年末年始恒例のTJAR冬季南ア縦走、今回は3日目で早々に下山しました。
12月でこんなに雪の多い南アは初めて、2017年から5年連続ですがあらためて冬季南アの凄さを実感しました。
25日は柏木登山口を7時過ぎにスタート。朝方から降っていた雪がようやくやみました。
登山口には車がすでに2台あったので先行者がいる模様。
孝行猿のあたりから早速雪が出始め、最初の林道に出るあたりですでに足首。
24日からの雪がけっこう積もっています。
6日分+予備の食料で合計4kgオーバーと水2リットル積むとザックは15kg近くになり、
いつもよりペースはゆっくりです。
1,800m付近の林道に出ると少しツボ足では歩きにくくなってきます。
水がチョロチョロ出ているところまで1時間半。時間がかかります。
この少し先で先行者はワカンに換装されたようです。
自分も1,900m地点でスノーシューに換装。
先行者はこのルートが初めて? のようで夏道とは違うルートをところどころとりながら、
尾根を忠実にたどられているところもありました。
林道手前の道標で一休憩。ここで2時間半。いやー時間かかる。
徐々に脛までになり、トレースも2人分? のため少し沈みスピードが落ちます。
松峰小屋手前の急登は冬は毎度苦労します。
普段はガリガリに凍った、ちょっとしたコルの部分もまぁまぁ雪が積もってます。
松峰小屋分岐には4時間、今まではここからさらに5時間かかったことがありましたが、
今日はどうなることやら…
普段はこの後の急登が滑りやすいためアイゼンに換装するのですが、
まだ先行者がワカンでトレースをつけてくださっているのでスノーシューで進みます。
雪が多いためスノーシューでも問題なく進めます。ここで先行者の熊鈴の音が聞こえてきます。
2,100m付近で先行者お二人に追いつき、なんと犬を1匹連れていました。すごい。
さぁこの後からがラッセル。脛から膝までのもぐる雪を、
1歩ずつ、1歩ずつ、進みます。時間が本当にかかります。
ザックも重いので、1日目からカラダへの負荷がハンパないです。
雲間の陽が徐々に傾いてきて、少しずつ風も強くなってきます。
2,650m付近の稜線に出る手前のところは、夏道のトラバースは新雪で雪崩の可能性があるため、
いったん尾根まで直登してから、比較的フラットなハイマツ帯をトラバースして稜線に出ます。
ここが6年間冬季仙丈ヶ岳に登り続ける中でいちばんキツかった…
もうとにかく進まない。腿、腰までの急登ラッセル。
腿で固めて、20cm登っては10cmズリ落ちるの繰り返し。
ここだけで1時間近くかけ、ようやく稜線に出ると暗くなり始めました。
仙丈は雪煙で見えず。風も強そうです。
少し進んだところで早めにヘッデンを装着します。
稜線もかなり雪が積もっており、引き続きスノーシューで脛までのラッセル。
クラストはしておらず時間がかかります。
根雪の上に新雪があり、アイゼンを使うほどではないものの少し滑りやすいので要注意。
2,850mあたりからはホワイトアウト気味になり、
暴風で積もった雪がBB弾のように横から叩き付けてきます。風速は20m近くでしょうか。
幸い道に迷うような場所ではなく尾根を登るだけなので、1歩ずつ、ゆっくり進みます。
このあたりからクラスト気味になり、スムーズに歩けるところ、脛まで潜るところが交互に出てきます。
さすがに暗くなり、仙丈小屋への下山ルートの選定に少し時間がかかり、
仙丈小屋に到着したのは18時半、11時間半かかりました…
当然冬季小屋には誰もいず。マイナス15℃は寒かった…
早々に食事の用意をし、ビバークレーションを1分で戻していただきます。
毎年書いているのですが、ビバークレーションは冬でこそ真価を発揮します。
今回のように標高2,900mを超えると、沸点が低くさらに酸素も平地の7割と少ないのでお湯が沸きにくいのですが、
アツアツでなくともあっという間に戻るので、アルファ米のようにお湯で戻す間に冷めてしまうようなこともなく、
おいしくいただけます。
その他には定番のミックスナッツとチータラにビーフジャーキー。どれもカチコチには凍らずおいしくいただけます。
20時過ぎには就寝、夜中は時折暴風で小屋が鳴っていました。
