TJAR2018、終了しましたね。今年も本当に色々なことがあり、1ファンとして感動しました。
テレビで取り上げられるようになり、昔に比べて大会の趣旨が変わったという人もいますが、
それでも8日かけて日本海から富山湾までつなごうとするレースなんて唯一無二。
やはりこのレースには何からの形で関わり続けたいと思うし、少しでも多くの人にこのレースを通して日本アルプスのすばらしさを知ってもらいたいと、あらためて思いました。
今回、私は南アルプス後半、三伏峠から荒川岳、赤石岳、聖岳をつないで畑薙ダムへと降りる最後の区間のスイーパーを担当しました。
三伏峠の登山口である鳥倉までは車かバスを使うことになりますが、それでは畑薙ダムへ下山後の帰路が大変になるので、
畑薙ダムまで車で行き、畑薙ダム→椹島→赤石岳からはTJARのコースを逆走して三伏峠まで行くことに。
最終的には金曜日の朝のスタートから土曜日夜のスイーパー業務終了まで約42時間行動し続けたことになり、
弱い睡魔がほんの1回、初日の夜間に10分来ただけだったので、結果的にトルデジアンに向けても自分の耐性を確認するいい機会になりました。
金曜日は未明にスタートして椹島までは林道を1時間50分走って赤石岳の登山口に到着。
そこから3時間10分で赤石岳の稜線まで登り、三伏峠まではTJARの選手を応援しながら逆走。
思った以上にみなさん苦しんでいて、カラダのダメージが激しい印象を受けました。
それでも、カメラを向けるとみんな笑顔で応えてくれて、なんだかこちらが元気をいただきました。
この日はようやく天気が晴れ、最後の最後に絶景、選手へのご褒美だったのでしょうか。
三伏峠には10時間ほどで到着し、小屋で選手盛りのカレーをいただきながら小休止。
17時が関門なので、ドリンクを補給したりパッキングしながら選手の到着を待ちます。
実際は三伏峠出発後にすぐビバークする選手もいたため、最後の選手について出発したのは夜の9時半。
それまではシェルターを張って横になっていましたが、最後尾について到着が遅れた南ア前半のスイーパーと話をしたり物を引き継いだりしていたので、
結局一睡もできずにスタート、これもいい経験。
その後の経過は最後尾の選手の報告書にゆだねるとして、今日書いておこうと思ったのは、山行の「快適さ」について。
今回スイーパーについたり、逆走応援をしてあらためて実感したのは、
多くの選手がとにかく睡眠時間を削って/削られてボロボロになりながら進んでいるということでした。これは自分の想像を超えていました。
もちろん、数日にわたるエンデュランスレースではよくあることなのですが、今回思ったのは、「みなさん快適なんだろうか……?」ということ。
金曜日に逆走中にすれ違った何人かの選手から、「前夜は雨でテン場が浸水し装備も濡れ、寒くてほとんど眠れなかった」ということを聞きました。
どうしてもレース本番でウェアやシェルターなどの装備を削っているからだと思うのですが、「危ない」とか「削りすぎ」とかではなく、
どう考えても「快適でない」「不快」なんじゃないか、と思ってしまうのです。
睡眠不足ゆえに、行動スピードが上がらずに関門に負われて睡眠を削ったり、足裏のケアを省いてしまう負のサイクルにはまったり、
睡魔で短時間の休憩と行動を繰り返したりと、決して「気持ちのいい」山行ではないんじゃないかと。
また、荒天時のビバークでも工夫次第では浸水や濡れをある程度防ぐことはできますし、何度か経験をすればコツが分かってくると思います。
私がファストパッキングで常に心がけているというか、自然と求めているのは、「常に快適であること」になっています。
「快適に歩き続けること」「快適に眠ること」、これらを突き詰めていくと、自ずと必要となる装備が決まってきて、
私の場合は睡眠の質を上げるために少し暖かめのシュラフやウェアを選択するようになりました。
暴風雨のテン場でも寒さや濡れを感じずに3時間寝れば、不思議とヒトのカラダは回復するもので、
2014年、2016年大会とも、行動中に睡魔を感じることは全くと言っていいほどありませんでした。
