過去のUTMF ブログ(現Fuji100 )や信越五岳ブログへのアクセスが増え始めると、レースシーズンがやってきたなという感があります。今回はレース後の長時間移動における体調管理について、最近私が経験した事例で具体的に説明したいと思います。
私自身は補給が上手くいったレースではレース後のむくみは少なかったです。一方で補給が上手くいかなかったレースでは両足、ひどい時には顔までむくみました。むくみの機序については長いので割愛します。レース中の補給に関しては、あーでもない、こーでもない諸説あり、なにが正しいかは人それぞれ、しかもその同じ人でも、蓄積した疲労度によっても変わってしまうものです。昨年の信越五岳のサイトでは、「低ナトリウム血症」が説明されていました。水分補給の頻度、量、ミネラルのバランスが必要ということ。キリがないのでここではこれ以上説明しないこととします。レース後に、おおよそ体内水分、ミネラルが不足した状態であることが前提とします。私自身がウルトラトレイルのレースに出ることはもうありませんが、過去の経験から、これらのむくみに対する「慣れ」が適切な判断を遅らせてしまいました。
「深部静脈血栓症」
私自身、血液コレステロール値は若干高いものの、LDL(悪玉)とHDL(善玉)のバランスがとれており、かかりつけの医師からは問題なしと言われています。ロードバイクでコンスタントに有酸素運動は継続しており、TG(中性脂肪値)は下限値に近い値で安定しています。それでも、仕事による疲労、寝不足、飲酒による体内水分量の不足は、レース後の体内水分不足と同じ状態をつくりだしていたようです。そこに、寒暖差が大きかった2月中旬から下旬にかけて、リモートワークで人が少なくなり、温度調整管理が上手くできていない古いオフィスでの長時間かつ集中したデスクワークによって、飛行機、車での移動と同じ条件が作り出されたようです。普段の血液検査時には健康的な値であっても、条件によっては血液濃度が濃くなり、脚部に血栓ができやすくなるのです。文章より図がわかりやすいでしょう。
https://betterl.bayer.jp/kessensho/venous-thrombosis/illness
「むくみ」への「慣れ」から、軽く運動すれば消える、などと高を括ってしまったのです。片足(特に左)だけ浮腫む、という方はすぐに血管外科での受診をお勧めします。むくみではないが、腫れる症状に、細菌性の蜂窩織炎(皮膚科)、血管が瘤に見える下肢静脈瘤(血管外科)があります。
「肺塞栓症」
下肢にできた血栓が肺に飛ぶと、肺塞栓症を起します。突然死のリスクもあり、通称エコノミー症候群とよばれるものです。古いサッカーファンであれば、日本代表のストライカー、高原選手が、発症した例が記憶にあるかと思います。https://president.jp/articles/-/4121?page=1
深部静脈血栓がエコー検査で確認されると、緊急入院となり、肺に飛ぶような遊離血栓がないか確認されるまで、トイレにさえ車椅子で行くことになります。私の場合は全く自覚症状がないにも関わらず、既に肺に飛んでおり、医師としては万が一を考慮し、歩くこと、立ち上がることもしないよう、指示されました。2日ほどで、これ以上は危険な血栓がないことが確認され、病院内をフリーに歩いていましたが、10日間の入院期間中は24時間酸素飽和度と心電図でモニターされていました。
ハードトレーニングやレース後の飲酒、あるいは暑熱順化を目的としたサウナ練の季節も近くなってきました。その後のバス、飛行機での長時間移動、又、車での移動ならば、運転者よりも足首を動かさない助手席や後部座席の方にリスクがあります。積極的に休憩を取り、車内でも意識的に脚部を動かしてください。飛行機のように10時間近い移動でなくても、条件によっては発症リスクがあるということです。それでもビールは飲みたいですよね。そのために走っているといってもいいぐらいですから。でも、その後の水分補給、消化の良い食事での補給をお忘れなく。SNSで不健康自慢するのは鉄人じゃない、カッコ悪いよ。(俺か !)
くれぐれもご注意のほど。自戒を込めて。