昨日、2018年のベストギアについて投稿したんだけど、改めて語っておきたいという番外編を追記。
ロードラン中心のランニング雑誌RUNNNINGstyleのトレイルランの連載「ランスタトレラン部」を担当して2年。そこからお世話になっているPOLARTEC(の代理店、エスシーティージャパン社)。これまでも様々なプロダクトでランスタトレラン部を支えていただいているのだけど、ピレネー山行にあたり、わたしの挑戦を応援していただいてとってもお世話になった。
モノ紹介前に、先に伝えておくべきちょっと触れにくい “アンバサダー”の話
わたしは仕事柄、色々なプロダクトを試す機会があるけど、自分がプライベートで使うものは、本当に使い勝手が良くて心地よくて、そして自分を守ることができるという信頼があるものしか使わない。線引きは大事だ。
SNSの時代、ブロガーやインスタグラマーに「アンバサダー」と称して(いつの間にか便利な言葉になった)、商品提供やプレイスメントをする企業が増えた。#PR なんていうタグを付けようが付けまいが、もうそろそろみんな商品越しの自撮りとかそういうものは最初から疑ってフィードを流していると思う。あれでどのくらい販売数が伸びるんだろうか。「バカ売れ」みたいな現象って久しく耳にしていない。あったとしてもそれは「アンバサダー」起因であることなんてほとんどない。ブランディングか、知名度向上か、タッチポイントをただ増やしたいだけなのか、1個でも2個でもモノが売れてほしいのか。だからわたしは商品提供を受けているものの、ほとんどが自ら提案して営業して(何をするために何故必要でどういうお返しができるのか)を伝えた上でお願いしてサポートしてもらっている。あるいは提案された場合には何を求められているのか聞くようにしている。わたしのSNSの波及力は大したことがないので、サポートしてもらっているお礼と感謝は実際に使ってみてのインプレッションを伝えるなり、イベントやこういった場で発信することで対価としているつもりだ。
このアンバサダー問題は、マーケティングを仕事にしている身としてはあんまり真正面に向き合いたくない。数年前のステマ・PR表記論争どこへやら、すっかり死語となった「ステマ」は「インフルエンサーマーケティング」と名を変えていつのまにかまた蔓延している。それ自体は悪くないと思う。本当によければ、ぜひ使ってください、っていうことであれば。でも一部では、インフルエンサーを抱え込もうとしたはずが、実はただモノが欲しいだけのひとたちにたかられているだけじゃないかという悲しい状況も見かける。コストをかけたマーケティングが簡単に消耗されていくくらいには投稿者も閲覧者もみんな賢いし、SNSは共感とかコミュニケーションみたいなことよりも、もはや自分を魅せるツールになっているユーザーの方がずっと多いんじゃないかと思う。
さて、そういうわけで、“ステマ”でもなんでもなく(ただそれが言いたかった)、わたしが自ら願って選択して信頼して着用しているPOLARTECのプロダクト。2018年、どんなものを使っていたのか、何がどういいと思っているのか嘘偽りなく紹介したいと思う。ブログに書いてって言われてない。心配になるくらい言われてない。むしろ、わたし自身がもっと伝えたいと思っているのに伝えきれていない。だから、ここへ書いてみようと思う。いいものはもっと多くの人に体験したいと思うのは当然だ。
あ、ちなみにわたしはPOLARTECの“アンバサダー”ではない。
そのネーミングかどうかはともかくとして、広報大使的な(ambassador)になれたらそりゃうれしいんだけどね(笑)その好きっぷりを以下にて語り尽くしておこう。(おっと別にゴマすってるわけではない)
汗冷え知らずのサラサラ、柔らかな肌触り
POLARTEC Power Dry
photo by Takashi Ueda
ランスタトレラン部用にMMAで作ってもらい、一般向けの限定販売もしたポーラテックパワードライという素材を使ったTシャツとタンクトップ。
このシリーズの全てのファブリックは、両面に異なる編み糸を用いた二重ニット構造(特許取得済み)を持ち、内側と外側で表面の性質が異なります。内側は水分を皮膚からすばやく除去し、外側はすばやく乾きます。100%ポリエステルで、通気性が高く、あらゆるスポーツにおいて、下着またはテクニカルシャツとしてベースレイヤーに最適です。
