買い物はスマートフォン、車は電気で動き、自動運転になる日も遠くないだろう。世の中は急速に進歩しているのに、洋服はその流れについていけていない。欲しいのはアップデートした素材を使い、今のライフスタイルにフィットした洋服。
きっかけは旅だった。前と後ろに2つづつしかポケットがついていないパンツは、長時間座っている飛行機の旅にはまったく不向きだった。ヒップポケットは使えない。パスポートも入れる場所がない。そこで2018年に8つのポケットを備えたパンツとショーツを作った。
スマートフォン
財布
小銭入れ
ハンカチ
鍵
山に行くならトレッキングマップや補給食。
海外に行くならパスポート。
常に携帯しておきたいものを収納でき、手ぶらで行動できるパンツ。背中の三連ポケットはトレイルランニングでの経験から生まれた。体の芯に近い位置のポケットは揺れにくい。ウエストのウェビングベルトは空港の金属探知機にベルトが反応してしまうことを避けられる。ひとつ手間と荷物が減るのだ。
ディティールや素材など毎シーズンアップデートを続け、いまは9つのポケット。サイドポケットは右に縦長ポケット×2、左に大容量ポケット+小型ポケットのアシンメトリーで、座っていても出し入れしやすいように斜めに配置した。大容量ポケットには帽子や文庫本も入れることができる。
素材は吸水速乾とUVカット機能を備えたCOOLMAX。軽量で乾きやすいというのは、キャンプや旅、ハイク時にメリットとなる。かさばらないし、洗っても乾きが早い。そしてシワになりにくいので、街で履いていてもラフさを感じることはない。ウエストにはタックを入れ、ゆとりのあるシルエットがリラックスした着用感につながる。
すべて街や山、旅先での経験に基づいて考え、見掛け倒しではなく実際に使えるディティールを追求した。これがMOUNTAIN MARTIAL ARTSの考える今の洋服。
MOUNTAIN MARTIAL ARTS director
渋井 勇一