前回は大きな世の中の変化とか、私たちの気持ちといった漠然とした事をつらつら書いてみたが、今回は具体的にトレイルランナーが直面しそうな変化を書き残しておこうと思う。
1. 登山道は誰かが整備しなければ荒廃していく。
昨年の台風の爪痕がまだ修復できていないところが多い。予算が十分あった地域のトレイルは早く修復工事が行われたところもあったが、大半はそのままのところが多い。近郊の里山であれば、所有者、管理者が複雑に絡み合い、ボランティアベースの善意では手を出せないところもある。レースが開催される云々以前の問題として、登山道はだれかが整備、維持しているということを忘れてはならない。都道府県をまたぐ移動が制限されることが続くと予想され、ローカルコミュニティーが主体となった整備に過度な負担もかけられないという現実は知っておいてほしい。また、地方自治体はコロナ対策で厳しい財政に直面し、登山道、森林整備といったところまで予算が配分されるだろうか。自分は、都道府県を超えた移動が可能になった際にはトレイル整備に参加しようと思う。
2. 国際レース、大規模レースの中止と、ショートからミドルレンジ、小規模ローカルレースの再評価
ワクチンの開発、製造が進み、以前の生活様式が取り戻せるには時間がかかるのは報道で伝えられているとおりだ。先進国ではある程度早い時期に、日本で例えるなら都道府県をまたいで移動するようなレースが行われるようになるかもしれないが、航空機で移動し、各国の検疫をパスしてランナーが集まる国際レースは来年夏までは無理と考えるのが自然ではないだろうか。来年夏にできたとしても、航空運賃は数倍に跳ね上がり、かなり贅沢なものになる可能性がある。来年夏に東京でオリンピックを開催することは壮大、且つ世界が協力し合わなければならないチャレンジであるはずだ。少なくても現在のように大国同士でいがみ合っているようでは…
一方で、数百人規模でローカルコミュニティーが主体となるレースを再評価してみてはいかがだろうか?日本ではUTMFを始めとする大規模、かつ長距離レースに焦点が集まり、気軽な小〜中規模レースが少ないのが現実である。アメリカのような数百人規模で収支採算がとれるようなシンプルな運営と安全の確保、そこでレースを走ることのできる喜びをランナーは感じられるはずだ。ハセツネ、UTMFだけがレースではない。ロードランナーであれば、地域で行われる月例マラソンや、トラック競技会への参加も比較的早い時期に可能なはずだ。
3. ウエーブスタートの導入
走っている状況が密なのではなく(ハセツネは十分密だが)、集合、待機場所が同じタイムテーブルで動けば当然密になる。アメリカで今年夏に開催を模索しているトレイルランニングレースはウエーブスタートの導入を表明している。それぞれ車で来て、チップつけて走って、表彰式はないが、家に帰ってZOOMで美味しいクラフトビールを仲間と飲もというのも悪くなさそうだ。
ハセツネが変わる最後のチャンスではないでしょうか?数十人のエリートクラスを設定して、そこはガチンコ一斉スタート、あとは事前指定時間のウエーブスタート。ボランティアの負担を考慮すれば、最初のスタートから24時間は超えられないであろうから、実質ネットの制限時間が短くなるランナーはそれを目標に頑張るしかない。それも運として受け容れる心のあり方が、箱物競技で担保される完全なる公平性とは異なるアウトドアスポーツを長く続けるコツでもあるはずだ。
ポスト・コロナは来ないという論調をよく見かける。ニュースタンダード(日本政府が言う新しい生活様式?)の中で、山を走るという単純なトレイルランニングの喜びという原点に帰り、レースではない週末のアクティビティに喜びを見つけ出し、長くトレイルランニングを続けることもお勧めしたい。それではみなさん、Stay healthy !