今年1月に第一回(AID.1)が開催され、参加者に好評だった.:ULTRA LUNCH:.の二回目(AID.2)、三回目(AID.3)に参加させていただいた。
ぼく(渋井)は所用でAID.1には参加できず、「面白かった」「美味しかった」という参加者の声を聞くたびに悔しく思い、次回こそ参加しようと心に決めていた。AID.1のレポートはDogsorCaravan.comとOnyourmarkに詳しい。
DogsorCaravan.com「ウルトラランニングを極めれば食事のあり方に行き着く」
Onyourmark「身体が本来持つ力強さを引き出す食べものについて考える 」
あらためて.:ULTRA LUNCH:.を紹介すると、トレイルランニングチーム「トレイル鳥羽ちゃん」のリーダーであるドミンゴさんが主催されているイベントで、わかりやすく言えば「食とトレイルランニングについて考える」会である。
トレイルロングレースにも参加するドミンゴさんが、いわゆるジェルといわれる補給食が合わず、トレラン時の補給について自分で調べたり、チーム内で意見交換していくうちに、もっとオープンな場で共有したいという想いのもと誕生した。
約2時間のイベントは毎回テーマの栄養素が決まっていて、AID.2は「脂肪」、AID.3は「たんぱく質」。共にスポーツには欠かせない栄養素であり、イベントスタイルとしては、前半はドミンゴさんによるテーマに関する専門知識を交えた講義、後半は用意していただいた食事をいただきながら、参加者を含めての意見交換となる。会場である世田谷ものづくり学校の一室にはやわらかな陽射しが差し込み、終止なごやかな雰囲気で進行する。
後半、その日のテーマに対してドミンゴさんなりのハック(答)が用意されていて、それは理論と経験に裏付けられた納得出来るものである。講義の内容とハックについては専門的な話になるので、MMAでは触れないでおく。次回開催の際には是非直接聞いてみてください。
すでにDogsorCaravan.com、Onyourmarkでレポートされているので、後からレポートするのはプレッシャーではあるのだが、ここは個人的な意見も交えて書いていきたいと思う。
ぼくがシンパシーを感じたのは、まずドミンゴさんがジェルを受け付けないため、トレランレースにおける食について考えるようになったという経緯だった。実はぼくもジェルが苦手で、ロングレースでは受け付けなくなってしまうことが多く、補給に関しては何か考えないといけないと思っていた。
補給はひとそれぞれ体質の関係もあり「ジェルがよいか悪いか」という話ではなく、もっと可能性を広げて考える自由がそもそも備わっているはず。ドミンゴさんの講義は、同時に問いかけでもある。
トレイルランニング自体はここ数年急成長を見せていて、おそらく競技人口も増えていることだろう。補給に関してはジェルというスタイルが一般的ではあるが、例えば携帯に便利で高カロリーのジェルでも、受け付けなければただの荷物になってしまう。多少かさばろうと好きなものを食べるという考え方も(合理的ではないにしても)ひとつの答として存在するだろう。
また、トップランナーと制限時間ギリギリでゴールするランナーでは行動時間や筋肉への負荷も異なり、もしかしたら必要とする栄養分も変わるかもしれない。ジェルに代表される効率的な発想は競技的な視点といえなくもなく、個人的にはトレイルランニングの喜びは競技的側面だけではないはずであり、現状フォーマット化しているスタイルが正しいとは限らないと思う。
.:ULTRA LUNCH:.の参加者はもともとがトレランと食に関する興味が深い方たちで、イベント後半も活発に意見交換がなされる。主催者はドミンゴさんだが、一方的な講義ではなく、参加者との意見交換により共に学んでいくイベントであり、それは「考える喜び」を生み出すきっかけでもある。
トレイルランニングはまだ若いカテゴリーで、補給に関しては体質やシチュエーションの関係もあり、完全な答は存在しないと言える。逆に言えば、トレイルランナーにはそれぞれ自分の答を見つけるという喜びの可能性が広がっていて、それは補給だけに限らず、ランニングスタイル、ギア、すべてに当てはまる。
ただし、考えるためにはきちんとした知識を必要とする。これも.:ULTRA LUNCH:.が教えてくれる大切なこと。
帰り際、ドミンゴさんにお聞きしたいことがあったので質問してみた。「.:ULTRA LUNCH:.はトレイルランナー向けのイベントなのですか?」
ドミンゴさんは「きっかけはトレイルランニングではあるが、手探りで菜食をしている方など、食自体に興味を持つ方も参加していただくようになっている。トレイルを100k以上走るという特殊な環境から.:ULTRA LUNCH:.の発想が生まれ、それがトレイルランニングに限らず他のスポーツやヴィーガンの方にまで波及していくのはうれしい」とお話してくれた。
1月から3月まで毎月開催された.:ULTRA LUNCH:.。これからはトレランシーズンに入ることもあり、このスタイルは一段落とのこと。しかし次の新しい試みもあるようなので、首を長くしてAID.4を待とうと思う。
(文/渋井 勇一)