この記事の翌年の5月に、ルートを外したポイントへ行って再確認しています。ご参考に。(リンク)
まず最初に謝らなくてはならない。正直なところ、この山域にあまり良いイメージを持っていませんでした。結局、ブランド志向というか、人気のある南北アルプスに目を奪われて、この奥秩父の山々に行く機会をつくらなかった。あるいは、2010年夏の笠取山北側にあるブドウ沢での多重遭難事故(沢登での滑落事故と救助ヘリの墜落)の印象が強く残り、怖い山、と自分にブレーキをかけていたこともある。一方、トランスジャパンアルプスレース(TJAR)が憧れの存在として世間に注目される中、同じ主催で行われる分水嶺トレイルの認知度が上がり、チャレンジする方が私の周囲にもちらほらと。縦走競技としての分水嶺トレイルには、同じMMAブロガーから、はしもとみきさん、Run Boys Run Girls の桑原慶さんが参加されており、ブログにも綴っているのでそちらを参考に。もちろんレース形式もよいのですが、ぜひ一度は、夜間走なし、ランナーの走力ならファストパック形式での縦走をお勧めします。このブログには時系列的に印象に残った風景の写真と出来事をつらつらとまとまりなく。長文駄文で失礼します。私の細かいルート設定や時間などは記載しておりません。距離と高低差から、あるいは山地図のCT(コースタイム)からの短縮率で、ご自分のプランを作成することを強くお勧めします。一般登山道として整備が行き届いている区間と、そうでない区間が点在します。ワンアクシデントあっても必ずテン場へ到着できるプランとしてください。もちろんエスケープルートの事前チェックも。そうすれば気持ちにも余裕ができ楽しみも倍増するでしょう。
いきなり最初の雲取山はカット(笑)バスの終点、鴨沢西からロードを西へ少し行くと、丹波天平(でんでいろ)、サオラ(サオウラ)峠へと登る親川という登山口がある。ここはTGG(多摩川源流ぐるり)のスタート?踏み跡の薄さから入山者の少ないことがよくわかる。にも関わらず、人工林の部分はきれいに間伐され、雨にも関わらず光が入る美しいトレイルが続く。下りならば思わず走りたくなる区間だ。
竜の背中のようなゴツゴツとした岩場が最初のピーク、飛龍山(大洞山)の由来らしい。風雨がひどく慎重に歩を進める。初日の幕営地、将監峠につくとテント場は水没状態。迷わず小屋素泊まり泊に変更(笑)30畳はあるかと思われる大部屋に、逆方向から分水嶺トレイルを走ってきたランナーと2人だけという贅沢でした。このランナーの方、自分がコラムを書いている「コース徹底攻略ガイド」を読まれており、ちょっと嬉しいやら恥ずかしいやら。また、この先の笠取山へのルートは尾根道と巻き道の選択があるが、巻き道は今年の大雪でかなり荒れており、さらにここ数日の雨で沢の増水が危険という情報をいただいた。分水嶺を瑞牆(みずがき)から走ってきた走力のあるランナーが山地図のCTより時間を要したという。(今年の分水嶺トレイルでは巻き道の指示)小屋のオヤジさんも「結局、尾根道の方がはえーずら」と言われたので、尾根道を選択することを寝る前に決断、大雨の中、ぐっすりと睡眠。TJARの選手のみなさん、ごめんなさい。このルート判断が正しかったどうかの評価は迷うところ。理由は下記に。
朝一番の美しいトレイル。スーパームーンが近い暦だったからか、早朝でも月が光っていた。上の写真を拡大すると…
時折開ける眺望は印象的。
笠取山へ向かう尾根道を順調に進むと、急にトレースが薮で見えなくなった。背は高くなく、膝下程度なので、薮漕ぎ、というほどではないが、トレースが見えなくなるというもの。不安になりGPSで確認すると、コースから外れて、地図上の一点鎖線、埼玉と山梨の県境に沿って自分が移動している。(下に添付)一旦、GPSがオントラックになるポイントまで戻り、うっすらと踏み跡のある別のトレースを進む。ここで、きちんと紙の地図を取り出し整置して方位を確認することを怠り、さらにスマホ上の地図の地形を読み誤っている。さっと画面を見たところでは、谷のボトムの少し上部、つまり枯れ沢に沿うようなトレイルをイメージしたのだが、後に地図をよくみると、コースの北側にも小さな谷線があり、トレイルは低い尾根地形上を通っている。下のスクリーンショットは谷地形のボトムまで下りた時のGPS画面と、その時の写真。