2日目は6時半に起床。
この日は天気が良ければ仙塩尾根、悪ければ下山と決めていました。
ゆっくりと準備をして8時過ぎに外の様子を伺うと、昨日に引き続き風が強くホワイトアウト気味。
早々に北沢峠への下山を決め出発。雪の多いトラバース道は避け、
いったん仙丈のピークを踏んでから小仙丈方面へ。
仙丈は風が強く雪も舞っていたので写真は撮らずスルー。何も見えず残念。
小仙丈への稜線も風が強く動くのがやっと。時折耐風姿勢をとりながら少しずつ降ります。
マイナス20度の風速20mは本当に寒かった…
雪もかなり積もっているのでスノーシューで脛から膝までのラッセルで時間がかかります。
小仙丈の手前あたりで下の方は少し景色が見え、薄日が射す時間もありましたが、
後ろのピークは引き続きホワイトアウト気味。
低気圧は無く、ただ強い寒気が入ったときの南アっぽい天気で、
上は風雪、空は時折雲が切れる、下はそれほど天気は悪くない、山梨側は青空もところどころ。
6合目より下の樹林帯に入ってくるとようやく風も収まりますが、今度はかなり雪が深い。
膝上ぐらいまでの下りは思ったより時間がかかります。
5合目でいったん脛ぐらいまでになりますが、4合目へのトラバースはまた膝上から腿までのラッセル。
かなり「斜め」なので慎重にトレースを固めながら進みます。
下り傾斜もそれほど急ではないので1歩1歩に時間がかかります。
長衛小屋方面への分岐からはトラバース道へ。
ここも脛から膝ぐらいまで雪があり、フラットに近いのでかなり時間がかかります。
ここでこんなに雪が積もっていたのは初めて。
なんとかかんとか北沢峠へ到着したのは14時過ぎ、まさか北沢峠までの下山で5時間半もかかるとは思わなかった…
まだ明るいのでもう少し行動したかったのと、
「これはもう今回の『縦走』は無理だな…」というのを確かめる意味でも、
2年前? にも荒天で迂回ルートを進んだ林道経由での両俣小屋方面へ進んでみることに。
林道は標高1,750mぐらいの野呂川出合までいったん下るのですが、
ここも例年よりずっと雪が多い。普段は標高1,800mぐらいまで降りるとせいぜい足首ぐらいなのですが、
今年は12月ですでに脛より少し上ぐらいまで。スノーシューでも時間がかかります。
3時間で進めたのは野呂川出合から1.5kmぐらい先のところまで。
この時点で明日はもう下山しようと決めていました。
初日のダメージが思っていたよりあり、暗くなる前に行動を終えたかったのでここでテン泊。
ラッキーなことにチョロチョロと水が流れているところがありいただきます。
このあたりは12月の南アっぽく、まだまだ水がとれるところがあります。
林道は風も強くなく、雪も時折チラつくだけで、マイナス14℃も快適なテン泊。
3日目は6時に起床。やはり寒い。
水を多めに飲み、ゆっくり準備をして8時に出発。
両俣小屋へは進まず、北沢峠へ戻ります。
林道なのですが、6割ぐらいは半日前につけたトレースがまったく無くなっていて、
膝までのラッセルを繰り返します。登り基調なので地味にキツいです。
低いところは時折写真のように青空も出たりするのですが、
すぐに雲がかかって雪がチラつき風が吹くことも。
天気予報どおり、上の方はやはり風雪のようです。
北沢峠には3時間かかって到着。時速2km。
このあたりも脛ぐらいまで。小屋も営業しておらず誰もいません。トレース無し。
大平山荘へ登山道で下り、林道がまだまだ積もっていたのでこのまま戸台へ降りることに。
八丁坂の手前あたりまではスノーシューで、八丁坂でようやく雪が少なくなりアイゼン→ツボ足に。
丹渓山荘の下のところで戸台から来たお二人のパーティーに会います。
聞けば駐車場で迷ってスノーシュー・ワカンを置いてきたとのこと…
どちらか持っていないとまず登れないということを説明すると、「ちょっと頭を整理して考えよう」ということで休憩されていました。
最終的には登らずそのまま引き返されたようです。
河原もうっすら雪が積もっていますがスノーシューはいりません。
淡々と進み、防寒着なども脱ぎながら進んでいき、半分ほど進んだところでようやく雪がなくなります。
実は2019年の台風の後、初めてこのルートを通ったのですが、その凄さがよく分かりました。
