昨年に引き続き、2年連続の完走を目指したウルトラトレイルマウントフジ2023 FUJI。
*2023年4月21日〜23日開催、距離164.7km、制限時間45時間、累積標高差6,451m
96.4kmのF5富士急ハイランドの関門時間にわずか2分程タイムオーバーしてしまった。
僕はF5富士急ハイランドを目指して走っていた。21日15時15分に富士山こどもの国をスタート。富士宮、麓、見延町本栖湖、富士河口湖町精進湖と富士山の山麓を南側から時計周りにぐるりと半周した形だ。既に22時間以上経過していた。
足和田山から富士河口湖町の市街地までトレイルを降りてきた。富士急ハイランドまで舗装路メインで残り6km。腕時計は13時44分を示していた。関門閉鎖は22日14時20分。残り36分しかない。6分/kmペースなら関門に間に合う計算だ。
関門にギリギリ間に合うかもしれない。この瞬間、折れた心に火が付いた。関門突破を目指して全力で駆け出した。
市街地のため何度か交差点を通過する。係員の誘導があり、車の通過待ちで足止めを食らう。刻一刻と時間が過ぎていく。もう無理かもしれない。僅かでも可能性があるならと諦めずに走り続けた。何人ものランナーをパスした。
「最後まで希望を捨てちゃいかん。諦めたらそこで試合終了だよ」バスケ漫画の金字塔「スラムダンク」の名言がふと浮かんできた。
一度は諦めた関門突破。最後の足掻きをしている。なんて諦めが悪いんだ。
はあはあと息が荒く苦しい。
心臓がばくばくと烈しく鼓動を打った。
ナイスラン!頑張れ!まだ関門に間に合う!ランナーや係員からの声援を背に我武者羅に走った。
100km近く走ってきたから脚は悲鳴を上げる。でも、関門を突破できなければレースは終了してしまう。体力を残す必要もない。持てる力を全て振り絞った。
関門の400mほど手前でタイムオーバーを迎えた。プツンと集中していた意識の糸が切れた。
最後だけ全力出して、なにやってるんだ。
もっと前に頑張り所があっただろうに。
レースを振り返り、虚無感を感じていた。
F1富士宮(23.8km)からF2麓(51.0km)の間は前半の山場で天子山地を縦走する。熱中症なのか気分が悪くて、吐き気をもよおしペースダウン。夜間通過となるため眠気も酷くて、何度もトレイル横で休んでしまった。これが大幅に遅れた原因だった。自身に起きた体調の変化に前に進む気力が萎えてしまった。
完走するという気概と覚悟があれば、レース中に起こるあらゆることを乗り越えられたはずだ。気概も覚悟も足りていなかった。敗因はこれに尽きる。
昨年の自分を超えたいと思って臨んだこのレース。昨年の記録更新はおろか完走の目標を果たせず悔しさだけが残った。
日本最大のトレイルランニングレースというハレの舞台に再び立てたことはなにものにも代え難い体験だった。多くの方々の応援や支えがあり、こうしてトレイルランニングができたことに深く感謝している。