小川壮太プロの本

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この類の本を初めて購入しました。8年ほど前に自分が山を走り始めた頃は、こういった本はなかったように思う。ランニング雑誌にはトレラン特集なるものが組まれていたりするものの、ロードランニングへの効果が主な視点であり、ランニング以前に認識すべき、「山に入る」という基本的な概念が欠けているものが多かったように思える。一通りの装備は紹介されているが、その使い方や意味、そしてマナー問題に関してもページスペースの割り方は少ないものでした。以前から自分のブログでも指摘していたのですが、安全に対する考え方や、昨今のマナー問題の一端に、主要ロード系ランニング雑誌の責任もあると自分は思っています。それらに比べ、この本では、山でのアクティビティーとしてのトレイルランニング、スカイランニングがまず根底にあり、そこが基軸となっているので、1つのテーマを掘り下げたり、多方面に話題を振ってもブレや矛盾がなく、小川壮太プロの山岳アスリートとしての一貫した哲学が見受けられます。特に、ページ下部欄で小さくコラム風に書かれている内容は、「あー、それそれ」と、他の入門書や雑誌にも書かれていないけれど、知っておくととても有意義なことが説明されています。これ以上はネタバレになりますので、あとは密林通販、全国有名書店でどうぞ。

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早熟の天才

衝撃的なニュースだった。

「白石阿島、14歳で比叡山のHorizon V15( 5段 )を第ニ登」

クライミングの経験がない方のために、わかりやすくマラソンに例えるならば14歳の女子中学生が2:07分台で走ってしまった事と同じような衝撃的な出来事になる。このV15というグレードを登れるクライマーは、男性を含めて世界でそう多くはいない。そこへ女性初、そして最年少というのは早熟の天才としか言いようがない。よくクライミングジムで、大人が子供に勝てないことは多々ある(自分の場合、常にそうだ)自重の軽さや手の小ささをうまく利用して、大人では思いつかないムーブで登っていく。ただ、今回の白石阿島の場合は、そういう次元ではない。インドアでの競技会の動画を観ると、ここ1~2年で身長も伸び、すでに幼児体型ではなくなっており、手足の長さと関節の柔らかさを駆使して、他の選手がデット(飛ぶような動き)で取りに行くところを、スタティクス(静的なゆっくりとした動き)で取りに行く事ができる。筋繊維が太い欧米選手(白石阿島は日本と米国の二重国籍だが)と比べると明らかに異質だ。

他のスポーツで早熟の天才が消えていく例を多くみかける。体型変化によって感覚が大きく変わるゴルフではジュニアでのトップがそのままトッププロになった例は稀ではないだろうか。そしてなによりも継続的な努力が続けられる環境がとても重要であるように思える。継続的ということは、絶えず力が入った状態ではなく、息の抜き方も含めて、子供が子供らしく成長していくこと。聡明な子供ほど、否が応でも近寄ってくる大人の社会に適応して「良い子」になろうとする。それは時として大人びた発言や行動が伴うことになる。子供が大人びてしまう環境は決してよいことではないですよね。白石阿島も、学校で勉強をし、友達とアイスを食べ(食事制限による体重コントロールは厳しいかもしれぬ)、恋をし、そういう1つ1つの成長を経て、これからもクライミングを続けてほしい。今回の偉業は外岩でのV15第二登というものであるが、これからインドアでのスポーツクライミングでもタイトルを総なめすることだろう。周囲の大人たち、特に日本のマスコミは、日本と米国どちらからオリンピックに出るのかなどという気の早い話をしだす無神経さ。もう少しそっとしておいてあげようよ(笑)

彼女のinstagramだが、女の子らしい絵文字が使われていて、なんだか少しホッと安心した。

彼女のinstagramだが、女の子らしい絵文字が使われていて、なんだかホッと安心した。