7月の3連休に予定されていたONTAKE100マイルのレースは西日本豪雨のため中止となった。トレイルランニングはアウトドアスポーツなので天候やトレイルの状況に大きく影響を受ける。参加者の安全が確認できない状況では大会中止は致し方ない。
ただ、一年間このレースの完走を目標に準備してきただけに気持ちの整理がなかなか付かなかった。大きな目標を失った喪失感。ONTAKEロスともいえるブルーな感情。100マイルの辛苦を体験しなくてもいいという安堵感も入り混じった複雑な心境だった。
ぽっかりと空いた心の隙間と3連休の予定。心と身体の隙間を埋めるにはトレイルランニングからしばらくは距離を置こうと決めた。天気予報を読んで東北に旅に出ることにした。
1日目は福島県の裏磐梯高原。130年前の1888年に起きた磐梯山の水蒸気爆発で山体崩壊が起き、大量の土砂が川を堰き止め、約2年かけて大小300個もの湖沼群を生んだ。その湖沼のうちのひとつの桧原湖で釣りを楽しんできた。ここはスモールマウスバスの聖地。腕にもよるが比較的イージーに数釣りができる。バスフィッシングのパラダイスともいえるような所だ。
2日目は涼を求めてさらに北へ足を伸ばした。目的地は宮城県と山形県境の蔵王連峰。中央蔵王最高峰の熊野岳(標高1841m)と苅田岳(標高1758m)。蔵王エコーラインから蔵王ハイラインと苅田岳山頂付近まで道路が走っている。蔵王は最も楽に最高峰の山頂を踏める日本百名山だ。苅田岳の頂上直下の県営レストハウスの温度計は18度。適度に風が吹き、半袖とランパンでは寒いくらいだった。
熊野岳山頂からは月山、朝日連峰、飯豊連峰、吾妻連峰など、東北を代表する山々が一望出来た。流石は日本百名山である。展望は一級品だった。
私は毎年のように東北の山を訪れている。主だった過去の山行は以下の通り。2012年安達太良山、2013年会津駒ヶ岳、吾妻連峰、2014年磐梯山、2015年岩手山、八幡平、早池峰山、2016年鳥海山、2017年八甲田山、十和田湖、奥入瀬渓谷。
東北の山に惹かれているのは、私が栃木県那須塩原という福島県とは目の鼻の先の町で生まれ育ったからだと思う。東北の山や街のどこを訪れても、故郷でみてきた原風景に近いものを感じることができた。自然だけでなく、旅の道中で触れる食文化や触れ合う人たちの話す方言からも故郷と似たものを感じ取っていたのだろう。今回の東北の旅を通じて郷愁を感じ、少しだけONTAKEロスが癒された。少しずつ新たな目標に向かおうという意欲が湧いてきた。