渋井さんがトレイルランニングの楽しみ方(リンク)という記事を書かれたので、そのアンサーブログになるのかもしれない。
ここ半年ほど、トレイルランニングを一生涯長く自然に楽しみたいと思う自分の気持ちと、Intermational Trail Running Association ( 以下ITRA) のポイント制に始まったトレイルランニングレースを取り巻く環境がしっくりと噛み合わない。自分の考えは少し変わっているのだろうか?と思うぐらい居心地の悪さを感じることさえある。特に先月あたりから、2016年のエントリーが本格化し、ITRAのポイント制が本来の目的とは乖離した形で、特定のレースを目指すことに偏重してしまう日本のトレイルランニングの現状を浮き彫りにしてしまった。自分自身もそうであったように、特定のレースを目標にすることは決して悪いことではないのですが、レースに対してポイント制という囲い込む枠ができたことで、特定のレースに、我も我もとラッシュしていく(させられてしまう)ことに何か良い解決方法はないものかと考えてしまうのです。結局、何も思い浮かばないのだけれども。
困ったときの犬猫通信。ITRAの理念やポイント制の意義などをわかりやすく解説しているので、こちらを参照(リンク)されたし。
競技としての難易度を査定した上で、競技者の成績を公正に評価する。主催者としての安全ガイドラインを整備する。これは競技として発展していくのに必要な要素です。それによって、プロ選手や指導者の地位も確立されていく。あれ?でも俺はランキングを上げるためにレースを走るのだろうか?
多くの人はこの景色の中を走りたくて、自然と一体となりたくてUTMBに憧れるのではないでしょうか?UTMFでは竜ヶ岳から顔を出したでっかい満月や、朝陽を迎える樹海の中も神秘的で美しかった。でもね、これらはレースでなくても経験することは可能なのです。もちろん、エイドサポートやマーキングがないが故に、様々な山岳経験を積むことが必要ですが、レースである必要はないわけです。
本来、トレイルランニングとはA地点からB地点へ移動するのに、ルートを考え、プランし、装備する。そこには自分の思い描くルートという自由がある。五日市中学校を起点に24時間で戻って来いと言われたら、自由なスタート・ゴール時間の選択があり、ハセツネコースよりも美しいマイナールートが奥多摩には沢山あるのです。そしてその自由度の幅は、山岳経験と走力によって決まります。だから特定のレースを目指さなくとも、日々のトレーニングは不可欠であり、ナビゲーション力はレース以上のもが必要となるわけです。一方、レースには自由がないのかと言えば、そうではなく、エイドやマーキングがあるが故に、心地よく心拍を上げたスピートで走ることができる。一般の人では考えられない距離と時間を走り続けることもできる。そして制限時間や競争によってこそ味わうことのできる非日常的な厳しさ、これもまた自由の1つだと思うのです。どんな自由を求めるか、それは各個人に委ねられているわけです。
他のスポーツの例ですが、スポーツクライミングは、登山の一形態であるアルパインクライミングから派生し、人工壁を使った競技となり、IFCS(国際スポーツクライミング連盟)がルールを整え、ワールドカップは世界各地で転戦され、2020年には東京オリンピック追加種目にさえなっています。それでも、不思議なことに、どんな選手でも皆、自然の外岩を登り、クライミングの原点のようなものを求め続けています。競技者としてではなく、クライマーの本能みたいなものがそうさせるのだと思います。
ITRAの定義にあてはまらない、バーチカルレースやナビゲーション競技、あるいは評価減点となる周回レースやセルフサポートレースにも楽しめる自由があり、レースではないトレイルランニング、スカイランニングのアクティビティーに、ランナー、あるいはアルピニストとしての本能を求めていく、そんな多様性のあるランニングコミュニティーが日本で形成されて欲しいと思うのです。ITRAのポイントに振り回されてしまうことは、現在のレース数が少ない状況では致し方ないことですが、将来のあるべき姿は、結局のところ、私たちランナー次第というのが、今のところの私の結論です。どうか皆さんも、あのトレイルに初めて足を踏み入れた時の胸の高鳴りを忘れないで欲しいと思います。自戒を込めて。
キリアン=ジョルネのDVD、A FINE LINEの中で、有名な山岳スキーヤー、故)ステファン=ブラッセが、山での「自由」について語っています。それは人生の自由に例えられ、哲学者のようです。キリアンとの行動中に山岳事故に会い、帰らぬ人となってしまいましたが、美しい映像と共に語る様子は、少し寂しくもありますが、とても印象的です。英語の字幕を追ってもらえれば、なんとなく意味はわかるでしょう。ただ、山からあの世へ向かうのは自由ではありませんよ。絶対に。それだけはお忘れなく。今週末、雪山へ向かう方、お気をつけ下さい。
2 コメント
釘さんの言うことは凄いわかるんですが,自分の場合で言うと,
1) もともとロードランはちょっとやってたけど山の中を走るトレランの存在を知ってちょっと興味持ったけど装備とかどうすればいいかわからず憧れてただけ
2) はじめてのトレランが鏑セミで,セミナーのために装備用意してトレイルデビュー
3) チョー楽しい
4) 装備はなんとなくわかった,じゃあトレイル行きたいけど一人だから不安でレース.レースだとエイドあるし安全ある程度確保されてる
5) はじめて3年くらいレース出まくり.楽しかった.
6) トレランブーム始まりクリック合戦大変.いろいろレースで足しもう自分で山行ったほうた楽しい.なう.
ってなって,はじめて釘さんのいうこの楽しさが
「トレイルランニングとはA地点からB地点へ移動するのに、ルートを考え、プランし、装備する。そこには自分の思い描くルートという自由がある。」
わかりつつあるんで,いきなり自由って難しいんですよねー.
国内にもレース沢山あるし距離関係なくこの山域楽しいッてレースがたくさん出てきて小規模でも人を集められるレースが出てくることを願います.
他のレースが日程かぶるかとか主催者が気を使わない世界が早くこないかな.
p.s. 釘さんが選んだUTMBの動画は自分が観たTNFのトレイルレースの動画の中で一番好き.
しーにゃんコメントサンキュー!しーにゃんぐらい影響力のあるランナーが体験をオープンにしてくれるのはすごく意味のあることだと思う。そうだね、いきなりってのは難しいかもしれない。そういう意味ではレースは教材であり、感動を増幅させてくれる舞台装置でもあるかな。自分の場合はハセツネでいろいろ学んだしね。だからこそITRA pointにこだわらず分散されてほしいと思うんだよね。KOUMIみたいに小規模から始まって、じわじわ評価されていくようなものでもいいと思うし。あと、しーにゃんには、あまりみんなが行かないような海外レースにこれからも出て欲しいと思う。国内はプライベートイベントや小さいレースを山域とともに楽しむのがいいとは思うんだけど、しーにゃんの語学力も含めて行動力はやはり他の人にはなかなか真似できるものではないから。