
なんとか登る筋肉を変えて、攣って動けないような事態は回避しながら、騙しながら進む。
8. Col de la Seigen 61.3km 3:18(3:53)
462位。やっとセーニュに到着。攣った内転筋は、いつしか筋肉痛のような痛みに変わっていた。ここからは前のコースであれば、コンバルへ向けて下りなのだが、今回はもう一回登る(300mUP)!!
筋肉痛と攣る恐怖に怯えながらなんとかノロノロ進む。頂上付近は寒いので、シェルを羽織る。
ただ、全体を通してシェルを羽織ったのはこの区間だけだったので、やはり今年は、暖かかったのだろう。
コンバルへの下りは、少し両四頭筋が疲労して痛くなってきた。
9. Lac Combal 68.41km 4:16(05:21)
429位。コンバルに着いたが、なかなか疲労している。なんなんだこの足の疲労感は…
とはいえ林道は淡々と進むことはできるし、登りはまだまだ足は残っている。
途中で、夜が明けてきた。
前回は暗い時に通って見れなかったが、今回初めて明るいコンバル周辺の景色を見ることができた。なんと美しいのだろう!
やはり朝は格別だ。
一気に疲れも吹き飛ぶ!
10. Arete Mont Favre 72.38km 5:10(6:22)
396位。ピーク到着!
相変わらず景色が素晴らしい。頂上のイタリアーノにボンジョールノ!と挨拶して下る。
11. Col Checrouit Maison Vielle 76.86km 5:48(6:59)
389位。今回気づいたのだが、UTMBはフェレ峠からの下りが注目されるが、実は一番ここの下りがキツイ。斜度もギャップもあるし、固いのでどんどん四頭筋がやられていく。筋肉痛もかなりのものになってきていて、この先が思いやられる。日本で峠走等で対策していたはずなのに、かなり残念な思いで下る。
12. Courmayeur 81.25km 6:15(7:38)
393位。やっとクールマイユールに。
既に予定より1h30min遅れ。下りでスピード出ないのが痛い。
サポートはいないので、自分でデポを受け取り、タンクトップに着替えて、足を拭いて、靴下を替える。ウィルキンソンのジンジャエールをのんで、ついでに、太ももにテーピングを。
全てこなして、エイド出るまで結局20分かかる(8:02)。
無駄なくなったつもりが、やはり時間がかかる。ここら辺は、サポートがいないとキツイ。
胃腸もまた微妙になってきたので、悪いとは思いながらもガスター10を入れる。
今考えると、これは完全に悪手なのだが、この時はなんとかこの苦しさを脱却したい!と、藁をも掴む感じで考えてしまっていた。実際、この選択が胃腸をさらに不調にしていまい、今後苦しむ要因となってしまった…(今後の反省点)
13. Refuge Bertone 86.12km 7:36(9:21)
335位。エイドで20分もかけた割には、後でみると58人抜いてスタートした模様。6年前は、アルヌーバ以降、暑さを感じていたので、今回はデポしていたネッククーラーに二等兵帽子を装備。また、同じくデポしていたスポーツ麦茶を投入し始めた。スポーツ麦茶は、普段飲むと塩分がキツく、不味く感じるが、動いている間摂るとそれほど不味くない。これはとても良い発見だった。
クールマイユールをでて、ベネトーネ小屋までは、前回の印象から、急登だがかなり気持ち良いトレイルのイメージ。
今回も良いペースで進む。実際1h20min程度でいっているので、ここは予定通りに進んでいる。さあ、ここからは、UTMBで最も美しいフェレ谷沿のトレイルだ!
