「まあ、誰も興味ないでしょう、ほっとくかな。」
と、ずっとそのまま放置しておりました。実際に環境アクティビスト、あるいはお仕事上、EU規制に関わる方でない限り、興味はなしというのが実情かと思います。2018年の1月、つまり6年前に、こんなブログを書いています。ウエアにおけるフッ素(PFC)フリーについて、当時、日本において、メーカーの人間は誰も触れたがらない、やっかいな話を易しく書いたつもりなのですが、今となっては環境問題の1つとして、ネット上に分かりやすい記事がいくつか散在しています。
「静かな改革」
https://mountain-ma.com/kugishima/2018/01/30/quiet-revolution_teflon_pfc/(リンク)
その最後の結びとして、
「2020年〜2023年にPFC フリーが当たり前になった時代にこのブログをもう一度読み、なにを感じるか、ちょっとした楽しみなのです。」
と書きました。ですので、簡単に今の状況を簡単に書いてみたいと思います。
<代表的な素材メーカーGORE-TEX 社の状況>
DWR(耐久撥水加工)からのPFC完全除去を2023末としていたが、2025年度末に延期。
進歩がないわけではなく、エクストリームなアクティビティー向け製品での撥水、撥油、特にこの撥油性を達成するのが難しいらしい。「俺、オートバイ乗るわけじゃないので、油なんか使わない」と思うかもしれませんが、人間の皮脂、汗からの汚れや油、女性なら化粧品の油性成分が撥水性を損なわせます。現在、Gore-Tex商品をお使いの方はこまめに洗濯しましょう。
素材内側の被膜であるメンブレンに関しては、有害と認められるPFCを除去した製品が開発されています。前回のブログを書いた6年前にもGore社は、「有害な物質のもとになるPFCと、そうでないPFCは別ものだ!」と主張しており、その主張は一貫しています。
又、Gore-Texのメンブレンの優れた耐久性を強調しています。他社のメンブレンはフッ素(PFC)系ではなく、ウレタン(PU)系になります。つまり保管環境によっては加水分解をするということ。Gore-Texには比類ない耐久性があることこそが、環境に与えるインパクトを軽減することだと主張しています。実際に、私が主有しているGore-Tex製品はもうすぐ購入して10年にもなろうとしている製品もありますが、とても元気です。但し、メンブレンは加水分解しませんが、シームシールド(縫い目の止水テープ)や、ファスナーの引手部分は経年劣化をしますので、やはり保管場所の注意と、洗濯、お手入れはお忘れなく。
トレイルランナーが大好きなShake Dry®が廃盤になるとのネット記事がありますが、私の調べた限りでは、公式サイトには出ていません。現在の私は素材関連の仕事をしていませんので、本当に存じ上げません。現行商品をお持ちの方はお手入れをして長く使いましょう。それこそがGore社が主張する環境インパクト低減への答えでもあるのですから。
代表的なメーカー、Patagonia社の状況
下記リンクのブログにこれまでの失敗と今後の目標を分かりやすく書いている。もう俺のブログはいらんな(笑)
「永遠の化学物質」に別れを告げる(出典:パタゴニア社オフィシャルサイト)
https://www.patagonia.jp/stories/say-goodbye-to-forever-chemicals/story-133800.html(リンク)
他の素材メーカーの状況
PERTEX® https://pertex.com/(リンク)
PU系のメンブレンとして早い時期から存在し、撥水加工のDWRさえPFCフリーとなれば、製品としてのPFCフリーが達成できる有利な立場にいたPERTEX®です。Goldwin社がPERTEX® SHIELDAIRを推しています。
https://www.goldwin.co.jp/goldwin/feature/pertex-shield-air-2021fw/(リンク)
Goldwin社の資本構成を見ると、採用も当然かと思いますが、Gore-Texを積極的に使用するThe North Face®と自社名ブランドの差別化も考えてのことでしょう。
レインウエア以外では、PERTEXの中でもEQUILIBRIUM という撥水素材を使ったウインドシェルが目立ちます。Burton AK®のスノーウエアや、そしてなんと、MMAのウインドシェルにも使用されています。正直なところ、MMAの数量規模でこういった環境機能素材のミニマムロットを達成できるとは考えていませんでした。それぐらい流通し、扱いやすくなったということの証です。特徴としてPUラミネートのしなやかさ(音がしない)で、カーブも(比較的)縫いやすく、多孔構造のラミネートは透湿性が高く、肌触りもべとつきません。
山と街を行き来するMMAの渋井さんがチョイスしたのも納得がいくところです。
https://b.houyhnhnm.jp/shibui_yuichi/2021/12/11/56970/(リンク)
TJAR選手でもギアの評価に定評がある朽見選手のブログも参考になりますので、ご覧いただくとより信頼性が高まると思います。
https://mountain-ma.com/kuchimi/2022/02/20/20220220/(リンク)
他にもandWonderなど、デザインや街での汎用性も重視するアウトドアブランドのチョイスが目立ちます。これらの市場規模の方が、アウトドアのエクストリームマーケットよりはるかに大きく、ここがPFCフリーになることのほうが、より大きく環境問題改善に貢献できるはずです。
我が家の新しいフライパン
我が家が購入した新しいフッ素フリー(PFCフリー)のセラミック製フライパン。奥さんは特に環境問題を意識したわけではなく、デザイン、形状、使いやすさを考えて手に取りました。それが偶然にPFCフリーだったわけですが、購入してとてもよかったと思っています。
6年前のブログの結び、「なにを感じるか、ちょっと楽しみ」の答えですが、「まあ、いい方向に向かっている。作る側は必死に頑張っていただき、EU規制もクリアし、我々消費者の選ぶ側は、我が家のフライパンのように、意識せずとも気軽にPFCフリーになっている、もうすぐそこまで来ている」といったところですね。
「え?新たな火種?」
私の身近なもので、新たな火種がありました。スキーやスノーボードのワックス。日本ではフッ素含有ワックスがまだ残っているようです。競技ルールとして禁止されているというのに、検出方法が不確定で実質黙認?なにそれ?確かに競技においてワックスは最重要要素です。選手の1年間の努力もワックスの選択ミスで簡単に吹き飛びます。競技の公平性が担保できない?確かにそうですね。メーカーが一斉に生産をストップ、小売店も一斉に販売禁止、そうすれば直近シーズンは無理でも数年後には公平性は担保されると考えるのは頭がお花畑的な素人考えですかね。昔のスピード水着問題と似ている?いや、目視できないからドーピング問題と似ているということでしょうか。ウエアはPFCフリーなのに、スキーやスノボの滑走面にフッ素を塗りまくっているのも気持ちが悪い。競技ではスッキリしない状態が続いても、一般スキーヤーやスノーボーダーは使わないほうがよいと思いますが、ウエアやフライパンのように、知らず知らずのうちに、PFCフリーとなるには、つまり業界のモラルが一定レベルになるのには、もう少し時間がかかりそうです。以下参考文献やWebサイトです。
https://js3.jp/?page_id=1897(出典:日本スキー学会)
2023/12/4 追記) スキー専門店のYou tube解説は削除されたので、ここからのリンクも削除いたしました。わかりやすいくてよかったのにな。皆さんまだ触れられたくないんですよ、きっと。
この話題を書くのはここまでとして、将来書く必要さえないぐらいに、普通のことになっていることを願っています。