毎年、年の瀬に1年を振り返るようなブログを書いている。i-phoneの写真をブラウジングしていると、ふと気づくことがあった。トレイルランナーに限らず、山好きな方は、富士山を背景に写真を撮ることがとても多いということ。(西日本の皆さま、ごめんなさい)初めての山域を縦走するとき、なぜか富士山を探してしまう。新幹線に乗って西へ向かうと富士山を見てから惰眠に入る。そういう人も多いはず。左右対象(ほぼ)の円錐形の独立峰は、日本人の心に安堵感を与えるのだろう。今年印象に残った富士山に関わる写真をいくつかご紹介します。(ブログ未公開)
1つは本物の富士山ではない。アメリカ合衆国ワシントン州にあるレーニア山(4,392m)だ。シアトルへと移住した日系移民が、その昔、シアトルの港からもその裾野まで広がる雄大な姿に富士山を想い重ねたのだろう。当時の移民の方から「タコマフジ」と呼ばれていたそうだ。ネイティブアメリカンからはティー・スワークと呼ばれており、レーニア山からの改名運動もある。 下の写真はワシントン州の200マイルレース、Bigfoot200の後半、レーニア山が見えるトレイルからの風景だ。私自身はこのポイントを夜間に通過しており、自分のサポートクルーが撮影した1枚、夏の花々と万年雪をいただくレーニア山の対比が美しい。近くで見ると、富士山よりもぽっちゃり体型だ。私自身は夜明けとともに、180マイル地点から、もう少し遠目の美しいレーニアを見ることができた。(過去のブログへのリンク)
サポートクルーも200マイルとなると耐久戦になる。最後の夜を車中で迎えるとき、寝酒にクラフトビールが必要となったようです。(ドライバーを除く)カスケード山脈のレーニア山をバックにシェアラネバタ山脈のビールではあるが、PCTトレイルでつながっているのです。ピンボケですが臨場感がある大好きな1枚。
もう1つは本物の富士山、11月の中旬に開催された甲州アルプスオートチャレンジ(リンク)での1枚。ボランティアでハイカーが多いと予測される稜線を巡回することに。麓の宿から、早朝にヘッドライトで一人登り始める。天気予報はは今年初めての大型の寒気が入ると言っていた。寒い。半端なく寒い。雪山の経験もあるが、雪がある方が暖かく感じることもある。標高がさほど高くない地点から、森林限界を超えて笹原なのは風が強いためだ。気温は氷点下10度前後で、さらに強い風が体温を奪う。動いていないとどうにかなりそうだ。それでもこの富士山を見た時には思わず立ち止まってシャッターを切った。
夜明け前、空が紫色になる時間帯がある。ドーンパープル、胎児が産道を通る時に初めて見る色とも言われる。(誰か覚えていたのかい?)オーバーナイトのレースや縦走の経験がある方ならその美しさはご理解いただけるだろう。i-phoneのカメラではこれが限界、夏山ならば鳥がさえずり始める時間でもあるが、この時は、鳥はおろか、生物の気配はゼロ。オホーツク海からやってきた寒気団とかいう集団に、自分一人で対峙している感覚に陥った。それでも美しかった。
来年度は、富士山の麓で行われる100マイルレースが再スタートを切る。個人的には規模を追わず、環境に優しい運営で、継続することを主眼とした再スタートであって欲しいと願う。 そしてそれを走る(あるいは将来、走ろうとしている)貴方にとって美しい富士山であることを願ってやみません。
良いお年をお迎えください。
2017年年末