2012年のSTY参戦記、プレイバック第四回目にしてようやく最終回。
コース最大の難関、天子山地をクリアし完走が見えてきたが、何が起こるかわからないのがロングトレイル。予期せぬ体調不良により制限時間との闘いに。
完走するためのメソッドもなく、経験値も少なかった時代。泥臭く挑戦した初めてのロングトレイルは忘れられない思い出であり、この経験があったから今も続けている。
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「トレラン富士大決戦!完結編(UTMF/STY)」
55kを過ぎても疲労感はあまり感じなかったが、ハンガーノックを避けるためにエイドで食事をとる。40分近く滞在している間にすっかり明るくなり、5時にA9本栖湖スポーツセンターを出発した。
しかし、出発してしばらく経つと、異常な発汗と、力が出なくなる。。。ハンガーノックや脱水症状はイヤだなと思い水を飲むも、今度は気持ちが悪い。これが噂の「ロングレースは胃腸がやられる」というやつなのか。。。
予想だとゴールまですべて歩いても制限時間には間に合うので、とりあえず不調ながら前に進む。しかし明らかに遅い。さらに鳴沢氷穴までのロードのゆるやかな登りで足の裏に水ぶくれが発生。これがけっこう痛い。
結局、次の関門の鳴沢氷穴までの14kを2時間以上かけ、制限時間20分前の7時40分に通過。ゴールの制限時間は12時00分、残り14kだが、自分の調子と最後に控える登り(東海自然歩道)を考えると、時間内完走が厳しいように思えてきた。
それでも前進あるのみ。紅葉台、足和田山と休み休み進む。時間と標高と距離が大切な時に限って、GARMINのバッテリーが終わる。今思えばそんなに厳しくない登りも、天子山地以上に辛く感じた。
コース脇で休んでいると、後ろから来たUTMFランナーの方が「大丈夫ですか?足りないものがあれば言ってください」と声をかけてくれる。(足りないのは自分の実力です。。。)
ゆるゆると歩いていると、FB友だちでお会いしたことのなかったUTMF出場の朝倉さんに出会い、アドバイスをいただいたり、気にかけてくださったり。
そしてまたアフロさんに出会う。残りの時間と距離から「少し急いだほうがいいですよ」とアドバイスをいただく。
そういえばUTMFランナーたちはここに来てみんな走っている。タフで強い精神力、本当にすごい人たちだ。さらに自分たちは150k近くを走っているのに、他人を気遣う気持ちを持っている。トレイルランニングは競争ではなく旅。そして参加者は旅仲間ということをあらためて実感した。
とりあえず可能な限り急ぐ。足和田山を抜け、下り基調となる。登りは力が入らないが、下りはそれなりのペースで進めるので「あとは下るだけ」と残りの力を振り絞る。
しかし、下り途中の神社を抜けるとまた登っているではないか!
自分の予定だと10時までには山を出たかった。しかし神社についた時点で10時15分。時間のプレッシャーが。。。全力で下ってきたので、もう力入らないし。。。
それでも最後の力を振り絞って登る。また登る。その角を抜ければ下りになるに違いない。
しかし、角を抜けても登りだった。。。
「もうダメ、みんなゴメン」
その登りを見た瞬間、心が折れたことを実感した。ポキンという音が聞こえたような気がした。
全身に脱力感。時間は10時23分。コース脇に座り込み、とりあえず2分だけ休もうと思った。
その2分間、心折れ部メンバーみんなの顔が浮かび「みんなも苦しい時間を過ごしてきたんだろうな」とか「サポート隊も疲れているのに気遣ってくれて大変だろうな」という考えがよぎる。そう思うと、自分だけ辛いからといってさじを投げるわけにはいかないという気持ちが沸いてきた。家で待っているKikiさんやねことも「完走する」と約束しているのだ。可能性がある限りはあきらめてはいけない。
そのたった2分の間に、何故か少し復旧した。腰をあげ、最後の登りを進む。先ほどより身体が動く。そしてようやく下りになり、走れるだけ走る。ほぼノンストップで下り、山を出たのが10時45分頃。スタッフの方が「あと5kですよ」と言っていたので、キロ12分くらいで歩いて進めば制限時間内に充分に間に合う。
河口湖沿いをゴールに向けて歩く。サポート隊が心折れ部フラッグを持って待っていてくれるはずだ。あ、遠くに黄色と赤のTシャツ!「お〜い」と手を振ったら、THE NORTH FACEのスタッフの方だった(まぎらわしい)。
そして今度こそ心折れ部サポート隊が待っていてくれた。先にゴールしてくれたメンバーも待っていてくれた。ぼくなんてほぼビリなのに、多くの方が祝福してくれた。
5月20日11時32分。スタートしてから25時間32分、制限時間内で82kの完走を果たした。STY男子は出走 1011名、制限時間内完走 841名(完走率 83.2%)ぼくは837位。本当にギリギリの完走だった。
それまでの苦労や疲労感も最後には感じず、メンバーとゴールした瞬間は最高の時間だった。まさにALONE TOGETHER。多くの仲間と喜びを分かち合うことで、喜びは何倍にもなる。ひとりでは完走できなかったことは間違いない。
開催前は完走率が30%と予想されていた難コースのUTMF/STY。しかし終わってみれば、予想より遥かに高い79%の完走率だった。
ぼくには分かる。100マイルレースであることや、難コースであることを事前に知っていた参加者たちは、真剣にレースに向かいあい、対策を考え、そして練習したに違いない。みんな、トレイルランニングが好きなのだ。
そしてUTMFに6名、STYに7名参戦した心折れ部メンバーは、無事全員が制限時間内完走。ぼくはフルマラソンも完走できないけど、それでもSTYを完走できたのは、やっぱりトレイルランニングが好きだから。そして、たくさんの仲間がいるから。
そんな気持ちをあらためて実感させてくれたUTMF/STYという素晴らしい大会および、主催者や関係者の方々には感謝の気持ちで一杯です。完走した後は「来年はいいや」と思ったけど、今は「来年も絶対出よう」と思っている。来年も是非開催してください!
そして難コースを共に闘った心折れ部メンバー、トレラン仲間、すべてのトレイルランナー、サポート隊のみんなにも感謝します。
トレラン最高!
心折れ部最高!
次はモンブランだ。
(終)
追記(20200530)
でも当時の日本では「変わった人たちがやっている」トレイルランニングが、シャモニーでは多くの人たちにリスペクトされる素晴らしいアクティビティということを経験した。
もっと多くの人たちにこの素晴らしいアクティビティを知ってもらいたい。運動歴もないぼくが挑戦したUTMF/STYやシャモニーでの経験は、Mountain Martial Artsを立ち上げるきっかけのひとつとなった。
1 コメント
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