「世界で最もハード」と言われるレースはいくつかありますが、アメリカやヨーロッパのトレイルランナーに聞いたら、その多くがアメリカ・テネシー州で行われる「バークレイ・マラソンズ/The Barkley Marathons」を挙げるのではないでしょうか。
このバークレイ・マラソンンズのドキュメンタリー・フィルムが、トレイル・ランニング・フィルム・フェスティバルで上映されるということで、観てきました。アメリカ西海岸では初上映だそうです。
でもって、このレース・・・ホントにヤバい。
1986年に初開催されてから延べ約1000人が参加していますが、これまでの完走者はたったの14人(うち2人が2度完走)。つまり完走率は1%台。年に一人完走者が出ればいい方という凄まじいレースです。
エントリー方法からして特徴的で、「なぜ私をバークレーマラソンズにエントリーさせなければならないか」について書いた作文によって選考され、数百人のエントリー申し込みの中から40人程が出場権を獲得します。
出場権を得た人はレース受付時に出身地の車のナンバープレートなどを持参し、これらと引き換えにゼッケンを受け取ります。ナンバープレートはスタート地点にずらりとぶら下げられます。
そして肝心のレース概要はというと…
- コースは(一応)20マイルのコースを5周、全長100マイル。ただし毎年微妙にコースは変わっていて、かつ実際の距離は謎、というか実際はもっと長いらしい。
- 制限時間は60時間。
- 累積標高は16500メートル(=エベレストふたつ分)。
- 5周のうち最初の2周は時計回り、次の2周は反時計回り、最後の1周は、1位の人は自分の好きな方向に、2位以降の人は前の人とは逆周りに走る。ちなみに、3周(60マイル)まわることを「ファン・ラン」と呼ぶ。
- エイドステーションはなし。ウォーターステーションが二箇所のみ。
- コースマーキングもなし。スタート前にコースが記された地図を確認し、そこに書かれた内容をもとに自分の地図に情報を書き込む。この地図とコンパスを頼りに進む。
- コース上には約10冊の本が置かれており、各ランナーは正しいルートを走った証拠として、それぞれの本のゼッケンと同じページを破って持って帰ってくる必要がある。
- いつ吹かれるかわからないレースディレクターの法螺貝の音がレーススタート一時間前の合図。夜かもしれないし、朝かもしれない。
- レースディレクターがタバコに火をつけるのがスタートの合図。
- リタイアすると、戦死者を弔うのに倣ってトランペットが吹かれる。
予告編を見ただけでもこのレースがいかにきついかがわかる映像ばかり。傷だらけの脚や、疲労や睡眠不足で朦朧とした表情、斜面を登りそこねて滑り落ちる人、転んで頭から血を流す人、コースを見失い命からがらやっとのことでスタート地点へと戻ってくる人、疲れ果て、精根尽き果てて戻ってくる人などなど。参加者が次々とレースから脱落していく様は壮絶です。
そしてレース模様の合間合間に挿入される、レースの創設者かつレース・ディレクターのガリー・キャントレル/Gary Cantrellのユーモアに溢れつつも不敵に語る表情は、山の主にも悪魔にも見えてきます。
こんなレース、私は絶対に出る気になれません。だって、はなから絶対辛いにきまってますから。
ちなみに、丁度この週末、本家バークレイ・マラソンズの簡易版「バークレー・フォール・クラシック」が開催されます。こちらは本家と違ってちゃんとコースマーキングしてあるし、エイドステーションもある50キロのレース。コースも被っているとのことで、本家の雰囲気が味わえます。棘だらけの藪も走るので脚は傷だらけになるようですよ。簡易版の方なら、怖いもの見たさで私も出てみてもいいかなぁ。そして、この簡易版の優勝者はバークレイ・マラソンズの出場権を与えられるとのこと。
勇気のある方、ぜひバークレイ・マラソンズにチャレンジしてみてはいかがでしょう?
2 コメント
[…] 今日もたくさんの知っている顔が来ています。ゲイリー・ロビンス(Gary Robbins)も、奥さんがレースに出場するということで、お子さんと一緒に来ていました。先日惜しくも完走ならなかった世界一過酷なレース、バークレー・マラソンズ(Barkley Marathons)の感想を聞いたら、「想像してたよりキツかったよ」との返事。ちなみに、ゲイリーの奥さんは昨年、お腹に赤ちゃんがいる中、Yakima Skylineの25キロの部を無事完走しています。 […]
[…] 以前のブログでレースの概要を書いたので詳しくはそちらを参照いただくとして、簡単にレースを説明すると、GPSの使用を禁止されたランナーは、道標のない山の中を地図を頼りに […]