MT.FABs×MMA interview vol.2

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前編では、WANDERLUST EQUIPMENTの粟津創さんとOGAWANDの小川隆行さんに、それぞれのブランドとMT.FABsの成り立ちについてうかがった。

MT.FABs×MMA interview vol.1

後編は、いよいよMMAとの製品づくりについて。

機能性をとことん追求したULアイテムに、エモーショナルなアプローチを得意とするMMAのデザイン性を重ねた今回のコラボレーション。そこから生み出されるものとは……。
 

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- 今回のコラボレーションは、渋井さんからの熱烈なラブコールがきっかけとうかがっています。

渋井:僕がお二人に一緒に何かやりましょうとお話ししました。UL系の製品は素材を活かした無地のものが多いですよね。MMAの強みはデザイン性や柄物にあるので、コラボレーションでデザイン性のあるギアをつくりたいと思ったのです。

アイテムについては、粟津さんと小川さんにセレクトしていただきました。制作するにあたって、トレイルランは意識しなくていいですとお伝えしています。トレイルランナーがもっと山を楽しめるようなギアを目指しました。

- 渋井さんからお声がけがあって、いかがでしたか。

小川:もちろん、光栄でした。普段からどんな商品をつくろうかと模索しているのですが、OGAWANDらしくなければつくりたくない。一方でパンチのあるグラフィックやマテリアルを使ってみたいという気持ちもあったので、コラボレーションはすごくよい機会になりました。

粟津:ハイキングとトレイルランニングはお隣さんみたいなもの。こういった繋がりがきっかけで、新しいものがつくれるというのは楽しいですよね。

トレイルランナーは山に対してどんな感覚を持っているのか、僕らにはなかなかわからないわけです。ランナーとの繋がりはありますが、ハイカー出身の人が多いからちょっと感覚が違う。ピュアなトレイルランナーの考え方がわかったり、生の声が聞けたりするのがいいですね。
 

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- トレイルランナーに対して、どんなイメージをお持ちですか。ぜひ率直な印象をうかがいたいのですが。

粟津:お行儀のよい人たちという印象かな。決められたルートを辿っていくことに慣れているので。でも、もっと外れてもいいですよ、道に迷ってもいいですよと話してあげたいな。もっとディープな山に連れて行ってあげたいと思ったりします。

小川;頑張れる人たちという印象がありますね。僕らはオフトレイルも好きなので、そういうところも行ってみたらいいのにという気持ちもあります。トレイルからちょっと外れるだけで、自然の見え方が変わるからです。そういうことを体験しておくと山の見え方も変わってくるし、トレイルランに対する意識も変化するのではないかと思います。

渋井:100マイルを完走してしまったトレイルランナーたちが、いま目標を見失いつつあります。燃え尽き症候群が少なからず生まれていると感じています。そんな中で、もっとピュアに山を楽しめる方法として、トレッキングやULは可能性のひとつとしてとても魅力的です。

例えば「MMAがUL系ブランドとコラボしている。買ってみようかな」というのがきっかけでULに興味を持っていただくのもよいと思います。もちろん、コアにはまるかはまらないかはそれぞれの自由で、トレイルランもULもやるしトレッキングもやるといった遊び方が、長く山を楽しむことが出来ると思います。

小川;コラボは似たもの同士がやらない方が面白いものが出来ますよね。ちょっと異文化交流的な刺激があった方が、裾野や視野が広がっていいと思います。
 

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- UL愛好者の中でも、走る方は増えていますか。

粟津:それは増えていますよ。ウルトラライトを突き詰めると、荷物を持たずに駆け抜けるのが一番軽いですしね(笑)。

小川:ULの人たちはやりだすと、とことんはまる人が多いので、ある意味、素質を持っているのでしょうね。体力もあるし。山の登り下りのノウハウが身についている人は、たいてい速いですよね。

- トレイルランナーから見ると、ULは少しだけ敷居が高いイメージがあるのかなと感じています。装備を軽くする分、体力や知力、山での高い経験値が備わっていなければいけないのではないかと思ったりするのですが。

粟津:そんなことは全く感じなくていいですよ(笑)。

小川:むしろ体力がない人、女性や中高年の方にこそULを勧めたいですね。例えばザックとか。軽いものを揃えることで、調理器具や食料を豪華にすることもできます。

なんでも軽くするわけじゃないんですよ。軽くなった分、自分の持っていきたいもの、楽しみのためのアイテムをプラスする。そういうご馳走を用意するのがいいですよね。ULはそういう目的であってもいいと思うのです。

ライトウェイトのギアを求める傾向はすでに世の中のベースとなっていて、そこから何をするかというステージにいま来ていると僕は感じています。それを提案してあげることが、僕らの仕事かなと思います。
 

