MT.FABs×MMA interview vol.1

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今季、初コラボレーションが実現したMT.FABs(Mountain Fabrications in Tokyo)とMMA。トレイルランニングとウルトラライトハイク(以下、UL)という2つのカテゴリーを自在に行き来する4アイテムが登場した。

MMAファンの中には、初めてULスピリッツに触れる方もいるかもしれない。MT.FABsファンにとっても、遊び心に溢れたMMAの世界を体感するまたとない機会となるだろう。

2つのブランドが出会うことで生まれる、たったひとつの世界観。機能的かつ自由度の高いアイテムたちは、わたしたちの気分をいやがうえでも高めてくれる。手にした途端、目の前に新しい道がいくつも開けていく。「自分なら、どう使い倒すか」を探る旅の始まりだ。
 

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MT.FABsは新世代の独立系アウトドアガレージメーカーが集うオープンファクトリー。5月のある日、今回のコラボレーションの裏話をうかがうべく、「WANDERLUST EQUIPMENT」の粟津創さんと「OGAWAND」の小川隆行さんに会いに行った。
 

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— トレイルランナーの中には、MT.FABsの名前を初めて目にするという方もいらっしゃると思います。それぞれのブランドの成り立ちと、お二人の出会いについて教えていただけますか。

小川:僕はもともとアウトドアの既製品に満足できなくて、道具を改造していたのです。そんな中、知人のつてで、一般では手に入りにくい素材が手に入るようになって、自分で一からものをつくるようになりました。2011年の冬頃のことですね。当時は、道具を自作する人が一気に増えた時期で、自然にSNSでの繋がりが生まれて、情報交換をするようになりました。三鷹の「ハイカーズデポ(ULの専門店)」の土屋さんと交流するようになったのも、この頃です。ショップで開催されるMYOG(ミョグ=アウトドアのギアを自作すること)をテーマにしたパーティで、つくったものを発表していました。

流れとしては、ズボンの裾上げに始まって、次第にザックをつくるようになっていった感じです。当初は世の中に発表すること自体が目的で、売ることについてはあまり考えていなかったのですが、欲しいといってくれる人が増えてきたことから、2013年秋にOGAWANDを立ち上げました。

— OGAWANDをひと言で表現すると、どのようなブランドといえるでしょうか。

小川:そうですね、 “ありそうでなかったもの” をつくるということかな。既製品を手に取って「もう一歩、ここがこうだったらいいのに」とか「なんで、こういうものをつくらないのだろう」と思ったことを、そのままかたちにしています。ですから「こんなものが欲しかった」と言ってくださる方が、結構、多いですよ。

たとえば『Round Stuff』という製品。普通、巾着袋は縦長にできていますが、アウトドア用品を入れる際にはもっと中身が見やすい方がいいですよね。それでラウンド型にしました。ULのリュックは全体的に柔らかいものが多いので、綺麗にパッキングしないと背負いにくい。細長いスタッフバッグだと、どうしてもデッドスペースが出来てしまうのですが、平たいスタッフバッグだと重ねたり、隙間に入れたりとパッキングしやすいのです。

— ご自身で体感されたことを、ものづくりにフィードバックしているわけですね。

小川:フィールドで気づいたことを、そのまま製品に落とし込むという意識を大切にしています。そうすることで、より多くの方に共感してもらえる気がするからです。一般の方は山で「これ不便だな」と思っても家に帰ってくるとけっこう忘れてしまいがちですよね。ところが僕は細かいストレスに弱いので、覚えているんですね(笑)。

そうしたストレスを一つひとつつぶしていくと、OGAWANDらしくなっていく。今回、MMAとコラボレーションした『Wrap Sack』もそのひとつ。自分が肩がけのポーチが苦手なので、腰に巻くタイプのサコッシュをつくりました。

— 普段はどんな山遊びを楽しんでいらっしゃいますか。

小川:僕はひとつのカテゴリーにどっぷりはまるようなコアなタイプではないので、ざっくりいうと“ハイカー”なんですね。釣りや沢登り、クライミングもやります。自然を感じることができれば、場所はどこでもいい。あえて挙げれば、自然が濃いところが好きかな。百名山など一般登山道ももちろん好きですし、訪れた場所それぞれでいいところを見つけられるので、場所にはこだわりません。

粟津:彼は元ワンダーフォーゲル部なので、その延長で山に行っている感じなのですよ。
 

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— 続いて、WANDERLUST EQUIPMENTの成り立ちについてうかがえますか。まず自分でギアを作るようになったのはどういう経緯ですか?

粟津:僕は昔から冬山が好きでよく行っていました。登山用品店に行って、勧められるままに道具を購入していくと、とんでもなく重くなっていくわけです。かつてはそれくらい重いザックを背負えない奴は冬山に行く資格がない、という暗黙の了解のようなものがあったのでしょうね。でも、もっと軽量化できるはずだと思いました。それで、軽量化や自作をするようになったのです。

— 冬山以外ではどんな山行を?

