はじめに:紅葉シーズンの奥多摩でトレイルランニング
2020年11月、紅葉が見頃を迎えた奥多摩へ、男性4名でトレイルランニングに出かけた。今回のコースは奥多摩駅(標高350m)から鋸山(1109m)、大岳山(1266m)、御岳山(929m)、日の出山(902m)を縦走し、最終的に「つるつる温泉」へ下山する、全長約17.2km、累積標高約1200mのコースである。
出発:混雑の奥多摩駅から鋸山へ
6時46分新宿駅発、8時21分奥多摩駅着の「ホリデー快速おくたま1号」に乗車。駅前は紅葉目当ての登山客で賑わい、鴨沢行きのバス停には長蛇の列ができていた。われわれは駅前で身支度を整え、多摩川に架かる昭和橋を渡り、右手に現れる鋸山登山口から歩き出した。
鋸尾根から大岳山へ:アップダウンと紅葉の尾根道
鋸山登山口からの187段の石段を一気に登ることで標高を稼ぎ、尾根からの高度感に気持ちが高揚する。露岩とアップダウンが続く鋸尾根を越えた先の尾根道は、日本山岳耐久レース(ハセツネ)のコースと重なる。過去にハセツネを走った経験のあるモリジーとの思い出話を交えながら、日中の尾根道に広がる紅葉と針葉樹のコントラストに感動する。
鎖場を越えて大岳山の頂へ
鎖場を慎重に越え、大岳山山頂へ到着。残念ながら富士山は雲に隠れていたが、広がる裾野がかろうじて見えた。御岳山までは多くのハイカーとのすれ違いがあり、互いに挨拶を交わしながら譲り合って進む。
谷沿いの紅葉も見事で、天然記念物のニホンカモシカの姿にも遭遇した。途中、武蔵御嶽神社に立ち寄り、社殿に映える紅葉を楽しみつつ、参道の蕎麦の香りに食欲をそそられる。
突然の転倒:顎から流れる赤い血
完璧に思えたトレイルランは、日の出山手前の緩やかな下り坂で一変する。なんてことのない場所で転倒し、両手を前に突き出したままヘッドスライディング。顎を強打し、激しく出血した。一時は起き上がれず、手のひらや顎の傷を確認しながら応急処置を施す。
顎からの出血が止まらず、不安が募る。今回のグループの中で最も経験を積んでいるはずの自分が、このような不注意な怪我をしてしまったことが情けなかった。
ルート変更と温泉、そして再出血
グループの勧めで予定ルートを短縮し、日の出山からつるつる温泉へと下山。温泉で汗を流し、生ビールで乾杯したが、血の巡りが良くなったせいか再び顎から出血してしまう。
楽しいはずのアフターで、再び仲間に手を煩わせてしまい、自責の念に駆られた。
トレイルランニングと装備の大切さ
トレイルランニングは自然相手のスポーツである。転倒や怪我は誰にでも起こり得る。改めて装備の重要性と、応急処置のスキルを再認識させられた。人に迷惑をかけぬよう、最低限のことは自分で対処できるようにならねばならない。
終わりに:紅葉と温泉、そして仲間の言葉
今回がトレイルランニング本格デビューとなったIさんに、その魅力を感じてもらいたくて企画した行程だった。当初は金毘羅尾根から武蔵五日市駅へ下る23kmのルートだったが、自身の怪我により予定変更となった。
それでも紅葉、コース、温泉、そしてアフターのビールと、三拍子揃った充実の一日だった。
「トレイルランニングって、きっとこうだろうと思い描いていた景色がすべて見れた!」
Iさんのこの一言に、全てが報われたような気がした。自分の好きなものを共有できた喜びは、何よりも大きかった。