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粟津:初心者の方たちの相談に乗ることも多いのですが、「最初はちょっと怖いから重いギアを揃える」という人と、「最初から一番軽いもので揃える」という人がいます。でも結局、重いものを選んだ人は実際に使ってみたあげくに買い換えることになりますね。軽いものを買った人はたいていそこで満足する傾向が強いかな。

渋井:いまのように情報がはん濫していると、もはやカテゴライズ自体が必要ないのではと思ったりします。ウルトラライト、トレイルランニング、ハイキング、トレッキング、自分はどれをやると決めこむことはなく、もっと自由に考えればいいと思います。

去年、北アルプスに行ったのですが、ウェアはMMAでシューズはALTRA、ザックは海外メーカーの重いものを背負っていきました。するとトレッキングの人たちはトレイルランニングシューズをものすごく白い目で見るわけですよ。こいつはスニーカーで来ているよ、というような(笑)。

ただ僕はトレイルランニングシューズもトレッキングシューズも知った上で、ALTRAを選択した。ザックはその時点ではウルトラライトを知らなかったので、たまたま海外メーカーの普通のものを背負っていった。知っていたらULのザックを持って行ったと思います。ULで全部揃えなければいけないというのではなくて、自分の中の選択肢をどんどん増やして、その時に必要なものを選択する時代になればいいなと思っています。
 

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- ここからは、コラボレーションギアについて詳しくうかがっていきたいと思います。まず、渋井さんからのリクエストはどんな内容だったのですか。

渋井:MMAオリジナルのネイティブ柄をプリントしたCORDURAⓇの生地を使って何かつくってくださいとお願いしました。ウレタンコーティングが施されてて、撥水性(耐水性)と耐久性がある素材です。
 

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- 各ギアについて解説していただけますか。はじめにWANDERLUST EQUIPMENTの『KHANPA LA PACK Lighting』からお願いします。

粟津:これはもともとハイキング用のショルダーバッグとしてラインナップしているKHAMPA LA PACKを今回、トレイルランに対応するヒップバッグとしてリノベーションしました。日帰りで山に入る時に必要な最低限のアイテムが入る容量です。シェルや行動食、ボトル、カメラ、携帯、ヘッドライト、ファーストエイドなどが収納できます。

ウエストやヒップの形は男性と女性で異なりますよね。ですから、どんな方でも快適に使えるように、2本のバンドでフィット感を調整できるようにしました。フィットさせたいときにはバンドをしっかりと閉めて、中身を出す時には上側のベルトだけを緩めれば腰に固定したままジッパーを大きく開くことができます。僕自身、ものが取り出しにくいバッグが嫌いなので、いかに取り出しやすくするかを考えました。またバッグ本体は中身の量に合わせてバンジーコードで絞れるようにしてあります。絞ることで揺れが軽減できます。

肩にもかけられますから、ハイキングの際にはザックと併用して、山頂アタックの時に持っていくといった活用法も可能です。
 

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- たしかに、フィット感がよいですね。細かな調整がきくところが嬉しいです。では『TRAIL ZIP WALLETⅡ』についても教えてください。

粟津:ハイカーワレットはいろいろなブランドから出ていて、いかにサイズを切り詰めるかがポイントなのです。うちでも最少サイズの商品をつくっていますが、常用するには中身がちょっと取り出しにくい。一方、これは広口で浅型、横長形状で、ミニマムでありながらもジッパーを大きく開いて中身の小銭を取り出しやすくなっています。内側には最小限の仕切りを1枚とキーフックをつけました。iPhone6も収納できます。

渋井:仕切りが黄色なのは、何か意味があるのですか?

粟津:暗い色だと中身が見えにくいからです。白だと汚れが目立つので、黄色にしました。ランナーは公共の交通機関も使いますよね。カード類も入るこういったお財布も便利かなと思ってつくりました。
 

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- 次は、OGAWADのバックパック『Acperience』についてうかがえますでしょうか。

小川:15Lから30Lまでサイズ調整が可能な小型バックパックです。オプションを加えたり、別売りのショルダーハーネスに交換したりすることで、アドベンチャーレースやオーバーナイトのOMMレース、TJARなどにも対応できるようにする予定です。僕の作るザックは後づけできるオプションなどがあり、自由度が高いのが特徴です。それを駆使することで、山に関わるアクティビティに幅広く対応できるようにしています。

- このアイデアもフィールドでの体験から生まれのでしょうか。

小川:ザックの原型は、僕がキタタンに出場した時につくりました。ボトルが入るショルダーハーネスと後ろのボディが分離できて、それぞれを変更することで、ショートからロングレースにも使えるというものです。僕はスピードレーサーではないし、オーバーナイトやアドベンチャーレースなどの方が好きなんですね。その時々のアクティビティに合わせてパーツを替えれば、ひとつの道具でいろいろな使い方ができるわけです。

- 容量も幅がありますね。

小川:上部をロールダウンして小さくします。こうすると日常から使えますよね。ベルトに通すトライグライドというパーツを加工していて、それによって、外側のベルトが簡単に調整できるようになっています。