カラダのあちこちは痛くとも、至って快適な山の早歩きファストパッキング。
つまるところ、「快適さの追求」が行動や時間、気持ちの「余裕」を生み、「安全」に直結しているのだと最近では強く思っています。
ただ、「快適さ」と「ラグジュアリー」は別物だとも思います。
もちろんダブルウォールのテントとダウンシュラフで快適に日本アルプスのテン泊を楽しむのは最高なのですが、
その分当然装備は重くなり、滞在時間中は「快適」であるものの、行動時間中は決して「快適」ではないはずです。
「過度な快適」=「ラグジュアリー」は削り、必要最低限の「快適さ」をバランスよく追求していく、
それは装備の足し引きだけでなく、自分の体力レベルを上げることでも調整が可能で、
これこそがまさにファストパッキングの醍醐味なんだと思っています。
6 コメント
今年(20190501)に初めてTJARのDVDを見ました。
まず2016を見て自然と号泣し…
何度も何度も見ました。
僕は、男澤選手と同級生(1973生)ですか…
何度もDVDを見た時に、朽見選手のリタイアの決断シーンが『どんなに悔しかっただろうかと』胸に残っていました。
あえて2018TJARは見ずに、
セリフを覚えるくらい2016TJARをヘビロテで見たあとに…
昨日、2018TJARを見ましたが、朽見さんの名前がHPにもなくて、残念だと思っていましたが…
2回目に見た時に、スタッフとして登場していた朽見さんに気付きました♪
■元気そうな姿でものすごく嬉しかったです♪
そして、このブログにたどり着きました♪
『2016TJAR朽見選手のファンとして、これからもぜひ、様々なアウトドアシーンでお力を発揮してほしいと願います』
『2018TJARスタッフの朽見さんの、選手にリタイアを促すセリフに感動しました。何気ないセリフでも愛情を感じました。これからのますますのご活躍を期待しています♪』
DVDご覧になったんですね、そしてコメントありがとうございます!
2018はああいう状況になってしまいましたが、
2020は参加者全員が無事自分の脚と判断で山を下りてほしいなと願っています。
今年2019は準備の年、またみなさんアルプスに入られると思うので、事故無く素晴らしい山旅を楽しんで欲しいですね。
2022年の、井嶋選手にリタイアを言い渡したスイーパーが、朽見太郎さんでしたね。ちょっとだけ映像化されていて、あ、この方は、2016年、足が故障して、無念のリタイアを決意した選手ではないかなと思いました。ゼッケンを外す、あの映像は私も涙が溢れました。そして2014年はNHKは入らなかったようですが、大変な荒天でリタイアが続出する中、朽見選手はみごと完走されているのですね。それから、雪の南アのソロ登山などなど、美しい写真を拝見しました。そして文章もすごく素敵です。しっかりしたスイーパがいて、さすがTJAR。これからもご活躍を!
コメントくださりどうもありがとうございました。
スイーパーという立場は、本当に重い、と、毎回感じています。
レースである以上、自分も含め限界に挑戦したくなると思うのですが、
常に余裕を持って、安全に下山したいですね。
畑薙から1時間50分って恐ろしい。私は1日がかり(^^;)第一あのような道を今どき歩くものじゃないとか思ってしまい人間業か!?
そのまま胸突き八丁の赤石尾根を3時間10分で登るとは、バカも休み休み言いなちゃい!と思うけど、本当なんですよね(呆)。
自分と比べてもしょうがないんだけど、私めは椹島から赤石小屋までnet5時間でバッタリ。しっかり1日分。ハァハァゼイゼイ…
朽見選手は畑薙からその日のうちに三伏に行ってしまった。驚異。朽見選手は14年も16年も一軍で走った。16年は私も泣いた。
太朗君がスイーパーに登場とはTJAR、豪華なレースだ(惚)♡太朗君は文も明快で写真の腕前がプロ。私の息子の名も太朗。
コメントくださりどうもありがとうございました。
赤石小屋まで5時間! 本当に速いですね。
椹島から赤石への登りはいつもキツいのですが、
あの淡々とした樹林帯の登りもまたいいですよね。
これからも山を楽しんでくださいね。