子供の頃の夢ってなんだったろう。
少し前の話になるが、昨年(2013年)11月1日、山梨アウトドアの銘店ELKさんで開催された「甲斐国ロングトレイル」第一回意見交換会に参加させていただいた。
「甲斐国ロングトレイル」とは、山梨県に生まれ育ち、現在は山岳カメラマンとして活躍する平賀淳さんと、その平賀さんと山岳映像チーム「Yeti Tracks」として活動を共にする一瀬圭介さんが2013年8月に立ち上げたプロジェクトだ。四方を山に囲まれた山梨県には、山梨百名山を制定していることからもわかるように魅力的な山が数多く存在する。その山梨県の山々を一周つなげるロングトレイルを作ろうというプロジェクトが「甲斐国ロングトレイル」である。
ぼくは平賀さんや一瀬さんから「甲斐国ロングトレイル」についてはなんとなく聞いていたのだが、自分が山梨県にあまり詳しくないこと、そしてあまりにも大きな話なので概要を知りたいと思う気持ちもあり、意見交換会に参加させていただくことにした。時間ギリギリに会場であるELKさんに到着すると、平日夜の開催にも関わらず多くの方々が集まっていた。
平賀さんと一瀬さんによるプロジェクトの概要説明によると、ロングトレイルは想定300〜400kmにもなるという。興味深いのが、ただトレイルをつなぐということが目的なのではなく、プロジェクトの理念として山梨県の自然、文化、歴史を深く知っていただくこと。そして山地と山脈の間にルートを設定することにより、これまで会う機会の少なかった山梨の先人達や街との間にふれあう機会が生まれ、それが世代を越えるコミュニケーションとなる。ロングトレイルは手段であり、目的は世代間や、山梨と県外とをつなぐことなのだ。ピークハントが主流の日本登山の中で、欧米型のロングトレイルという文化を育もうとしている。なんという壮大なプロジェクト!
しかし、現実的にはまだトレイルはつながっていない。何故多くの魅力ある山々を持つ山梨県のトレイルが一周つながっていないのかといえば、おそらく現実的な課題や難題が少なくないからだろう。
意見交換会にはトレイルランナーの山本健一選手(平賀さんの高校山岳部の後輩)、南アルプス市長、日本山岳協会役員、一般のトレッキング愛好者やトレイルランナーなど、40名を越える方々が幅広く集り、後半はその参加者ひとりひとりがプロジェクトに関する意見や感想を述べた。
実際に山梨百名山を5年かけて全登頂されたベテランの登山家の方は、実際にトレイルがつながっていない部分もあり、大変だろうということだった。しかし、南アルプス市長や日本山岳協会役員の方などは、プロジェクト自体の意味合いや現実的な課題を充分ご理解された上でポジティブに受け止め、「根気よく続けて欲しい」というコメントをされていた。
肯定、期待、第三者的、そして否定。様々な意見があった。ぼくとしてはあくまでも第三者的に、まずはここから始まる壮大なプロジェクトの過程を見ることが出来る喜びがあった。プロジェクトメンバーの熱意、そして意見交換会に集まった方々の真摯な気持ち。たしかにここから何かが生まれる熱と予感がある。
しかし、半面(山梨県に詳しくないこともあり)どこまでこのプロジェクトの理念と魅力を伝えることが出来るのかという点では、今後の活動が重要だとも感じていた。トレイルをつなぐことと同様、伝えるという課題も決して小さくはない。
ぼくが印象に残った参加者の意見は、平賀さんの同級生の方の一言だった。
「平賀くんは高校の頃から山梨を一周つなげられないのかなと言っていた」
高校生の頃から漠然と描いていた夢。大人になり山岳カメラマンとして世界中を巡り、あらためて山梨県の魅力に気づくことになったという平賀さん。様々な経験を経て踏み出した一歩だからこそ、多くの課題を理解しながらも、それを上回る大きな決意を持っている。その夢は一瀬さんにも伝わり、今後も多くの人々に広がっていくのだろう。そして、やがて山梨県のトレイルが一周つながる日が来る。そんな期待を抱かせてくれる会であった。
その「甲斐国ロングトレイル」の第二回意見交換会が東京で開催されます!
「甲斐国(かいのくに)ロングトレイル」構想 意見交換会 vol.2 開催要項
日時: 2014年1月17日(金) 18:45開場、19:15開演、21:30終了予定
会場: 新宿区市谷本村町1-1 住友市ヶ谷ビル9階「インプレスグループセミナールーム」
アクセス: 市ヶ谷駅・南北線改札から徒歩2分、同・JR改札から徒歩4分
参加費: 無料
募集人数: 50人
内容:①「甲斐国ロングトレイル」構想の概要説明
②:これまでの活動の取り組み
③:今後の活動に関して
④:意見交換会
主催: 甲斐国ロングトレイル準備委員会(仮称)
後援: 山と溪谷社
【参加申込み方法】
参加申し込みは、 2014年1月7日(火)お昼12:00〜 ヤマケイオンラインより必要事項を入力頂くことで、受付完了となります。以下リンクより「ヤマケイオンライン」の本イベント告知記事にアクセス頂き、サイト内の応募フォーム(1月7日〜)から、ご入力ください。
http://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=2247
【「甲斐国ロングトレイル」公式Facebookページ】
https://www.facebook.com/kainokuni.lt
この大きな夢に乗りたい方は、是非参加しましょう!
(文/渋井 勇一)