昨年末の抽選で出場権は得られなかったもののウェイトリスト7番目に入ったHardrock 100。過去のキャンセル率を見る限りかなりの確率で出走できそうなので、今年の最重要レースと位置づけ、2週間前から現地入りして準備していました。
ところが今回は出場を辞退するランナーの数が史上最低で、レース開始直前まで待ったものの結局ウェイトリストの2番目からぬけ出すことが出来ませんでした。
準備万端で体調もよいのに走れなかったのは残念ですが、まあしょうがない。今回はちょっと運がたりませんでした。
もっともハードな100マイルラン
最もハードな山岳100マイルのひとつにも挙げられるHardrock 100。レースの前の週に行われたコースマーキングに連日参加し、コースの大部分を下見しましたが、上り下りの程度はUTMBとそれほど変わらない印象でした。実際にUTMBは距離170kmで累積標高10000メートルなのに対して、Hardrock 100は160km、10060メートルなので、その点では大差はありません。
私が感じたUTMBと大きな違いは以下の3つです。
- まず標高。UTMBではもっとも高いところで2500メートルを少し超える程度なのに対して、Hardrockはコースの大部分が標高3000メートルを超え、最高地点のHandies Peakの標高は4285メートルにのぼります。私も最初の数日は頭痛に悩まされました。
- コースの追従のしやすさにも差があります。UTMBや他の多くのトレイルランニングレースと比べるとコースマーキングが少なく、また場所によってはトレイルから外れた場所を進むため、コースがわかりにくい印象です。特に昼間はコースマークが風景に埋もれて見落としやすそうでした。
これはHardrock 100ではランナーが事前にコースを十分に理解していることを前提としており、ランナーにナビゲーションスキルを要求しているためです。事前に地図を読み、コースを下見するとともに、コースマーキングがどのような規則でつけられているかを理解しておくことが問われます。
- もう一つの違いがコースのワイルドさ。Hardrockが行われるサン・ファン(San Juan)の山々は大きな町から離れた大自然です。「足が乾いているようじゃハードロックじゃない」といわれるほど、コースのいたるところで水場を渡り、雪渓を横切ります。距離は短いものの「ここを行くの?」というような激登り激下りもあります。
このようにコースはかなりのキツさですが、完走の制限時間は48時間と比較的ゆるくなっています。(因みにUTMBの制限時間は46時間。)季節的にしばしば夕方には雷を伴う激しい雨が降ることも多いのですが、落雷に打たれる危険を避けるためにコース上で安全のために停まっても、経験と十分なハイキング能力があれば走力はそこそこでも十分に完走できる時間設定になっています。
出走することはコース以上に難しい
コース以上に難しいのが152人の出走枠に入ることです。
出走枠は、5回以上完走した人(Veteran枠)に35人、一度も完走したことがない人(Never枠)に47人、それ以外の人(Else枠)に70人が割り当てられており、前年の男女の優勝者以外はすべて*抽選によって決まります。(*ただしレースディレクターが自由裁量で決められる枠が若干あるようです。)
とりわけ「Never」の枠の人が出走するのは至難の業です。初めて抽選に申し込んで一発で当たる確率は1%未満。毎年申し込みを繰り返すことで当選確率は増える仕組みになっていますが、それでも当選するのに何年もかかるという話はざら。今年キリアン・ジョルネ(Kirian Jornet)と同着で優勝したジェイソン・シュラーブ(Jason Schlarb)は4回めの抽選でやっと当選。私が直接話をした中では7回目の抽選でやっと当選したという方もいました。何度も抽選に申し込んでいるアントン・クルピチカ(Anton Krupicka)も未だにHardrockは走ったことはありません。走力にかかわらず平等に抽選で出走者が選ばれるため、エリートでも出走が難しいイベントです。
Hardrock 100の魅力
今回のHardrock 100はエリートランナーのレベルが高く、特に、共にUTMBを複数回制したキリアンとグザビエ・テブナール(Xavier Thévenard)の対決は注目を集めましたが、他の大きなレースと比べるとHardrock 100はエリートランナーの数が少なく、トップランナーたちのハイレベルの戦いが毎年行われているというわけではありません。
(Grant Swampを下るJason、Kilian、Xavier。妻撮影。)
私が感じたHardrock 100の本当の魅力は、こうしたトップランナーの走りとは別のところにありました。
ちょっと話が長くなってきましたので、その魅力については次回のエントリーで書いてみたいと思います。
4 コメント
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