第一回、第二回に引き続きウェスタン・ステイツ・エンデュランス・ランの連載、第三回です。
またやってしまった。真っ昼間だというのに。
正確な順位は把握していなかったものの、序盤は予定通り20〜30位あたりにつけていた。積極的に女子の先頭を走るルーシー・バーソロミューに追い抜かれても惑わされず、無理せず自分のペースを守り続けた。
案の定、気温が上昇し始めた30マイル地点のロビンソン・フラットあたりから、徐々に失速するランナーを拾い始めた。40マイル付近では明らかに失速するルーシーを捉え、55マイル地点のミシガン・ブラフ手前では暑さに苦しむジェシ・ヘインズも捕まえた。彼はトップ10常連だ。
華氏100度(摂氏38度)を超える暑いレースになったが、私はそこまで暑さを感じていなかった。妻が手ぬぐいで拵えたネック・クーラーとレース直前に買った冷却機能付きアーム・スリーブが、体温の上昇を防いでくれていた。
トレイル沿いで見物している人々が「20位以内だよ!」と教えてくれた。順位を徐々に上げ、とても良い感触で走っていた。あとでミシガン・ブラフのエイドステーションで応援していたチーム・セブンヒルズのイアンが撮った写真を確認したら、私の高揚した表情が写真に収まっていた。
ミシガン・ブラフを出発した。前後にはランナーは見えない。レースはこれから。どこまでトップ10に迫れるだろうか…
ぼんやり考えながら進んでいると、ふと、しばらくコースマーキングのピンクのリボンを見ていないことに気づいた。分岐には気づかなかったので、多分この道であっている気がする。しかし進んでも進んでもなかなか次のリボンが現れない。事前のブリーフィングでは四分の一マイル(400メートル)進んでマーキングがなかったら戻れと言っていたが、もうそれ以上進んでいる。引き返すべきかどうか考えているうちに、四週間前のトレーニングランでは見なかった車道にぶつかった。
エアポケットに入ったかのようだった。いま来た道を引き返す。どこで間違えたのだろうか?どれだけ間違った道を進んできたのだろう?しばらく戻ると、少し前に抜いたはずの二人のランナーが右へと曲がっていくのが見えた。
昨年のBEAR 100でもしでかしたコース・ロスト。またやってしまった。BEARでは日が暮れてから途端にコース・マーキングが見にくくなったために道を見失ったのだが、今回はまだ真っ昼間だ。
時間にして10分〜15分のロス。一気に6つほど順位を落としたようだ。もったいない。でもやってしまったことは仕方がない。トップ20を目標にもう一度レースを作り直そう。早速さきほど見えた二人のランナーを抜き、さらにフォレスト・ヒルへ向かう途中にもう一人をパスした。
西城さんはフォレストヒルの少し手前で待ってくれていた。「道、間違えちゃった。」失敗を告白するとともに、調子が悪いわけではないことを伝えるために、会うなりそう言った。
見物する人が次々に声をかけてくれる。手を振って答えながらエイド・ステーションに入る。私のクルーをする妻やマキコさんの他、ジローさんチームや現地在住のクニさん夫妻など、知った顔が目に飛び込んできた。
私が補給している間に、流れるように妻がジェルをベストに補充し、マキコさんが氷をベストの後ろポケットに詰め、西城さんがフラスクを交換する。短いピットストップを終えて再出発。ここからはペーサーの西城さんと進むことになる。
映像:ナミネムさん
(つづく)
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[…] 第一回、第二回、第三回と続いたウェスタン・ステイツ・エンデュランス・ランの連載も遂に最終回です。 […]