今シーズンも地蔵尾根からTJAR冬季南アルートをたどり、
年末寒波で大荒れになる前に三伏峠で下山。3泊4日+1日。
26日は7時前に柏木登山口をスタート。すでに先行パーティが何組かいるようでトレースあり。
序盤からうっすら雪が積もっている中をトレランシューズで進みます。
標高1,850mの林道の先で3人組のパーティをパス、すぐその先でソロの方をお二人続けてパス。
雪の積もり方を見ながら登山道と林道を交互に進み、松峰小屋分岐まで2時間45分。
ここで登山靴やソックスを履き替えているとソロの方がお一人到着。ペースが速い、かなりの健脚の方。
普段だとここから雪が多くなるのですが、今日はそれほど変わらず足首の少し上ぐらい。
ツボ足で進みます。途中で休憩しているとソロの方2人にパスされ、「速っ!」と。
ただ後で追いついたときにお話を聞くと「だいぶ足が終わりかけてる…」とのことで、
私がペースを乱したようです… ごめんなさい。
稜線に上がる手前でアイゼン・ピッケルに換装。

まぁまぁ雪あります。
稜線に上がると、いつもの幻想的な仙丈ヶ岳。
これは、本当に息をのみます。

仙丈ヶ岳
雪は少ないもののクラストしていないので、場所によっては膝ぐらいまで沈むところも。
ハイマツも雪で隠れていないので、夏道をゆっくり進みます。地味にキツい。
頂上直下もクラストしておらず脛まで埋まりながらサミット。7時間20分。
周りの山も雪が少ない。

仙丈ヶ岳

雪のラインがはっきり
大仙丈ヶ岳までの稜線は毎度の腿までのラッセル。時間がかかります。
クラストしているところはないので、ハイマツの上の新雪に埋まり歩きにくい。
振り返ると仙丈ヶ岳がやっぱり素晴らしい。

大仙丈ヶ岳から振り返って
ここから樹林帯に入るまでがいつもと全く違うところ。
ハイマツが雪で埋まっていないので、夏道をたどります。
が、ハイマツが倒れ気味で夏道を中途半端にふさいでいたり、
夏道は夏道で膝や腿までのラッセルと、どこを進んでいいやら…
なんとか明るいうちに樹林帯に入り一安心。スノーシューに換装し脛までのラッセル。
ピンクテープも埋まっておらず、勝手知ったる夏道なのでほぼ迷わず。GPSを使ったのは1回だけ。
14時間50分で両俣小屋に到着。水がとれるのが本当にありがたいです。
27日は超寝坊して8時50分スタート。
昨日の下りのトレースが残っているので登りもそれほど時間がかからず1時間チョットで野呂川越に到着。

野呂川越
ここから三峰岳も例年とかなり違い、序盤は雪のあまり無いところも。
標高2,500mぐらいからはそこそこ雪も出てきますが今日はチェーンスパイク。
結局アイゼンはこの日つけませんでした…

序盤は雪少ない…

中盤以降は脛ぐらい
稜線に出てすぐの急登は腿まで埋まり本当にキツかった…
鎖・ロープとも雪の中からすぐに掘り出せたのでテクニカルではなかったです。
稜線もやはり夏道をたどり、膝まで埋まりながらゆっくり進みます。
暖かく、風も弱かったのが幸いでした。クラスト一切無し。
スタートから5時間50分で到着。これがラッセル三昧だと8時間とかに…
ここから振り返った仙丈ヶ岳も、いつも本当にいいなと思います。

三峰岳

振り返って

間ノ岳は雪少なっ!
熊ノ平までの下りも雪が少なく、逆にスパイクだと時間がかかります。
スパイクさえいらず途中からはツボ足、というか夏と同じガレ場歩き。
熊ノ平小屋の直前で毎度の腰までのフルラッセル… ここはいつ来てもキツいです。
スタートから7時間で到着。早っ! しかも水がとれました。
この時期ここで水が取れたのは2回目、確率五分五分です。
夜はビバークレーション。雪山のマストアイテムです。
味が複数あり美味しい、そしてなんと言ってもお湯で1分で戻るのでアツアツのまま食べられるのは幸せです。
沸騰までいかなくともすぐに戻るので、燃料の節約にもなります。

水!