だそうで、まず着心地というか肌触りがすごくいい。ほっぺスリスリしたくなるくらいやわらか。いまどきコットンの風合いの100%ポリエステルはどこにでもあるけど、見た目がコットン風なだけでやっぱりポリだな~というものもある。その点、パワードライはとにかく柔らかで軽く、心地が良い。ぽっちゃり女性代表(笑)としては生地が薄くて柔らかいとブラトップのまわりのお肉がね、背中のお肉とか腹の肉がね、むちっとしちゃうところはあるんだけどもそれはもう自業自得ですからね。
登山からレースまで色んなシーンで使っていて、かなり汗噴き出す状況もあるけどそれでもサラッとしてるから驚き。汗冷えが嫌で一昨年はメッシュ素材のTシャツを着たりしていたけど、これだけ速乾性があるなら断然こっちがいい。
photo by Takashi Ueda
信越五岳でペーサーをした時は朝から晩まで着ていた。ひんやりするタオルとか、涼しさ押しの商品もあるけど、それって夜間走る時には生地そのものがなんだか冷たくなってしまってお腹が冷えたりする。パワードライはそういうことがなく、本当に乾きが早くて冷たくならない。
MMAのタンクトップタイプはサイドがメッシュになっていてより暑い時向け。トレイルランニング程度のザックならともかくとして、大きな登山用バックパックと背中が広い面で接する時は汗で色が変わるくらいに濡れることもあるけど、休憩中に乾く印象。下ろした時に冷たい風が吹いていたらもちろん寒い。そういうシーンでは逆にむやみに下ろして乾かそうとせず、背負ったままの方が不快感がない。夜洗って室内に干しておけばおおよそ乾き、やや湿っていても着てしまえば体温ですぐ乾く。着替えが1枚しかない長期縦走にぴったりだった。
内面がウール、外側がポリエステルの夢みたいなハイブリッド素材
POLARTEC Power wool
嘘でしょ、なんなの、そんなことできんの?
っていう素材がパワーウール。肌に触れる内側がグリッド状のメリノウールで、表は速乾・通気性のあるポリエステル。【混紡】というより二層?になっている感じ。わたしはPOLARTECの素材の中でもパワーウールが一番のお気に入り。
「温かくて肌触りが良い方がいいし、臭くなるのが嫌だから、わたしはウール派」
「いややっぱ速乾性を取るなら化繊でしょ、ウールは虫食うし破れるし」
みたいに悩んできたのはなんだったのか。
Polartec® Power Wool™は、天然繊維と合成繊維が持つそれぞれ独特の特長を、バイコンポーネント繊維に組み込んだ画期的な生地です。異なる原料糸をブレンドする業界標準の手法では、意図するメリットを得られず、素材本来の機能が阻害されてしまいます。メリノウール内側に、合繊繊維外側に分離することで、最適な吸汗性、通気性、防臭性、耐久性を備えたハイブリッド素材を開発しました。
ということらしい。難しいことはよくわからないんだけども、できるのか。できちゃったのか。できちゃったらしい。ウールの良さとポリエステルの良さを合わせることができちゃったらしい。温かくて、肌触りが良く柔らかだけど、速乾性と通気性があって耐久性もあるいいとこ取りなのだ。同じパワーウール素材でも何種類かあり、商品によって結構着心地は違って速乾性や温かさは差がある印象だ。(これはPOLATEC製品のすべてにおいて言える)
MAMMUTのパワーウールを使ったTシャツ。ポーラテックのプリントは提供時の後付けなので、本来はMAMMUTのロゴさえ目立たないシンプルな1色。内面のウールは毛がかなり短いすごく細かいグリッド。表面はわりと重めの化繊なので、こんな風に海に飛び込んで水にどっぷり浸かると(どんなシーンだよ)、水をたっぷり吸ってかなり重くなる。速乾性は、パワードライと同時に乾かせばもちろんパワードライの方が早く乾く。でも湿ったものを着てもあんまり冷たくないのが不思議。朝乾いてなくて困ったことがあったけど、気温が高かったのでそのまま着て不快感もなく、30分もしないうちに乾いた。どちらかというと縦走ではパワーウールばかり毎日着ていて、トレイルランでではパワードライという使い分けだった。臭くならない。最高。
めっちゃしょうもない顔の写真しかなかった。これはTeton Brosのパワーウールを使ったロングスリーブ。トルデジアンでは後半ずっとこれを着ていた。Tシャツじゃなくてこれを1枚。Teton Brosがこの商品に使っているパワーウールは表面も薄くて柔らかで伸縮性良く、汗を吸って重くなる印象もない。だからこれで走っていても快適なのだ。同じ厚みのパワーウールで半袖もあるみたい。厚めの生地でファスナー付きのものもある。だけど私はこのシンプルなロングスリーブがとにかく好きで、秋冬シーズンの朝ランでも手放せない。長袖で、直接着ても肌触りが良くて、汗で冷たくならないけど暑くないものって本当に見つからない。トレイルランニングでも使うし、ハイキングでも、雪山登山やスキーのベースレイヤーとしても使う。使いすぎてかなり着古した感があってもなお着続けているほど愛用している。
