「それでも君とクラリスで走りたいのです。」
<チクマサイクルクエスト>
奥多摩では秋の大運動会(アレね)が行われた週に、長野県千曲市という自然と温泉に恵まれた場所で、サイクルロゲイニングという競技に出場してみました。
*当日はミス多発、プラン修正で余裕なく、文中の写真は当日のものではありません。相方の実家からトレイルランニングや、バイクのヒルクライムでこのエリアを周った時のものが中心となります。
概要
「サイクルロゲイニング?」なかなか情報を聞く機会がないですよね。簡単に言えばランニングで行うロゲイニングを自転車に乗って行う競技です。地形図読みを主体とするオリエンテーリングや山岳ロゲイニングといった競技性の強いものというよりは、市街地では道路交通法とマナーいう社会性をより確実に担保した上で成り立つ、比較的穏やかな競技形態だと思います。競技順位に主眼を置かない参加者ならば、極上のサイクリング、ポタリングイベントとしてとらえることも可能です。一方で、例えばOMM BIKE(リンク)のようにテレインを山岳エリアや交通量の少ないエリアに限定しすれば、競技性を志向する楽しみ方も可能です。スポーツマーケットとしても幅の広さがあると考えられます。
初チャレンジ
さて今回は、ロゲイニングとしては2017年の信州上田ロゲイニン(リンク)以来であり、競技自体が久しぶりの自分たちが、このサイクルロゲという形式に初チャレンジした感想と結果です。
①観光ロゲ、家族イベントとしての敷居の低さを併せ持ち、幅広い年齢層と色々な楽しみ方を受け入れていくことが、自転車の文化、スポーツカルチャーを育てていく上で、とても大切なことだと感じました。
今回、印象的だったのは、家族カテゴリーのお子様たちが前半は雨天にも関わらず、元気に走っていた光景です。この後記述するNaviTabi(ナビたび https://navitabi.co.jp/)アプリを使用すれば、コントロール対象物に近づくと、アプリの「チャリーン」という効果音が鳴り、ゲーム感覚で楽しめます。ゴール後に遅刻減点になってしまった男の子にも「偉いね~時間いっぱいいっぱいまで走ったんだね、凄いね!」とスタッフがほめている声が聞こえました。実際に子供の体力で5時間自転車を漕ぎ続けるのは凄いこと。子供はほめて伸ばす。この子達の中から未来のUCI(リンク)選手が誕生してくれたら素晴らしいことだと思います。またE-Bike部門なら、体力差のある家族、カップルでも並走が可能です。このことはE-Bikeの良いイメージと、使い方の多様性を促進することにつながると感じました。最近、都内では、縦横無尽に歩道を爆走する電動アシスト自転車や、ファットタイヤを履いた電動モペット、正確にはペダリングしなくても走るのでE-bikeではありませんが、ノーヘルメットで信号無視をして走り去る姿をよく見ます。私自身はよい印象を持っていません。一方、今回のような使い方で、交通ルールという社会性が伴って普及していくのであれば、おおきな可能性をもっていると思います。スポーツ系E-Bikeとして、ロードバイクと共に、車や社会から嫌われる存在ではなくなることを願っています。
次に競技的な点からいくつか。
②当たり前なのですが、「サムリーディング」ができないという点でラニングのロゲイニングと大きく異なります。
頭では理解していましたが、これで根底から私の地図読みの概念が覆りました。ランニングのナビゲーション競技では親指で自分の現在地を押さえ、私なら数十秒毎に地図をチラ見しながら、地図から目に入ってくる情報と周辺に見える情報を、すり合わせながら走っていくわけですが、サイクルロゲイニングには競技要項に相当する安全ガイドがあり、「地図を見る場合は安全な場所に停止して」と明記されています。MTB-O(マウンテンバイクによるオリエンテーリング)用のマップホルダーの利用は許可されていました。ただしこれも「地図を読むときは停止して」と安全手引きに一文あるのであれば、走行中に地図を見ることはNGとなります。自分はヘアゴム2つで、地図を丸めてでハンドルに括りつけて固定する方法をとりました。比較的すぐに取り出せましたが、後に書くように、「整置」(リンク)が雑になりがちです。そして何か目標物を決めて、そこまで走行、停止して地図を見て次を確認、という一連の動作が基本になりますので、中間目標物を決めるために地図記号を復習して出場すると良いでしょう。小中学生なら社会科地理の実践学習ですね。地図確認のために停止することが多いので、通常のシューズにフラットペダルの人がほとんどのように見受けられました。私はSPD(リンク)のクリーツで走りましたが苦にはなりませんでした。SPD-SLでも慣れている人なら苦にならないのかもしれませんが…自分なら解放値を普段より弱く設定すると思います。