粟津:クライミングや沢登りなどトレイルを外れるものが多いかな。山を歩いていて集団に出会うのも好きではないし、決められた道を歩くよりも自由なところへ行きたい気持ちが強いような気がします。

— 道具をULスタイルへと変化させていく際、何かヒントにしたものはありましたか。

粟津:海外のULサイトはよく見ていましたね。軽いバッグパックを使ったり、シュラフじゃなくて背面と頭部を省略したキルトをスリーピングバッグとして使ったりといった軽量化の考え方やアプローチ方法を知りました。1990年代に登場したアメリカのULは、本来、ロングトレイルを歩くためのメソッド。1ヶ月くらいかけて長いトレイルを歩くためには食料をたくさん背負わなければなりませんから、それ以外のギアの重量を抑えるというのが基本的な考え方です。

でもそれだと、僕がやっているような週末にちょっとだけハードコアな山に行くというスタイルとは方法論が異なります。日本には何ヶ月もかけて歩くロングトレイルはありません。だから自分の目的に合うギアと合わないギアが出てきていました。例えば、冬山登山にULで行くという発想はそもそも存在していなかったので、スリーピングバッグを軽量化するには自分でつくるしか方法がなかったのです。

— ギアづくりからブランド立ち上げまでは、どのような経緯だったのでしょうか。

粟津:僕も当初は自分で使うためにつくっていたのですが、徐々にバックパックやサコッシュを欲しいという人が出てきました。それで、どうせ人にお渡ししてもいいクオリティに仕上げるのなら他の欲しいという人にも販売してみたらどうだろうかとWebショップを立ち上げました。開業費用がほとんどかからないくらいのスモールスタートでしたね。
 

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— お二人でMT.FABsをオープンしたのはなぜですか。

粟津:僕の場合、プロダクトの売れ行きが順調に伸びていき、どうにも自宅では収まりきらなくなってきていたので、作業スペースが必要でした。誰かとシェアできれば家賃も抑えられるし、いいかなと考えたのがきっかけですね。

小川:僕は作業スペースには困っていなかったのですが、Webサイトだけではザックなどの製品を体感してもらえないことが課題としてありました。まだ取扱いショップも少なかったので、実物を背負ってもらえる場所が欲しかった。それで彼と一緒にやろうかなと考えました。

— 最初から作業スペースと、実物を手にとれるスペースを兼ね備えた場づくりを目指していらしたわけですね。オープンが「水曜日と木曜日の16時〜21時」となっていますが、これは?

粟津:この時間は必ずいますよ、という意味です。それ以外の時間でも基本的には作業や通販の対応をしているので来客があれば対応しています。
 

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— ショップをオープンしてみて、反応はいかがでしたか。

粟津:既存のものに満足していなくて試行錯誤されてるような方が多くいらっしゃってるかなという印象です。そのような人にはこういうものがあるよと伝えられるし、その反応もダイレクトに返ってくる。

小川:よく「別の世界を見たような気がします」と言われますね。

山に入るにあたって、こういったアプローチもあるということを遠回りせずに伝えられる、それがこの場所の意味かなと思っています。いろんな選択肢を提示してあげて、その中から自由にお客さまに選んでもらいたい。もちろん既存のものを買うのもいいと思いますよ。それはユーザーの自由ですから。ただ無駄な時間とお金を使わせたくないなという気持ちが、なんとなくあります。

二人とも、やりたいことを少ない道具で実現させるために製品をつくっている。ある意味、常にファイナルアンサーが欲しいということなのかもしれませんね。ULってなんとなくムーブメントのひとつみたいになっていますが、本当のところは手段のひとつなのです。

既存のメーカーでも軽量なものが出てきましたし、雑誌などから得られる情報も充実してきました。あらゆるものがテーブルの上に並んで、ユーザーがチョイスできることが一番大切。だから、こうしてULが少しずつ広まってきたことは、すごくいい状態だなと感じています。
 

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— どのようなお客さまが多いですか。

小川:いまは、一般の山好きの方が買ってくれているなという印象ですね。ファッションとしてULを使っているのではなくて、ちゃんと必要だから選択してくれているというか。いわゆる山屋といわれている人たち、これまで道具にはそこまでこだわってこなかった人たちも来てくれています。

粟津:山屋さんたちは道具にこだわっているからこそ、ここに来てくれるのだろうと思いますよ。よく「ULはファッション」みたいに言われますけど、流行に乗って「とりあえず全身ウルトラライトで揃えてしまおう」というような人は実際にはあまり見かけませんね。みな目的にあった手段を真剣に考えていて情報を辿ってここに来ているようです。本格的に山を始めたいというトレイルランナーも、少しずつ増えています。

小川:このオープンファクトリーには、トレイルランニングの専門ガレージブランド『ANSWER4』も入っているので、『ANSWER4』を見に来た人がほかの製品にも興味を示して購入していくとうケースもあります。
 

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— ではそろそろ、今日のメインテーマであるMMAとのコラボレーションについてお聞きしたいのですが。

渋井:今回のコラボレーションは、僕のほうからお二人にお願いしました。話すと長いですけれど、いいですか(笑)。お二人との出会いは、共通の友だちがいて、UL系のギアを作っているブランドがあるので行きませんかと誘われたのがきっかけです。この場所がオープンしてすぐの頃、2014年の冬ですね。もう最初から、何かご一緒したいという気持ちでいっぱいでした。

— その訳は?

渋井:僕自身、トレイルランニングにたまたま出会ったことがきっかけで、登山を始めました。トレイルランニングはいま、ますます広がりを見せていて、ランナー人口も増えていますが、せっかく山を知ったのに走っているだけではもったいない気がしていたのです。それで、僕らに山への新しい扉を開いてくださる方たちと何かご一緒できないかと考えました。

昨年、北アルプスへ登った際にザックの重さが身体にこたえることを実感したので、自分が山に登る時にも使えるようなULのザックや小物をつくりたいなと思ったわけです。僕らトレイルランナーも、もっと広く山を楽しめるようになれればいいなという想いがあります。
 

to be continued

interview / report: Yumiko Chiba (GRANNOTE)