容量を少なくする時には、まず横のベルトを締めてから縦を縮めるとよいです。縦を縮めるだけだと重心が下がってしまうので、最初に厚みを減らして高さを変えないように維持しながらパッキングしていきます。そうすると縦ベルトを締める場所が必然的に変わってくるので、このトライグライドを加工したパーツを移動させるわけです。

耐荷重は8kgくらいまでを想定しています。ハーネスを付け替えると13kgくらいまで快適に背負えると思います。実際には8kgになると重くて走れませんから、走るのならば5kg台以下がおすすめです。
 

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- 大きさを変えると、同じザックではないみたいに見えますね。

小川:アウトドアのギアって、アクティビティごとに使うものが決められていますよね。僕自身はそういうのがあまり好きではありません。日帰りも泊まりもどこへ行くにもひとつの気に入ったザックで行きたい。それを具現化するためのシステムです。

- それぞれのアクティビティに対して大きさや特徴の異なるザックを揃えるのがいまの主流ですが、そうするとたくさん所有しなければなりません。お気に入りのギアをとことん使いたいという欲求は、誰しも少なからず持っている気がします。続いて、『Wrap Sack』についても教えていただけますか。

小川:これは腰骨よりもちょっと下につけるバッグという位置づけです。身体の重心に近い腰につけると重さを感じにくくなり、身体にかかる負担も軽減されます。ランニングをしていると、人間の両足にかかる荷重が均等でないという現代病に気づかされますよね。だから、身体のバランスを崩すようなバッグはできればつくりたくないと思っています。

腰につけるとぴたっと身体に寄り添うイメージ。ウェアとギアの中間のような存在感、追加ポケットのようなイメージでつくりました。肩がけとしても使えます。この商品ラインでは通常、ウェアに溶け込むような渋めの色をチョイスしているのですが、今回の柄はアクセントとしてすごくいいなと思っています。
 

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- 今回コラボレーションされてみて、どのような手応えを感じましたか。

小川:立体が得意な人と平面が得意な人とは分かれるんですね。僕自身は平面がそれほど得意ではないと思っているので、渋井さんの得意分野とコラボできたのは非常に面白かったです。

グラフィックは一瞬で目に飛び込んでくる強さを持っています。立体は手で触ったり背負ったりして、じわじわと身体を通してよさが伝わってくるもの。インパクトやパンチ力はグラフィックの方が圧倒的に強い。その力を入口にして、伝わるものもあると思っています。

渋井:せっかくコラボするならば世の中にないものをつくりたい。それが僕の中のキーワードです。ウルトラライトの発想が「使うための機能」を追求しているとすれば、MMAは違う視点からアプローチしています。目で見ていいなと思ったものは必ず心を高揚させますよね。それもデザイン力のひとつだと考えています。

アウトドアの世界では機能性を最優先にしていて、そこには見た瞬間に伝わるようなデザイン力がほとんど存在していません。その部分を追求していくこと、それがMMAの目指すところです。

例えば『DENIMランパン』を履いても決して速くはならないわけですよね。でも見た目のデザインが気持ちを高揚させることで、それを着た人にとっては別のエネルギーになっていく。このコラボレーションではそれをULのギアで実現することができました。とてもバランスのよいラインアップになったと思っています。

小川:先ほどキタタンでザックを使用した話をしましたけれど、あのザックを背負ったからといって、決して足が速くはならないわけですよね(笑)。

粟津:僕も色のカスタムオーダーを受けたりしていると、ギアが ”製品“ から お客さまの“自分のもの”になるプロセスが人それぞれあるのかなとは思います。「これは自分のものだ」と思えるギアで、山に行くのがいいと思いますね。

渋井:愛着のあるものの方が使いこなせますよね。僕たちのような小さな規模でものづくりをしていると、背景にある考え方や意図をユーザーさんに伝えやすい気がします。自分たちの気持ちをしっかり伝えることが出来れば、それによってユーザーさんもギアの正しい使い方や、その人なりのアレンジがしやすくなる。それはものづくりにとって、とても健全な姿なのではないかと思っています。

さらにこの場所に足を運んでいただければ、お二人から直接、話を聞くこともできるわけですしね。僕も今日のお話をうかがって、このギアで夏山に行くのがますます楽しみになってきました。
 

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MMA×WANDERLUST EQUIPMENT KHAMPA LA PACK Lightning
 

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MMA×WANDERLUST EQUIPMENT TRAIL ZIP WALLET II
 

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MMA×OGAWAND Acperience (7月発売予定)
 

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MMA×OGAWAND Wrap Sack(完売)
 

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〒162-0811 東京都新宿区水道町1-18-2F
Open Factory: 水・木曜日 16:00-21:00

interview / report: Yumiko Chiba (GRANNOTE)
photograph: Akihisa Kudo