UTMBが終わり、マルセイユでサッカーを観戦した後はエクス・アン・プロヴァンスに数日滞在した。アフリカなどからの移民も多く雑然としたマルセイユに比べて、エクス・アン・プロヴァンスはもう少し落ち着いた雰囲気が漂う。もう20年以上も前、はじめて妻と会ったのがこの街だ。
31km地点にあるレ・コンタミヌに向かう途中で日が落ち始めたので、立ち止まってヘッドランプを取り出し装着した。まだ周りのランナーの多くは点灯していない。色々な人種が走る中で、モンゴロイド系で黒い目の私はヘッドランプを点けるのが早いほうだ。
初めてUTMBを走った2014年からメインのヘッドランプはずっとブラック・ダイアモンドのイコン。最近はもっと軽いものを使っている人が多いのだろうが、私は重さより信頼性と電池の持ち、そして何より年を取って見えにくくなっているので明るさ優先だ。
レ・コンタミヌが近づくにつれて闇が深くなってきた。
ヘッドランプの動作が不安定で、走っていると勝手に消灯してしまう。消えるたびに再び点灯するが、しばらくするとまた消えてしまう。UTMBに向けて新調したもので、電池も新しく、レース前にも動作を確認していたのだけれど。
そのうち点かなくなってしまった。エイドも近いので対処に時間をかけないように、さっさと予備のヘッドランプに変えることにした。立ち止まり、ヘッドランプを着け変える。すこしもたついている間に多くのランナーに抜かれた。
レ・コンタミヌのエイド・ステーション。サポートエリアに妻が待っていたので、共用の補給エリアでは何も取らずに妻の方に向かった。
レースでは国内・海外に関わらず、妻がサポートする。結婚しているランナーでも奥さんは一緒ではない場合が多い印象だけど、私達夫婦はどちらも旅行が好き。レースではいつも私がランナー、妻がサポートという役割分担で、その前後に旅行を楽しんでいる。
妻にヘッドランプが不調なことを伝え、別のヘッドランプを準備してもらう。その間に妻が用意していた食べ物・飲み物を補給しようとするが、いつも準備してもらっているコーラが見当たらない。妻はそこにあるはずというので探すが、やはり無い。エンドステーションにいる他のランナーが間違って持っていったようだ。
小さなトラブルが続いて心のなかですこし苛ついたけれど、問題の原因が誰のせいというわけでもなく当たる人もいないので、歩いて共用の補給エリアに戻ってコーラを貰い、ゆっくり飲んだ。
レースは序盤、まだ先は長い。心を落ち着けて次のセクションへと向かった。