14. Refuge Bnatti 93.53km 8:51(10:35)
326位。6年前は、ここで気持ち良さのあまり、はしゃいでしまったので、冷静に進む。
平坦や下りは走って登りは歩く。
相変わらず、太もも前面部の筋肉痛は厳しかったが淡々と進む。
15. Arnouvaz 98.6km 9:38(11:26)
317位。アルヌーバに到着。ここに来るとみんな疲れている。ただ、100mileレースはやっとアップが終わったところ。これからだ!と思いながらすぐに出る。
グラン・コル・フェレはやはりきつかった。
6年前はキヨピーさんと一緒に行ったなぁ。なんて思いながら登る。暑さもかなり感じてきたが、二等兵帽子とネッククーラーのおかげで大丈夫。
振り返ると、これまで辿ってきたフェレ谷が見えて、やはり絶景!
16. Grand Col Ferret 103.18km 10:59(12:54)
313位。ピークに到着。予定から2hの超過… でも、まだ気持ちは全く萎えていない。
ピークにアンサー4のザックの人がいると思ったら、なんとJR田中氏だった。
太ももを怪我して下れないとのこと。
エールを交わして、僕もヨロヨロとくだる。しかし、本当に笑えるほど足が痛いw
でも、ゆっくりなら下れるので、そのペースをキープして進む。
17. La Fouly 112.77km 12:16(14:22)
299位。前回熱中症になったラ・フーリーに到着。今回は、スポーツ麦茶やネッククーラーのお陰で大丈夫。エイドにはJR田中氏をサポートしている斉藤さんや芥田さんがいらっしゃって気合いと元気をもらう。
ここからは、比較的走りやすいトレイルが続く。
良いペースの人がいたのでつかせてもらうことに。ここは、激走モンブランでよく見た景色が多い。鏑木さんが、スコットをGood luckする所や、”どんなに辛くてもいくよ。ゴールまで”と言っていた場所を思い出す。
僕も
“どんなに辛くてもいくよ、俺だって”
とボソッと言ってみたw
言ってみて少し恥ずかしくなったw
シャンペへの登りは相変わらず嫌らしかったが、まだ登りの足はある。
途中、タッキーさんを発見。熱中症で辛そうだった。やはり、僕だけではなく皆んな厳しいんだな…
そう思って先に行かせてもらう。
18. Champex Lac 126.62km 14:26(16:49)
272位。いよいよ約束の地、シャンペ湖に到着。サポートはいないので、さっと出ようとするも、さっきから胃が気持ち悪く補給があまりできていないので、パンにスープをひたして食べる。ジェルはダメだが、これらはいける。
結局、18分程で出発。もう10分程早く出たかった所。
さあ、稲葉さん、ここからだね!
19. La Glete 138.23km 16:35(19:32)
248位。やる気は全く衰えていないが、胃がキツイ。気持ち悪いので、普通のジェルは厳しい。即効性は無いが、アミノバイタルは飲めるのでそれをエネルギーにする。途中で、帝珠さんが追いつきてきた。先行していると思っていたので、意外だったが、同じく胃がやられていて、休んで回復させたとのこと。絶対完走しましょう!とエールを交わす。相変わらず下りは痛いが、6年前に比べると全然マシ。全然レースできている。
20. Trient 143.12km 17:18(20:23)
249位。暗くなる前になんとか、トリエンに到着。ここでもパンにスープを浸して食べる。
スープにご飯も入れられるというので、お願いする。これは有難かった。
気づけば前回もこれくらいの時間に着いていたなと、ふと思った。
ライトを点けて、山に入る。二晚目突入。
前回はここから大石さんと二人で登ったトレイル。トレイルに入るほどなくして、とんでもない睡魔に襲われる。自分が蛇行しているのが分かる。そして、程なく、初めて幻覚を見た。岩や木が、子供が書いた絵に見えるw
木の切り株にだれか座っていると思うと、誰もいない。めちゃめちゃ怖い。
そして、レースというより日本でなんかのトレランイベントに参加している気分になってきた。
途中、顔に水をかけて、なんとか、これは、UTMBなんだ!レースなんだ!と自分を鼓舞する。
そうだ、稲葉さんも”下向くなよ!”と言っているはずだ。それに、6年前の宿題を片付けるのは、俺しかいないし、今しかないだろ!
