2022年7月16日(土)午後8時、150名のランナーの一人として、ONTAKE100mileレースのスタートラインを切った。僕の三度目のチャレンジの一歩を踏み出した。
3年振りに開催されたONTAKE100mileは、2022年7月16、17日の長野県木曽郡王滝村、霊峰御嶽山の麓をコースとした超長距離のトレイルランニングレース。1084名が出場したメインレースの100kmの部と僕が出場した100mileの部がある。
今回は従来のコースが昨年夏の豪雨災害により、復旧までの時間を要するため、近隣の上松町の国有林林道を使用する新コースが導入された。
100mileの新コースは、松原スポーツ公園を起終点に上松エリアを2周回後、滝越エリアを1周回する。距離160km、累積標高差5,800m。午後8時にスタートし、翌日の午後8時までにゴールする24時間の制限時間。ゴールまでの間には以下の3つの関門が設定されている。第1関門は57km地点、スタート後8時間30分。第2関門は110km地点、スタート後16時間。第3関門は136km地点、スタート後20時間。
スタート後、まずはロード区間。予報通り小雨が降っていた。100mileレースとは思えないほどに周りは早いペースだ。10km、20kmとマイペースを維持。ここまでは快調だった。時折、雨粒が大きくなった。
林道区間に入り、28km地点の白川小川エイドに到着。1周回目の約半分まできた。手早く水分補給とバナナ、オレンジを摂取。トイレ休憩を取った。
ここから10kmで600mの登り。一番キツイ所だ。相変わらず降り続く雨。レインウェアを着ているが身体が冷えてきた。脚が思うように動かない。腹が冷えて痛み出した。
雨と数多くの水溜まりのためシューズの中はすでに水浸し。ソックスは水が絞れる程だ。足の指もふやけはじめていた。マメができそうだ。松原スポーツ公園にあるドロップバッグまでなんとか持たせ、早くソックスを履き替えたい。
身体が冷えているためか、疲労感は何倍にも感じられる。少しでも平らなところは走らないといけないが、疲労と腹痛で長くは走れない。走りと歩きを繰り返した。
ピークと思われるところを過ぎて、下り基調にようやく変化。走るスピードが上がらず、次から次へと後続に抜かれていた。すでに最後尾に近いのかもしれない。前後のランナーの存在を知らせる暗闇の中のぼんやりとしたライトの灯りは見えない。暗闇のなかで感じる孤独感。非日常の状況を楽しむ余裕はない。
三度目のチャレンジもDid not finish か?DNFの三文字が頭にちらつきはじめた。
疲労と痛みと焦燥感がONTAKEでの過去の記憶を呼び覚ました。
2014年ONTAKE100km初挑戦で初完走。ガレた林道の洗礼を受けて、足底筋膜炎で苦しんだ。16時間以上掛かったが100kmの距離を初めて完走できたことが何よりも嬉しかった。大袈裟でもなく生きているという充実感があった。
100マイルの部への挑戦権を狙って、ガチで臨んだ2016年のONTAKE100km。必死に走り続けて14時間以内で完走。ONTAKE100mileの挑戦権を獲得。もうこれ以上ない達成感を感じた。
2017年、満を持して臨んだ100mile初挑戦も第3関門を突破出来ずDNF。
リベンジを誓っての再エントリーも2018年西日本豪雨の災害のため大会は中止。
2019年ニ度目のONTAKE100mileは第4関門を通過できずDNF。
2020年、21年、新型コロナウィルス感染拡大の影響から未開催。
2022年、3年振りの大会開催。三度目のONTAKE100mile挑戦。
長期間に渡り、ONTAKE100mile完走のモチベーションを維持することは容易くはない。この3年間は心身の調子を崩していた時もあって、以前のようにストイックに目標に向かう気持ちは萎えてしまっていた。走る気持ちが萎えていて、ONTAKE100mileが完走できるほど甘くはない。
走りと歩きを何度も繰り返し、繰り返し、ようやく松原スポーツ公園に戻ってきた。1周回目は8時間16分。関門時間の14分前に通過。ドロップバッグを受け取り、座り込んだ。
ここでDNFするか?現在のコンディションで、2周回目に行けるのか?自らに問い掛けた。この状況では2周回目は自力で戻ってくることも難しいだろう。ここでレースを止めよう。後悔はない。完敗だった。
ゲート横のテントで待機する係員にドロップを告げた。計測タグを回収され、ゼッケンのQRコードを機器で読み込みリタイアの手続きを終えた。
「体調は如何ですか?」心身共に弱っている時に掛けて頂く温かい言葉ほど、身に染みるものはない。
「気分が良くないけど、車で休むので大丈夫です。ありがとうございました。」
僕の3回目のONTAKE100mile挑戦は1周回目、57kmで終了。この次があるかは正直なところ分からない。三度挑戦して、三度散った。この事実を受け止めるだけで精一杯。来年再度チャレンジするかは少しだけ時間が必要だ。
追記 100mileの部、出走者150名、完走者64名、完走率41%