巡行スピードが速いので、意識の速度も速くなり、停止した際に「整置」が雑になりがちです。理由は動作の手順が多いから。千曲市は東西を山に囲まれ、その間を千曲川(新潟に入ると信濃川と名前を変える)が流れていますので、方角を見失うことはまずありません。ただ、遠くの景色を見渡せない分岐では、感覚で決定するとやはりミスをします。停止して、きちんと整置する必要があるでしょう。今後は自分もマップホルダーの購入を考えています。コンパスに関してですが、首に巻くタイプのコンパスは、お子様の場合、巻き込みの可能性もあるので、サムコンパス(指にはめるタイプ)がよいかとは思います。本格的な競技でなければ100均のものでも十分です。
③自転車が行動できる範囲は広く、必然的に地図の縮尺は大きくなります。ということは…
私たちがランニングのロゲで混合カテゴリーに出場した場合、標準的なプラニングで5時間制限では走行距離は30kmほどになります。それで入賞をかすめるぐらいの「惜しかったね」という思い出話が多いチームです。今回は大小3つほどナビミスをして余分に走っていますが、走行距離は57kmほどになりました。主催側は、かなり広範囲の地図作成が必要となり、調査に日数がかかります。対象物の写真も、数か月かけて作成した場合、多少見え方が異なる事を想像することが必要です。現状優先の原則はランニングでのロゲイニングでも同じことなのですが、その傾向がより強くなると思います。又、広範囲であるということは当然地図の縮尺が大きくなります。今回は1/40000ですので地図記号も小さくなり、ローガンズ(笑)にはいつものアレ(下の写真)が必要です。例えば高等学校と警察署、神社と橋の記号判別に、サムコンパス(リンク)についているルーペが必用でした。
④Navi Tabiの使用について
おそらく今後のナビゲーション競技は、一部の伝統的なエリート競技を除き、こういった電子ツールが使用されるのが普通のことになると思います。集計の簡素化だけでなく、GPSトラッキングで主催者側からの安全管理に大きく貢献できると思います。
自分は扱い方のミスを複数回しました。1つは反応したのに、音がせず、反応していないものと勘違いし、それに加え前記のコントロール説明写真と現物の微妙な違いに惑わされ、大きくタイムロス。もう1つは反応したと勘違いしてそのまま通過、バックアップ写真を撮っていなかったので、完全なパンチミスとなり得点となりませんでした。又、3時間ほどで、バッテリー残量が少なくなり、(ここで低電力モードになり、自動的に音量が最小になったのかもしれません)モバイルバッテリーを接続しました。スタートからザックの前ポケットに収納し、コントロールに反応した際の電子音だけを確認のために使用していましたが、バッテリー接続の際に、スクリーン上に簡易地図と現在地が表記されることを知りました。これは主催者が補助ツールとしてGPS使用可とルール上の設定を行えば、現在地ロストといった最悪の事態は一旦回避されますので、冒頭に書いた、家族イベントとして参加できる敷居の低さにつながり、とても良いことだと思います。ただ、これも前記の「地図を見る際には停止して」がガイダンスにある以上、画面を見ながらの走行はルール上不可ですし、サイクルコンピューターをチラ見するのとは異なり、市街地でスマホ画面を見ながらの走行はお勧めできません。
下にいくつかのヒルクライムポイントがStravaのセグメント設定となっているので、参考までに記載しておきました。
結果
久しぶりのナビゲーションでミスを多発しながらも、修正しながらなんとかまとめた感じです。上位の二人は「とりけもロゲ」を主宰するご夫婦、今年のOMM-Lite では上位に入られているお二人がそれぞれソロで走られていたので、私たちが敵うわけありません(笑)主催ホームページの写真からは、レンタルバイクとE-Bike中心の緩い観光ロゲだけだと思いきや、コントロール設定の範囲、数、強度、難易度も低いものから高いものまで、前記のいろいろな志向を受け入れる懐の深さがあり、家族での参加から、ヒルクライムおじさんまでもが満足できたかと思います。私たちは混合ペアでありながらも順位カテゴリーは彼らと同じですので、よく頑張ったかと思います。来年もぜひ開催を望みます。これほど整備されたサイクリングロードと、ヒルクライムポイントがありますし、温泉の湯質も源泉によって複数楽しめるこの戸倉上山田温泉地区が一層盛り上がればと期待しています。
<追記>
あ、そういえば上山田はシクロクロス(リンク)というオフロード競技も行われていますね。こちらはUCIルールのガチレースですので私たちには無理です(笑)でもマップケースは買います。そうするとグラベルロードを買って、OMM-BIKEに出たくなるかも..(あー沼)。