そう思いながら、顔をビンタしながら、前の人のライトだけを見て進む。
今思えば、レースを通して一番厳しかったかもしれない。
21. Les Tseppes 146.37km 18:41(21:53)
246位。フラフラしながらなんとかピーク到着。ここからの下りは、太ももの痛みで眠気が覚めるw ゆっくりながらも走りながら進む。
22. Vallorcine 153.59km 19:30(23:18)
254位。バロシーヌに到着。あとは、モンテ峠を越えればゴール。すでにジェルは飲めないので、コーラを一つのフラスコいっぱいに入れて出発。これでゴールまで行く。
モンテは相変わらず、山頂が遠い。まるで、オリエンテーリングのようにマーキングを探しながら奥へ奥へと進む。
23. La Tete aux vents 161.24km 21:34(1:56)
247位。いよいよ、ピークに到着!
6年前、レースをやめた不甲斐なさに涙した場所で、ボコボコにやられながらもまだファイティングポーズが取れている自分がいた。
“はじまりの終わり”
案外冷静に、
ボソッとつぶやいてから、よし、下ろう!
と先を急ぐ。
24. Chamonix 171.62km 23:03(3:44)
240位。最後の下り、とくにフレジール小屋からの林道は全然標高が下がらず、やっぱり辛かった。でも、最後まで走りきり、7位ほど順位を上げ、33:44:40でゴール。
シャモニー に帰ってきた時、
目標(30h切り)よりは、3h44minほど遅れたけど、不思議と悔しさはなくて、今回はちゃんとレースを最後までできたな。
という安堵感で一杯だった。
前にもブログで書いたかもしれないが、UTMB自体は100mileレースの最終目標ではなく、One of them的なものになっていて、完全燃焼(バーンアウト)というよりは、今回序盤からかなり我慢のレース展開だっただけに、そこから得られるもの(引き出しにしまうべきtips)が多くて、さらに100mileの奥深さを感じた次第。
また、激走モンブラン2009を見て、トレランを始めた自分にとって、正にDecade(10年)と呼べる節目と言える大会で、鏑木さんとご一緒できた。トレイルランナーとして、これ以上の幸せはなく、また、人生においても記憶に残る大会であった。
そして、この大会で世界とやりあってきた師匠の偉大さを改めて感じたのであった。
最後に、日本で応援してくれた、STS・シガウマラ・すぽるちば等のトレラン仲間の皆さん、今回もハラハラさせてしまったけどエイド通過を見守ってくれていた奥さん、本当にありがとうございました!
暫くは、ゆるゆる過ごしたいと思います。
【引き出しにしまうべきTips】
○レースの最後まで、自分をメタ認知できていた。
※100mileは辛いもの、身体が痛くて当たり前。経験により、そういうある種の割り切りが出来てきている。
○サポートいないのはジェルは重いし、クールマイユールなどで時間かかって辛いが、頼れるのは自分しかいないと、割り切れるので、自分としてはあってるかも?
○UTMBはテクニカルではないが、怪我や不安な部分をほじくり返してくるいやらしいコース。ギャップのある硬い、長い下りのトレイルに難しさがある。次に出るときは、そこの対策をすべし。特に、コンバルからクールマイユールの下りに注意。
○ガスター10は、胃液の出を止めるのでダメ。飲むなら、漢方(ガシンサン)にすべき。
○酒もダメ。5日前から禁酒すること。
1日前の禁酒はダメ。シャモニー の雰囲気に踊らされないこと。今回は、シャモニー 入りしてから、調子に乗って飲みすぎた。序盤の脱水もそれに起因すると思う。特に肝臓系の不調。
○スポーツ麦茶は攣り対策に有効。レース序盤でいれるべき。摂取後、持ち直した感じがする。