プロ・スポーツ選手のセカンド・ライフは一筋縄では行かないようだ。
若いころに才能を見出され、学校ではスポーツ一筋。常に競争する世界に身を置き、その中からプロとしてお金を稼げるようになるのはほんの一握り。他の選手と切磋琢磨し、常にプレッシャーと闘う生活。周りの人やファンからチヤホヤされたりもする。
でもそんな生活も長くは続かない。多くの人は競争に負けて若くして引退を余儀なくされ、競争に生き残った人でもいつかは年齢による体力の衰えにより選手生活を終える。競争する世界から離れて目標を失い、周りの取り巻きもいなくなり孤独になり、生活が荒んでいく。
最近話題のあの人の名前を出すまでもない。同じような例は、世界中のあらゆる場所に転がっている。
アメリカでは、こうしたあるスポーツの第一線で活躍した選手が、新たな目標や競争の場としてトレイル・ランニングを選ぶ例が度々見られる。
たとえば先週末のSan Diego 100で優勝したネイト・ジャッカ(Nate Jaqua)。かつてアメリカのMLS(メジャー・リーグ・サッカー)のシアトル・サウンダースなどでディフェンダーとして活躍していた彼は、引退後に始めたトレランでも相当なレベルで、昨年はPine to Palmで優勝、Bighorn 100で2位に入っている。
また、数週間後に迫るWestern States 100にエントリーしているエリック・バーンズ(Eric Byrnes)は、元メジャーリーガーとして10年の選手生活の間に5球団を渡り歩いた経歴を持つ。
そしてこのエリック・バーンズの友人で、Western Statesで彼のペーサーをするのはランス・アームストロング(Lance Armstrong)。ツール・ド・フランスで7連覇(後にドーピングにより剥奪)した彼は、昨年末のトレイルランニング大会で優勝している。
あるいはカイル・ディエズ(Kyle Dietz)。彼は元プロの総合格闘家だ。
そこには山の人だとか、陸上競技から来た人だとかという狭い区別はない。
誰にでも開かれ、誰もが楽しめるアクティビティとしてのトレイル・ランニング。以前別のエントリーで書いたように、開かれているがゆえの脆さもあるが、それがアメリカのトレイルランニング文化を特徴づける一つの側面といえるだろう。