紅葉見頃の奥多摩へ男性4名のグループでトレイルランニングに行ってきた。
奥多摩駅(標高350m)から鋸山(1109m)、大岳山(1266m)、御岳山(929m)、日の出山(902m)と四山を縦走し、日の出山の東側のつるつる温泉に下山するコース。約17.2km、累積標高約1200mのトレイルトリップ。
6時46分新宿駅発、8時21分奥多摩駅着ホリデー快速おくたま1号に乗車。さすがは紅葉シーズン、駅前の鴨沢行きのバス停に長蛇の列ができていた。僕たちは身支度を整え駅前から歩き出した。多摩川に架かる昭和橋を渡って直ぐの右手が鋸山登山口。
最初の試練は187段の石段。一段一段を黙々と登る。一気に高度を稼いだ。すでに奥多摩の集落も遥か下方に見えた。高度感に気持ちが高まる。鋸山という山名どおり、鋸尾根には露岩が多くアップダウンがある。ここを凌げば先は今回のトレイルのハイライトが待っている。
鋸山を越えた先の分岐路から大岳山までの尾根道は日本山岳耐久レース(ハセツネ)のコースを辿る。僕と同行者のモリジーは過去にハセツネを走ったことがある。レース時の辛くとも楽しい思い出話。レース時にはこの辺りは夜間に通過するが、当たり前だが日中には全く違う美しい景色を見せる。特に尾根から見える見頃を迎えた紅葉や杉や檜の緑の樹林のコントラストが綺麗だった。
鎖場を越えればほどなく大岳山山頂。残念ながら富士山の山頂には雲がかかり、僅かに裾野が広がるのが見えるだけだった。大岳山から御岳山まではハイカーとのすれ違いが多い。挨拶を欠かさず登りのハイカーを優先する。
谷沿いの紅葉も最高。天然記念物のニホンカモシカの姿も見れた。せっかくだからと武蔵御嶽神社に立ち寄る。社殿に紅葉が映える。御岳山参道の土産屋から漂ってくる蕎麦汁のいい香り。
ここまでは見るもの体験するものが理想を絵に描いたような充実したトレイルランニングだった。
突然、僕の身にそれは起きた。
日の出山手前のなんてことはない緩やかな下りの登山道。いきなりすっ転んだ。両手を前にヘッドスライディング。ゴツンと鈍い音と共に顎に強い衝撃。僕の身に何が起きたか分からなかった。起き上がろうとするが思うように身体が動かない。数秒間、全く動けなかった。ようやく起き上がる。先ずは左右の手を見た。手の平の皮が数カ所めくれて出血していた。でも手の傷は大したことはなさそうだ。顎を触ると鮮血が手に着いた。3人からは心配して声を掛けられる。顎の出血の多さに動揺は隠せない。身体を確認する。膝、腕を擦りむいているが出血はない。興奮しているのか特に痛みは感じなかった。
山慣れしているM君から手渡されたペットボトルの水で手の平と顎の汚れと血を洗い流し、ティッシュで拭きとった。これ使ってと皆から手渡された絆創膏を傷口に貼った。問題は顎の出血。顎にティッシュを当てたがなかなか出血が止まらなかった。
グループ走の時に転んで怪我をするのは何度目だろうか。グループでのトレイルランニングが楽し過ぎて注意力が散漫になるからだろう。人前では調子に乗る悪い癖もある。今回のグループの中ではトレイルランニングの一番の経験者がこんなことでは本当に情け無い。なんとか出血が収まったがテンションが下がったままだった。言われるままにルートを変更して日の出山からつるつる温泉へ下山した。
しっかり止血できたと思っていた。温泉後に生ビールで祝杯をあげていたら、血の巡りがよくなって顎の傷口から再び出血。皆にどれだけ世話を掛るのか。本当に情け無かった。
言うまでもなくトレイルランニングは自然の中で行うスポーツだ。転んだりするのはベテランでもビギナーでもあること。怪我は誰の身にも等しく起きるものだ。いざという時のためにあらためて装備は大切だと再認識をした。人に迷惑をかけないように最低限自分でできることは自分でできるようになりたいものだ。
今回がトレイルランニング本格デビューというIさんにその楽しさを感じて欲しいと練った企画だった。当初プランは日の出山から金毘羅尾根を武蔵五日市駅に下る23km程度の予定だった。僕の身に起きたトラブルで途中でルート変更。早めに下山したから温泉は混雑していなくて、時間的に余裕のあるアフターを過ごせた。天候にも恵まれたなか、紅葉は見頃、コース設定も適度にアトラクションがあった。トレイルランニング、温泉、アフターの生ビールと三つの掛け合わせで何倍にもなったトレイルランニングの魅力を満喫できた。
「トレイルランニングってきっとこうだろうと思い描いていた景色がすべて見れた!」
Iさんが発したこんな言葉を聞けただけでも心満たされた。僕が大好きなトレイルランニングの魅力を少しでも彼に伝えられたことが何よりも嬉しかった。