のに、最近多摩川の砂利道で転んで肘をビリビリに破いて血だらけにしてしまった。
けど、まだ着てる(笑)
Teton Brosでは細かいグリッドの薄いパワーウールを使った下着も展開していて、店頭で見かけると毎度買おうかうんうん悩んで買わずまま。絶対最高だと思う。絶対お尻が幸せだと思う。
「必携装備:ミッドレイヤー、空気の層を作れるもの」って何
POLARTEC PowerGrid
photo by Takashi Ueda
魂をどっかに置いてきたような右の人ではなく、左の嬉しそうなわたしが来ているグレーのミッドレイヤーが、ポーラテックパワーグリッド。パワーグリッドも同じ素材で色々種類があって、Answer4のものは細いグリッドで通気性が良くトレイルランニング向き。トレイルランレースの「必携装備」。50kmくらいからほとんどのレースで必携装備が設定されるようになった。
レインウエアの耐水圧の数値やシームについて言及されていることが多いが、なかなか専門的な話でトレイルランを始めたばかりにはわからないことも多い。そんな時はお店の人に「この商品はこの条件を満たしていますか?」と確認してから買うべきだと思う。レインウエアの次によく質問される「この防寒着、ってロンTじゃだめなんですか?」「ダウンジャケットを持たなきゃいけないんですか?」という台詞。ウィンドシェルじゃだめか、と聞かれたこともある。“空気の層”って書いてあるじゃーん!って思うけど、空気の層って何なのよ、と。そりゃそうだ。
photo by Takashi Ueda
ポーラテックと言えばフリース。フリース素材の第一人者。ミッド(ミドル)レイヤーの先駆者的存在。軽くて暖かくて速乾性のあるポリエステル素材の様々な種類の製品(生地)を作っている。ミッドレイヤー=中間着は身体の体温を保つためのレイヤー。
パワーグリッドは、「グリッド」と呼んでいる、“シマシマ模様”や“マス目模様”の凸凹の部分が起毛していて、「温かい空気」を保ちながら、汗を吸収しつつ通気性で蒸れを逃がす仕組み。他の素材よりもさらに速乾性に優れている。伸縮性も高く身体に沿うのでトレイルランニングというアクティビティにちょうどいい。もちろんダウンの方が保温性や軽さは優れているけど、化繊だからこそ行動中に着ることができる点は重要。停滞時に着るだけでなく、汗をかくシーンでも着ることのできる防寒着なのだ。わたしはTシャツの上に着たり、テント泊の時はTシャツを脱いで肌にそのまま直接着たりもする。内側のグリッドの肌触りが良いのでそのまま着ることができる。(ファスナーが肌にあたると冷たいけどね)
このネックウォーマーとグローブは非売品。イベント時にブースで買えることもある。自分が主催のイベントで提供していただいて配ったことも。グローブは色んなブランドがパワーグリッドを使っているので探せば買える。冬のインナーグローブとしても優秀。もちろんトレイルランでもレースでも使用。
化繊の中綿ジャケットの選択肢をくれてありがとう
POLARTEC Alpha
ダウンジャケットの「ダウン」に使用されているのは、動物の羽毛(グース、ダック)。化繊のわたに比べて保温性は高くて軽いけれど濡れに弱い。水に濡れるとぺたんこになり、保温性が損なわれてしまう。生地に覆われたダウンは乾きが良いとは言えない。そこで、選択肢として挙がるのが化繊のダウン。いままで化繊の中綿って重いだけじゃないの、と思っていたのにすっかり愛用するようになったのがポーラテックアルファ。ガーゼのような薄い生地にポリエステル綿を編み込んだもの。綿(わた)だけが入っているのではなく、生地になってるので温かさが均等で綿(わた)の偏りもなく、収納もコンパクト。縫い目からはみ出ることもない。
KARRIMORが特集したPOLARTECのインタビュー記事(Link参照)にはこんな風に記載されている。
〈Alpha®〉の開発は、もともとはアメリカの特殊部隊からのオーダー。それまでのインサレーションジャケットには問題があり、ファブリックを開発してほしいというものでした。特殊部隊の任務では、さまざまなコンディションでの活動が求められます。しかも、ときにはとてもアクティブなパフォーマンスが必要で、ときには身をひそめるような静かなシチュエーションがあります。
彼らは、保温性があり暖かく、通気性があり快適で、しかも防水性もあり、アウトドアでの耐久性や保護性もあるという、それこそまるで魔法のジャケットを求めていました。たしかに、ときには湿地に身を潜めることもあるでしょう。そんなシーンでは高い速乾性は必須ですよね。