山側までかなりの部分が抉りとられ、大小さまざまな石や流れの跡があります。
以前は登山ルートらしきものがあったのですが跡形もありません。
そして堰堤の施設付近は、以前は右岸側に広い砂利道がついていたのですが、ガッサリ無くなったり崩れていました。
左岸側に移動したり、右岸側の林の中を少し迂回したりと右に左に移動しながら進むので思ったより時間がかかります。
戸台の駐車スペースは健在で、古い小屋も残っていましたが、ここまで車は入れません。
16時過ぎに到着。思ったより時間がかかりました。
後はロードを歩くだけ。ヘッデンをつけ、
仙流荘手前の車留めのゲートを抜け、ロードを歩いていると右上の方のロードからバスらしきものが降りてくる。
土日は休止になった長谷循環バスだと分かり、これはラッキーということで仙流荘から入野谷まではワープ。
最後はD+300mのロードを登って18時45分に柏木登山口に到着でした。
今回、もともと26日、27日は荒天予報だったのもあり、そもそも山に入るかどうかも、考えました。
大雪にはならない見込だったので、25日はまずは上に上がってみて、仙丈小屋で様子を見てみようと思い出発しました。
ただ、24日からの直前の雪が思ったよりも積もっており、地蔵尾根の途中の時点で「こりゃ今年は縦走は無理かも…」とも思っていました。
今まで仙丈小屋までは9時間かかったことはありましたが、さすがに11時間半となると、
その先の仙塩尾根、特に樹林帯に降りてからはとんでもないラッセルになるだろうなと思いました。
また、26日は風が強くかなり行動するのが厳しいため、大仙丈を越えて樹林帯まで安全にたどり着けるかも微妙。
予報の悪い27日も同じことになりそう。
27日まで仙丈小屋でステイして28日に再スタートしても、この雪の状況では両俣小屋や野呂川越にはたどりつけず途中のコルで1泊はマスト。
そうなってくると29日は熊ノ平にたどりつけるかも怪しい。
以前両俣小屋を朝にスタートで熊ノ平小屋到着が22時になったことがありましたが、今回はそれをも超える雪の積もりっぷり…
熊ノ平から塩見岳までの樹林帯は仙塩尾根で一番のラッセルの深さで、同じく三伏峠まではさらに2日かかりそう…
さらに30日以降も天気予報が良くなく、今年は「縦走」は無理だなぁ、としみじみ感じた3日間でした。
そして何よりも、今回に関しては両俣小屋より先に進むのが「怖い」と感じました。
普段の雪の積もり方であれば、好天を待って1日、1日半で、どこにいても下山できる感じでしたが、
今回は熊ノ平まで進んでいたとして、荒天で1日、2日閉じ込められてしまうと、
そこから下山までさらにラッセルで2日かかることも想定され、安全に下山できるという確信が持てませんでした。
この記事を書いている29日午後も南アは雪予報、明日30日、明後日31日も風雪予報、1月1日暴風雪予報…
結果的にも下山して正解だったなと、ホッとしています。
年末年始の南アは、それほど雪も多くなく、天気もまずまず安定していることが多くて、
「縦走」の可能性があると考えていたのですが、
こういう年もあるのだなぁ、とあらためて自然の凄さを感じています。
今シーズンの南アは、山梨側の好天を狙っての縦走か、
長野・静岡側の山は、ラッセル覚悟の間隙を縫ったピークハントがいいかもしれません。
綺麗な写真が無く残念なので、
次はいろいろと試せたギアのレビューと、食料の記録を書こうと思っています。
3 コメント
2021年12月24日にまさに2650メートルで折角ルートを左に折れて直登したのに、不安でトラバースにもどり、遭難仕掛けて、撤退しました‼️それ以降も大変だったんですね?
おつかれさまでした、ご無事で何よりです。
あそこは初見だと少し分かりにくいので、
地蔵尾根経験者の方と最初は一緒に行くのがオススメです。
地蔵尾根の中では一番難しい部分なのでお気をつけてください。
ありがとうございます!また、今日懲りずに多少のトレース期待でチャレンジしてきますが、なかなか2650メートル以降のルートも簡単では無さそうで(27日に行った方のGPXはスントにインポートしましたが…)で、慎重に挑んで参ります。