そのまま下りると、また薮が深くなり、私と同じミスをする人が多いのか、塞ぐ目印が出た。これって、沢に迷い込んで遭難する典型的なパターンですね。低い尾根地形上にでるみるとしっかりとしたトレースがあり、GPSはオントラックを示す。
つまり、最初に不安に感じて確認したGPSの軌跡は誤差かアプリのバグか?よく考えてみると、その確認したポイントの地形は、明らかに黒槐(くろえんじゅ)へのピークへ登る傾斜(県境に沿って)ではなく、 等高線に沿ってピークを巻きながら、ほぼ水平に移動するものだった。つまり地図と合致する。GPSを過信し、地図読みを怠ったことで結構な時間、薮の中の複数のトレースをうろうろしてしまった。GPSはあくまでもに二次的な確認にのみ使うものとし、紙の地図をきちんと整置して読むべしということを身を持って経験したことになる。登山用のGPSならもっと精度は高いのでしょうが、スマホのアプリ程度に命は預けられませんね。バッテリーが切れればそれで終了ですし、もちろんOMMでは使用不可。レベルの低い初歩的なお恥ずかしいミスで、書こうかどうか迷いましたが、悪い見本としてご参考にしていただければと思います。
分水嶺(多摩川、荒川、富士川の3つ)はそれらしき雰囲気のあるところに現れた。よくある突然ではありません。残念ながら上記の藪漕ぎで時間を費やしてしまったので、巻き道沿いにあるの水干(みずひ、多摩川の最初の1滴)のポイントには寄らず。お楽しみは次回に。
時間が止まったような林業者の廃工作機械。戦後の木材需要と歴史の一端を垣間見る。
甲武信ヶ岳(2,380m)に向けて高度を上げると、白浜に岩が並ぶ庭園のような風景、プチ鳳凰三山のような景色の賽ノ河原(さいのがわら)に着く。ガスが覆い、明日の天候が荒れる予感(泣)
甲武信小屋のテン場は北斜面だからだろうか、真夏でも寒かった。ダウンの上下とエスケープビビイをシュラフ代わりにしてちょうどよいぐらい。小屋の横には荒川の水源の碑がある。またぐっすり眠る。
次の日は雨となる。コースから北へ少し寄り道すると千曲川の水源がある。水源マニア(そんな人がいれば)にはたまらないだろう(笑)
甲武信ヶ岳と大弛(おおだるみ)峠の間の原生林が美しかった。広葉樹はダケカンバ、針葉樹はシラビソ(クリスマスツリーの木です)、地面には苔と背の低いシダ類が美しい。さほど大きなアップダウンはなく、思わず走り出す。しばらく心拍を上げていると、ふと苔むす森の美しさに気づいて足を止める。その繰り返し。
写真の木はお札が置いてあるので、ご神木だろう。撮らせていただきますと手を合わせて写した1枚。後ろに苔むす倒木がたくさん見えるが、大弛小屋のオヤジさんの話だと、50年ぐらい前に倒れた倒木がもうそろそろ土に帰ろうとしている頃だと。登山道整備の時も、美しい倒木は切らないそうだ。
金峰山(2,595m)に向けて高度を上げると、森林限界を超えてハイマツ帯となる。雨の森は美しいが、雨の岩場はご容赦願いたいところ。写真は金峰山の西にある五丈石。しばらく岩稜区間が続き、プチ北アルプスを呈す。マーキングがあまりなく、冷静にルートを判断して進む必要あり。
たどり着いた富士見平小屋は暖かかった。思わず小屋泊の誘惑にかられたが、テン泊を選択。そのかわり、お手製のスコーンと暖かい紅茶をいただいた。
ここ瑞牆山のエリアはクライミングのスポットあるが、前晩からの雨と、この日の天気予報からクライマーはゼロ。今度はぜひボルタリングで訪れたい。
レースとしての分水嶺トレイルはさらに西へ向かい、横尾山、飯盛山、を経て、獅子岩(清里)へ至る。自分のプランはもう1つのクライミングのスポット、小川山を経由して廻り目平へ下りる予定でしたが、その破線ルートが相当荒れていることと、横切る沢の増水がリスクという判断で撤退。というか、韮崎側へ下りる途中にある増富ラジウム鉱泉の誘惑に負けたというのが本当のところ(笑)富士見平小屋に戻って、地ビールで一息。「ここら辺の岩の初登はだいたい俺だよ」という小屋のオヤジさんと談笑、来年はオリジナルラベルの地ビールを出すそうです。
静かな山々と同化したようなファストパック縦走、レースとは別な山の楽しみ方としてお勧めです。自分もまだ勉強中ですがフィールドを広げて行きたいと思います。