ビバークレーション
28日は朝から雪、けっこう積もっているのものの気圧の谷が通過するということで出発を遅らせ7時半にスタート。
この区間は毎度のラッセルで、スノーシューで脛から膝ぐらいまでを進みます。
とはいえ、雪自体は少ないのでピンクテープも見えていて、
例年ほどルートファインディングには困りません。

積もってますがピンテは見えてます。
竜尾見晴の手前で、新雪が風でBB弾のように当たってくるのでゴーグル着用。
膝ラッセルの急登と、中途半端に夏道を隠したハイマツを登ったりくぐり抜けたりするのに時間がかかります。
この区間はルートファインディングが難しく、GPSを何度か使い、落ち着いて地形を読みながら、
稜線側(伊那側)なのか、樹林帯側(山梨側)なのか見極めながら進みます。
塩見岳手前の稜線に上がる手前まで5時間、ここもフルラッセルだと8時間はかかるところ。早っ。
雪少なめですがキツいのは同じです。

いつもなら埋まってます。よい感じの森。
稜線までの激登りは腰までのラッセルで時間がかかります…
少しずつ上層の雲が晴れてきて、青空の部分もチラチラ。
稜線に上がるとそれほど風は強くなく暖かいので一安心。
いったんトラバース気味のトレイルに入ると腿までのラッセル。全然進まない…
再び塩見岳に取りつく稜線の手前で15時過ぎのため今日はここまで。
時折ガスが晴れ白峰南嶺と富士山が素晴らしい。塩見岳方面は見えず。
風の弱いところまで少し戻り標高2,750m地点でビバーク。
夜は冷え込みテントの中は結露が凍って雪が降っているようでした…

白峰南嶺と富士山
29日は6時前にヘッデンを付けてスタート。さすがにマイナス15度、厳冬期ほどではないものの寒い!
塩見岳はクラストしている可能性もあると思い最初からアイゼン・ピッケル。
稜線はほとんど雪が無くひたすらガレ場を歩いている感じ。ツボ足でもよかったか…

雪が無い…
蝙蝠岳への分岐でようやく雪山らしくガッツリ雪、腿までのラッセル。
ようやく塩見岳本峰が見えてくると雪山らしい稜線の美しいリッジラインが広がります。

ようやく雪!

すばらしい
ここからは膝から腿までのラッセルをしながらの稜線ハイクアップ。
風は弱く日差しが暖かいのでバラクラバもいらず。
ハイマツが出ているのでほぼ夏道を埋まりながらトレース。
3時間半とかなり時間をかけて塩見岳登頂。
ここから振り返った仙塩尾根と仙丈ヶ岳が本当に素晴らしいです。感動。

塩見岳
風も弱いのでのんびりして三伏峠方面へ下山開始。
こちら側は風が強く慎重に。雪とガレ場のミックスルートを夏道でいくのでゆっくりとアイゼンを引っかけないように。
塩見小屋の手前で前からソロの人がハイクアップしてくる。1日目以来の人と遭遇。
聞けば三伏峠にテントを張ってピストン、30日に下山とのことで他の人はいないとのこと。
30日から天気が崩れる予報とはいえ、この時期に1組もいないのは珍しい。
樹林帯まで下りたところでスノーシューに換装し、あとは夏道を足首~脛程度。
ここも雪があるときはハイマツは隠れ、どこを進んでもいいぐらい積もるのですが…
本谷山はピンクテープの向こうに塩見岳、普段はピンクテープやハイマツ・木々は完全に埋まってます。

本谷山から塩見岳
三伏峠まではツボ足でも問題なし。
三伏峠小屋にはスタートから8時間、小屋前でスノーシューを外しツボ足で下山開始。
鳥倉登山口まで足首ぐらいの雪が続き、1時間半かからず無事下山。ホッと一息。

鳥倉登山口
気温が高く、ガチガチに凍っていたトレランシューズも解凍して後は林道歩き。
途中でビバークして、翌朝の大河原バス停発伊那大島駅行きの始発に乗り、
伊那市駅から高遠、市野瀬とバスを乗り継いで、最後は柏木登山口までロードを300mハイクアップして車回収で無事旅は終了。
仙流荘のすぐ先で通行止になっていて、その手前のスペースが年越登山の方の臨時駐車場のようになっていました。10台はいたかな。
TJAR冬季南ア、夏の本レースと同じで、
「できそうでできない」「サラリーマンがお盆休みの1週間でなんとか行ける」のような、
ちょうどいいと言ったら変ですが、難しさがあり、
休みのとれる年末年始に毎年足を運びたくなります。
今回、30日以降天気が崩れ、年末寒波で大荒れの予報が出ていたため、
このまま進んでいれば間違いなく2,3日は高標高に閉じ込められてステイしていたと思います。
また、新雪がほとんどで、高山裏小屋から荒川岳に登るカールは雪崩の可能性が高く、
たどり着いていたとしても登らずに間違いなく引き返したていたと思います。
もちろん休みが2週間とかとれれば、荷物さえ重くして完踏することはできると思いますが、
これを6日間程度でスルーするには、万全の体調や装備を整えた上で、
天候や雪の状況などの「運」に恵まれる必要もあります。
だからこそ、毎年足を運んで、その時の自然の状況をありのままに受け入れながら、
自分のベストを尽くして、作戦を考えながら、工夫して進む。
ここにTJAR冬季南アの面白さがあるのだと思います。
今シーズンも安全に。