そして、〈Alpha®〉の開発には、アラスカでのテストが行われました。とても冷たい水のなかで待機したり、フィールドで激しい運動を行ったりして、快適性や乾燥までの時間を計り、ベストなチューニングを施しました。〈Alpha®〉がアウトドアフィールドにおいて信頼性が高い理由とは、まさにこうした開発背景によるものなのです。
このジャケットはTHE NORTH FACEのもので、体幹部分がポーラテックアルファの中綿、腕と脇下は厚手のポーラテックパワーグリッドという掛け合わせ。わりと厚みがあって走る時には向かないというのが正直なところ。嵩張るので、トレランザックの中にも入らない。でもたとえばこの写真のように秋に行われたOMMの本戦で着たり、最初の写真のように無雪期のアルプスの標高3000mの稜線で羽織ったりしている。びっしょり汗をかかないけど、それなりに蒸れるような行動時のウエアとして重宝している。
今年からベストタイプも発売された。つまり、上の写真のジャケットの真ん中だけを商品にしましたっていう(笑)THE NORTH FACEの今期のもの。これがなかなか良くて。下には速乾性の高い薄手のTシャツやロングスリーブを着て、体幹部分だけアルファのベスト。ハーフジップなので、胸元から熱気を逃がしたりしながら着用。アウターシェルの中に着るっていう使い方も便利。スキーなどのアクティビティでも使えそう。
全体が映っている肝心の写真がピンボケ。30代後半にもなってキラキラな自撮り得意でもキモチワルイでしょ、と開き直っている。
まさかの中綿そのまま表に出しちゃった斬新すぎるインサレーション
POLARTEC Alpha Direct
もはやインサレーションジャケットと言っていいのかよくわからない。一般的に中綿の入った防寒着をインサレーションウエアと呼ぶけれど、insulateに中綿的な意味は特にないので、断熱性のあるミッドウエアが本来の意味なのだと考えれば、全部インサレーションだ。
それはともかくとして、ポーラテックアルファを紹介した後のポーラテックアルファダイレクト。なにがダイレクトか、って、アルファの「薄いベース生地にポリエステル綿を編み込んだもの」をそのまま出しちゃったもの。えー!いいのー!化繊ダウンの中綿が出てるってことでしょー?アルファが綿(わた)を編み込んだ生地状になっているからこそできること。
なにが良いかというと、肌触り。ふぁっふぁっ。頬ずりしてるうちに眠りにつけそうなふわふわ感。つまりそれがジャケットの内側にあるということは着用した時の着心地はバツグンなわけだ。肌に当たる部分がふんわりしているだけで、着た瞬間に感覚として温かさを得られる。軽量なダウンジャケットは薄い生地を使っていることが多く肌に直接当たるとペタッと張り付く。最近はサラッとした防風軽量伸縮素材(PERTEX MICROLIGHTとか)もあるのでそのまま着ても不快感は少ないけれど、綿が触れる感覚に優るものはないと思う。ぬいぐるみ抱いてる感じ?いや、毛布に包まっている感じでいいか(笑)
もちろんダウンの方がコンパクトで軽いので、ダウンも持ちたいし、実際に冬山ではバッフバフのダウンを持っていく。一方で山と道がポーラテックアルファダイレクトを使用したこのジャケットは、行動時にも着るし停滞時にササッと羽織ったりもする。トレイルランニングでは使うシーンはないかもしれない。速乾性には優れているけど、ものすんごい汗をかくならパワーグリッドの方がいい。長期縦走の時、「万が一大雨や川で転んでザックごと濡れたら終わり」という状況で、ダウンを持つかアルファダイレクトを持つかという二択となり、汎用性の高さと濡れに強い化繊の最大のメリットを取った。アルファダイレクトをそのままダイレクトに使っている(外側も別の生地を張り合わせていない)ものも他ブランドから出ている。パワーグリッドよりも毛が長く保温性が高いので気になる。
とにかく通気性、圧倒的に蒸れないレインウエア
POLARTEC NeoSell
Teton BrosのTsurugi Light jacketはそのデザイン性やカラーリングで大人気だけども、生地にも注目してほしい(笑)。ポーラテックの防水生地、ネオシェル。ネオシェルも他の生地同様に数種類あって、ツルギライトは特にトレイルランニング向き。とにかく蒸れが少ない。ウィンドシェルよりもツルギライトを着ていた方が蒸れないんじゃないかと思うほど。
