1年半前を振り返って
当時、自分はこういうポストをしていました。http://mountainma.com/kugishima/2016/02/10/free/
だらだらと長い文章で読みにくのですが、ポイント制という枠組みに対する違和感と、レースをこえた本来あるべきトレイルランニグの「自由」という点を言いたかったと記憶しています。私が今、当時の視点に付け加えるものがあるとすれば、レースというのは、その枠があるからこそ、多くの仲間と共有する楽しみがあるということ。素晴らしかった景色、辛かった登り、そういったことを共有できる仲間ができて、それが一生続く友人になれば、それはとても素晴らしいことだと思うのです。
最近の話題について、わからない方はじろーさんのブログで(リンク)
さてさて、ここ数週間で話題になっている(日本ではあまりなっていない??)International Trailrunning Association(以下ITRAとHardrock 100他のアメリカトレイルレースオーガナイザーとのやりとりを見て、やはりねー、そうなるよ、というのが率直な感想です。前記のブログポストで紹介したITRAの活動目的は、大きな理念(競技の発展、医療、安全)では、もっともであるのですが、具体的な成果物となると釈然としなくなる。総会で医療、安全に関するガイドライン(リンク)が発表されているが、ITRAのポイントに反映されるわけでもなく、内容もごく一般的なものという印象です。
急増するアジア圏でのトレイルランニングイベントでこういった医療、安全面で対応できていないイベントがあるのであれば、それはそれで一定の意義はあるのかもしれませんが、日本のレース主催者がこれを熟読しているとも思えません。(何故か中国語、韓国語まで翻訳されているのに日本語がありません)
We need to quickly develop our ability to make sure that the guidelines are effectively respected by all race organizers. とあり、ITRA自身も改善が必要と考えているようです。
ワールドチャンピオンシップの開催はアメリカの伝統的なレースからすれば全く興味のないこと(野球で言えばWBCみたいなものかな)、世界ランキングの整備はプロランナーの評価とそれをスポンサードするメーカーにとっては意味のあることになるが、それこそが、Monetize (金銭化)であり、皮肉いっぱいのIronmanization という表現に込められた根本的な開催理念の違いでもあります。ここはどうしても埋まらない溝だと思うのです。Hardrock側が書いているように、アメリカでは国立公園内の自然保護の観点から参加人数の規模が大きく違うので、そこから生まれ出て来る理念やモチベーションは違って当然だと思うのです。そこをあえて埋める必要があるのでしょうか?
2017の仮予算では、レースの査定料は23,821ユーロ、レースオーガナイザーからの会費(実質査定される上で会員になった方が良いだろうというのが常識的な考えではないだろうか)が85,433ユーロ、両方合わせても110,000ユーロほどです。国際的な競技組織としては小規模であり、支出を見ても4人の専任従業員の給料を払ったら、あとはキツキツ、以上終了、というレベルだと思います。ましてや誰かが私腹を肥やせるような金額の大きさではありませんね。
ただ、パワーポイントに2016で2,200以上のレースの査定実績とありますが、計算が合いません。何かディスカウントシステムが効いているのでしょう。そしてこの数字が正しいならば、これでは大きなことはできないだろうなというのが読み取れます。
他のメジャースポーツでは各国の組織にスポンサー収入や個人会員の集金システムがあり、それが収入源となるわけです。少し飛躍した例えかもしれませんが、陸上だって公認記録をもらうには、団体、又は個人として日本陸連の会員になり年会費を払う必要がありますよね。私たちはそういった組織化、競技化をトレイルランニングレースの将来像として描くのでしょうか?この点においてはスカイランニングの国際組織の方が自然な流れの中で明確にしているように思えます。(賛同する、しないは別の問題としても)
様々な意見が見受けられる中、あるアメリカ人ランナーのコメントが頭を離れません。
「地球のもう片方に素晴らしいレースがあるのに、それに参加する人と、しない人でランナーが二分されてしまうのは悲しい」
もちろん、同じ走力があっての前提です。この意見はITRAに今起こっている事実として認識してほしいと思うのです。ITRAはUTMB と関係性はないと主張したところで、結果としてポイント制度がもたらしている現実だと思うのです。冒頭に書いたように、あの年あのレースのあの景色、すごかったよな、と酒が飲めないのは、ノスタルジーに浸る壮年ランナーのたわごとということでしょうか。残念ながら、私自身に結論や妙案はありません。ただ、このブログを読んでいただいているランナー、特にUTMB®︎、UTMFを目指すランナーのみなさんには、ご本人が意図する、しないに関わらず、このITRAの目指す方向性に沿ってレースを走っているということを理解してほしいと思うのです。