ひと昔前に日曜の午前中、ゴルフレッスン番組がありましたよね。今はもうないだろうな。羽振りのよさそうな社長さん(風)がゲストアマチュアというふれこみで出てきて、レッスンプロのレッスンを受けるわけです。トップの位置がどうのこうの、膝がどうのこうのと、運動そのものより、言葉によって形をつくることが多かった。で、
レッスン前
レッス後
レッスンプロ「いいですねー、意識が変わったのがよくわかります!!」(ぜってーこいつわかってないなぁ)
ゲストアマ「今度のラウンドが楽しみですwww」
そして、微妙なアイドル系のアシスタントが派手な刺繍のゴルフウエアを着て、これまた微妙なショットを打って、視聴者も安心してコマーシャルへ
自分がスキー学校でのアシスタントや、スキークラブで後輩を教えた経験から、1つの運動を説明する難しさはよくわかっているつもり。自分の言葉に対して、相手が違う動きをすることが多々あった。なるほど言葉の表面だけを忠実になぞると、そういう動きにもなるなと逆に感心したことさえある。ただ、それは本来、やってほしい動きとは懸け離れたものであり、言葉から入ることの弊害も多かった。一方で、感覚的な筋肉や関節の使い方を説明するのは難しく、自分の身体を使って少しオーバーアクション気味に表現し(少しオーバーにやりますよと言った上で)レッスンを受ける側の感性に委ねるということが多かったと思う。そうすると、形だけがそれっぽいのだけれど、感覚として身体が運動を覚えていないから、条件が変わると全くダメだったり。
理論的な言葉ではなく、感覚だけで教える究極の例がこちらの方でしょうか?
当時、阪神の掛布がスランプの時に、長嶋茂男が心配して電話をする。
長嶋「もしもし掛布君、ちょっとバットを振ってみなさい」
掛布「は、はぁ…」
長嶋「どうだい?どんな音がしてる?」
掛布「え?いや、ブンと…」
長嶋「ブンじゃまだダメだな。ブァ~ンじゃないと」
掛布「ブーンですか…」
長嶋「いやブァ~ン」
掛布「バーン」
長嶋「ブァ~ン」
掛布「ブァ~ン」
長嶋「おっ!いいぞ。さぁもう一度言ってごらん」
掛布「ブァ~ン」
長嶋「よし、これでもう大丈夫だ。それじゃあまた。」
笑い話として都市伝説的に語りつがれているが、その音を出すためには形ではなく、運動そのものが伴ってないと、当然、理想の音はでない。そしてそこに辿り着くまでの感覚はプロ選手であるなら、自分で見つけ出すしかない。また、それができるはず。逆に言えば、そこまでのレベルにない人には理解不能なものとなる。だから笑い話になるわけですね。
前置きが長くなりましたが、TEAM SOTAにおいてトラック練習と先日の青梅トレイルと2回の練習会を終えました。本当に感心するのは、その表現のわかりやすさ。米大学でコーチングを学び、さらに前職が教員ということもあり、理論的な言葉と、感覚的な表現の双方向からのアプローチがあり、さらに自分の身体を使って表現し、視覚的アプローチを試みる。セミナーの中ですでに変わり始めている方がいらっしゃるのがよくわかる。私自身も、視覚的なものを参考に、形から入ることをやってみた。壮太さんの後ろを走り、形から真似をしてみたら、あれま、感覚的なところまでおまけで付いてきてしまった。これは、視覚的な形だけでなく、事前に壮太さんから、感覚的な表現や、言葉という理論的なアプローチの両方があったからだと思う。どちらか一方が欠けると、ゴルフの社長さんや、長嶋的な天才指導になってしまうのではないだろうか。これまで、トレイルランニングの創世記を担ってきた石川さんや鏑木さんのセミナーもそれぞれに特徴があり、個性的なものでしたが、小川壮太さんは、この分野で自分の特徴を生かして確固たるものを築ける予感がしています。ロードランニングとトレイルランニング、そして山岳スキーの国体選手としてのご経験から、これまでにないマルチなプロ選手、そしてコーチとしてのご活躍をお祈りしております。次回が楽しみでなりません。