トレイルランナーなら一度はその名を聞いたことがあるであろう「Ultra-Trail du Mont-Blanc」、通称UTMB。
日本ではトップランナー鏑木毅氏のUTMB参加ドキュメンタリーが2009年の某国営テレビで放映され、近年の国内トレイルランニングシーンの盛り上がりの起爆剤になった。
ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランを周遊するという壮大なレースUTMBは、モンブランの麓にあるフランスの街シャモニーをスタートし、イタリア、スイスをまたがるコースの総距離はなんと160kmにもおよぶ。距離だけではない。累積標高は9500m以上、その過酷ともいえるコースを46時間の制限時間内にゴールしなければならないn。
UTMBが世界のトップトレイルレースと呼ばれるのはそうしたハードな条件以外にも、モンブランを巡る壮大なロケーションや世界のトップランナーが集まり競いあうシビアな展開、そしてヨーロッパだけではなく、海を渡り世界中からトレイルランナーが集まる注目度など、多くの魅力から成り立っている。
日本からも近年では毎年200名以上のトレイルランナーがレース期間中にシャモニーに集う。とはいえ、国内のトレイルランナーの人数に比べれば数パーセント程度にしか過ぎず、まだまだ敷居が高いイメージがあるのかもしれない。そこで、あらためて(トップランナーではなく)一般市民トレイルランナーがUTMBに参加するために必要な情報をまとめてみよう。
UTMBは毎年8月末に開催される。メインレースとなるUTMBの他、ハーフレースであるCCC(Courmayeur-Champex-Chamonix)、クールマイヨールからUTMBのコース外側を逆に巡るTDS(Sur les Traces des Ducs de Savoie)、アドベンチャーレースとも呼べるPTLの4レースが開催される(PTLは日本人エントリーがほとんどないので、今回は除外)。
●UTMB(Ultra-Trail du Mont-Blanc)
距離:168km
累積標高:9600m
制限時間:46時間
参加人数:2300名
●CCC(Courmayeur-Champex-Chamonix)
距離:100km
累積標高:5950m
制限時間:26時間
参加人数:1800名
●TDS(Sur les Traces des Ducs de Savoie)
距離:112km
累積標高:7150m
制限時間:31時間
参加人数:1400名
※2012年開催時のレギュレーション
各レースにエントリーするには、UTMBの指定レースを完走して、ポイントを取得する必要がある。指定レースには各々ポイントが付与されており、各レースエントリー必要なポイントは以下の通り。
●UTMB:3レース以内で7ポイント
「3レース以内」というのがハードルを高くしている。例えば2ポイントレースを4回完走ではエントリー資格にはならない。
●CCC/TDS:2ポイント
2ポイントということで、UTMBに比べればかなりハードルは低い。いきなりUTMBに挑戦するのではなく、CCCやTDSに参加して海外レースの経験値をあげるという方法も有効かもしれない。
通常、参加年度の前々年と前年の2年間のポイントが有効となる(2013年度参加のエントリーであれば、2011〜2012年度のレースが対象)。
日本国内で開催され、UTMBポイントが獲得できる主な大会を紹介しよう。
●4ポイント
・ウルトラトレイル・マウント・フジ
・OSJおんたけウルトラトレイル 100マイル
●3ポイント
・オックスファム・トレイルウォーカー 100km
・OSJおんたけウルトラトレイル 100km
・信越五岳 110km
●2ポイント
・STY(Shizuoka to Yamanashi)
・日本山岳耐久レース・奥久慈トレイル 50km
・The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉
●1ポイント
・北丹沢12時間山岳耐久レース
・斑尾高原トレイルランニングレース 50km
・信州戸隠トレイル 45km
・道志村トレイルレース
・OSJ志賀高原トレイル
・神流マウンテンラン&ウォーク
※2012年開催時のレギュレーション(毎年見直しがある)
エントリーする際に、完走証明としてゼッケンと完走時間を入力する必要があり、完走予定のレース(レース当日までに完走する)は当然含まれない。
世界中から多くのトレイルランナーが集まる人気レースゆえ、参加出来るかどうかは抽選での決定になる。
UTMB公式サイト / http://www.ultratrailmb.com
エントリーは開催年度の前年12月から始まる。UTMB公式サイトからのエントリーで、日本語での表記はないが、最低限の英語を理解出来ていれば(もしくは英和辞典を片手に)、エントリーすることは難しくないだろう。上記のように、エントリー資格を証明するために完走したレースの情報を入力する必要があるので、手元に情報を用意してエントリーしよう。エントリー時にはデポジット(保証金)を支払うが、もちろん落選時には返金される
年明けて1月中旬頃に当選発表があるので、エントリーした後は当選を祈るばかり。
当選の暁には、まずは参加費を支払う。参加資格のポイントに関しては、UTMB本部で確認をとるので、完走証などを発送する必要はない。その他、5月末までに健康を証明する健康診断書を提出する。これは英語で書かれたもので、フォーマットはメールで送られてくるので、健康診断を受けて(特に受診項目が指定されているわけではない)、ドクターのサインをもらおう。近隣で英語の診断書に対応してくれる病院を探しておけばスムースに行える。
上記はすべてUTMB公式サイト上で作業を行う。多くの国から参加者がいるためか、意外とシステマチックな印象。
このような情報は、エントリー前に最低限知っておいたほうがよい情報であるが、オフィシャルサイトを見たり、WEB上で検索すれば拾えるものでもある。
では参加が決まった後、実際にどうやってシャモニーまで行くのか、UTMB期間中のシャモニーの様子はどういうものなのか。それは次回に。