2011年冬。
翌年に迫った第一回UTMFのための鏑木UTMF合宿の宿で、ポータブルDVDプレイヤーを指さしながら、岩佐さんが興奮気味に言った。
“ほら、ここで、トニーがランパンからなんか出してますよ。もしかしたらジェルかもしれないですね。”
そこには、トニーこと、アントン・クルピチカが上裸でハンドボトルというミニマルなスタイルで100mileレースを走る姿が。
僕が知ってる100mileとは全く違う姿。僕は一気に引き込まれた。
そのDVDはUnbreakableと言うことを教えてもらい、僕は早速購入することにした。
それから、11年の歳月(エントリーしてから9年)が流れ、僕はついに彼の地に立つことができた。
そう、Western States Endurance Run(WSER)の舞台に。
今回、参加するにあたり、目標タイムは21時間とすることにした。
これは、2014年にSTSの仲間である、米山さんが21時間半くらいで走られているので、同じようなタイムでゴールできたら良いな。という想いから。まさに、米山さんとのセッションである。以下が想定タイム。
Olympic Valley 0:00
Lyon Ridge 1:54
Red Star Ridge 2:54
Duncan Canyon 4:11
Robinson Flat 5:27
Dusty Corners 6:56
Last Chance 7:45
Devil’s Thumb 8:51
El Dorado Creek 9:43
Michigan Bluff 10:33
Forest hill 11:49
Rucky Chucky 15:04
Green Gate 15:42
Auburn Lake Trails 16:56
Quarry Rd 18:07
Pointed Rocks 19:10
Robie Point 20:41
Placer High School 20:59
今回トレーニングに関しては、初めて、コーチングをしていただくことに。
コーチはシアトル在住の藤岡さんで、WSERもサブ20している経験豊富な方だ。そして、豪華なことに奥様のヨシコさんにはクルー、そして藤岡さんご本人からはペーサーもしていただけることに。実際のトレーニングは2月から開始。約5ヶ月、怪我もなく順調に仕上がった。
米国(サンフランシスコ)に入ったのは6/21(火)で、レース4日前。昨年のワサッチ100では、直前に入ってしまい時差ボケに苦しんだので、対策としてそれよりは余裕を持って入った。
6/21にNY在住の同じく選手であるアキラさんと合流し、そのまま、サクラメント付近のクニさんのお家で2泊させていただけることに。昨年の米国出張でお世話になったこともあり、なんだか実家に帰ったような懐かしさ!クニさんからは、カーディアックトレイルに連れて行ってもらったり、奥さんのデイジーさんから、料理も振る舞っていただき、本当にリラックスできて、お心遣いに大変感謝。
6/23(木)はクニさん家を後にして、いよいよスタート地点のオリンピック・バレーへ。
スタート近くのホテルについた後は、ドロップバックを整理したりして早めの就寝。時差調整もうまく行き、8時間寝られた。
6/24(金)は、いよいよレジストレーション。選手として参加されるトモヒコさん達とお話して、ドロップバックを置き、レースブリーフィングを聞く。
ここで、アクシデントが。クルー&ペーサーしていただく予定の藤岡さんご夫妻がシアトルからサクラメントの便が急遽アイダホ経由になり、到着が深夜になるとのこと。これは、大変ということで、ブリーフィングが終わって、お二人が来るまでの間に、とにかく寝だめしようと思い、18時には就寝することに。しかし、緊張からかよく寝られない。お二人を部屋に迎えて、2時間ほど寝たか。
スタート地点に朝4時に向かうと、続々と選手が集まってくる。こんな規模のレースは米国では経験したことがない。
シンヤさんが、”いよいよですね!”
と声をかけてくる。シンヤさんは、アキラさんのクルー&ペーサーを今回務める。
“時は来た。ただそれだけだ”
と返す。
なるべく普段通りに振る舞うものの、後でシンヤさんから聞いたのだが、いつもと様子が異なり、こんなに待ち望んでたレースなのに、なんだか覇気が全く感じられなかったという。
そりゃそうである。
その時の気持ちとしては、またワサッチの時と同様寝不足でレース出るのか。。
という不安で頭の中が一杯だったのだから。
こんなに気をつけてきたのに、ここで失敗するか〜という思いが頭の中をグルグル…
ただ、こうなったら切り替えるしかないので、徐々に冷静になってきて、スタート直後にカフェインを入れることにした。
カフェイン断ちはしていたので、かなり効くはずだ。スタート直後に一旦リセットして、気分よくレースに入り、また後半、カフェインを入れていけば良いかなと。
朝5時。いよいよ、レースがはじまった!
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