次世代のテクニカル・アウターウエアと呼ばれるソフトシェルです。従来のシェルは、フリースによる断熱層と防水/通気性のシェルの2層で構造されていましたが、この新しいコンセプトは1層だけで最悪の天候を防ぎ、優れた通気性、耐摩耗性、伸縮性を備え、より快適なアウトドア活動を可能にします。(公式サイトより)
さきほどのKarrimorの特集記事がすごくわかりやすいのでさらに詳しくは以下を読んでみてほしい。
POLARTEC社に訊く、最新ファブリック開発秘話
http://www.karrimor.jp/products/list.php?category_id=199
防水性と透湿性を兼ね備え、高温多湿な日本には向いているだろうという話。生地自体に通気性がある。
レインパンツもある。わたしが実際に数シーズンいろんな場所や天候、条件で使って感じていることとしては、蒸れは本当に少ない。軽い素材が動きを妨げずトレイルランニングにぴったり。ただし、2018年のASO ROUND TRAILで土砂降り泥んこの中で着ていたら「表面が」びしょびしょになってしまった。中は濡れていない。つまり水は通していないので防水はしているけれど表面が濡れていて(水をはじいていなくて)、重くて冷たかった。同じジャケットを着ていた友人も同様。その後天気が好転して晴れると、あっという間にカラッと乾いた。そこはまさに通気性と速乾性の強みだ。
大量の雨に降られ続けると水を玉のようにはじく状態を保ち続けるのは正直なところ難しいと思う。もしかするとプロダクトやネオシェル生地によって異なるかもしれない。ネオシェルの耐水圧は10,000mmくらいだと言われていて、もっともっと耐水圧が高いレインウエアはたくさんある。そこで、トレイルランニングというシーンに限って考えた時のポイントは、外からの濡れを防ぐけれど、内からの濡れを逃がさないことには中でビッショビショになってしまうアクティビティだということ。だから透湿性が欲しい。
耐水圧だけでなく、素材の違い、透湿性の違い、2層、2.5層、3層という素材そのものの構造の違いなどレインウエアはものすんごく奥が深い。全部100点なんていうのは難しい。ちゃんと良し悪しがあって、自分が最も多く使用するシーンはどんな状況で何が秀でている必要があるのかが選ぶ基準になるけど、それを突き詰めるのはなかなか簡単じゃないなと思う。
山と道ラボにすさまじく詳しいレインウエアの研究・検証記事があるので紹介したい
https://www.yamatomichi.com/journals/4228/
レインウエアって諭吉が何枚も飛んでいく価格なので何着も持つのは難しいけれど、最初から何時間も雨に降られ続けることがわかっているレースなら(練習や登山ならそんな日は行かない)、そういう時はどんなレインウエアを選んで持つべきなのかを考えるべきなのだろう。
スノーラン(旭川)でもネオシェルを着用。寒いけど走るから汗はかく。蒸れないことで中に来ているウエアが湿ることなく、走り終えた後も汗冷えしなかった。気温が低い時には重要だ。雪が降り続いていたけど、表面が濡れることはなかった。この時のレイヤリングは、パワーウール+パワーグリッド+ネオシェル。
これはライトじゃないツルギジャケット。ライトよりも厚手。ライトよりも表面が柔らかくてストレッチする印象。
表地に30D Stretch Nylonを使用したTeton Bros.がPolartec社と共に開発したKnit Backer NeoShellを使用。軽量で動きやすく静寂性にも優れているため、年間を通じて多くのアクティビティで使用されている。
雪山登山でも着ているし(この時4人ともネオシェルのジャケットだった)
スキーでは、本当にちょうどいいなと思う。(ポーズだせぇ)
秋冬シーズンの「風があって空気が冷たいけど雪はない」ハイキングにもぴったり。この時もパワーグリッド+ネオシェルの組み合わせ。これが最強なのだ。土砂降りの時、あるいは「長期縦走で1着しか持てないけど予期せず天候が荒れて逃げ場がない可能性がある時」は、ネオシェルの通気性と天秤にかけた上で、より耐水圧の高いものを選んで持つようにしている。
自分がどんな体質で、どんなことが好きで、どんな場所に行き、どうあるのが心地良いのか。そんなのは自分にしかわからない。残念ながら使わなきゃわからないし、失敗したりもする。そうしないと良し悪しが判らないんだから仕方ない。
新しいものはもちろん興味があるけれど、謳い文句たっぷりに次々と登場する目新しいものにただ弄ばれることなく、新旧問わず自分が良いと思うものを探し続けるのが一番楽しい。
ギアは、選ばれるのではなく選びたい。