上州武尊山スカイビュ-・ウルトラトレイルにボランティアとして参加してきました。業務はスイーパー、「岩の経験あります」って言ったものだから120km川場村山田昇メモリアルカップカの山岳パート、核心部分を担当することに。
スイ-パ-は基本として、選手の行動によくも悪くも影響を与えてはいけない。後ろからの足音がプレッシャ-にならないように10mほどの間隔をあけて走り(歩き)ます。ただ、選手がふらついていたり、怪我、故障がある場合は、安全の確保のために、並走したり、複数で前後を挟んで次のリタイアポイントまで誘導します。この10mの間隔にいくつものドラマを見た気がします。いや、私が勝手に想像をしているだけかもしれませんが、編集者によって切り取られたDVDよりも、レ-スの全貌と後方選手たちの頑張る姿を見ていたと思います。
救護にあたった選手
前半の剣ヶ峰で転倒、負傷した選手に付き添い、自分のレ-スは捨てて下山した選手がいた。救護スタッフの誘導や、私に引き継ぐことで、レ-スに復帰する選択肢もあったはずだが、念のためと付き添っていた。私のショ-ツに入っていた、すぽるちばのロゴをみてSさんによろしくお伝えくださいと会釈して下山していった。ご自分の体調もすぐれなかったことを後日聞いたが、しっかりした若いランナ-だった。ネット上ではランナ-のマナ-が指摘されているが、ネガティブな部分だけが切り取られ事実関係の確認が行われる前に、伝わり方の配慮もなく、ものすごいスピ-ドで拡散されるネット社会の怖さも感じたが、こうした模範となるランナ-がたくさんいることもぜひ知ってほしい。
引き返す選手たち
47km地点 の関門手前で引き返してくる選手が数名いた。その中にたまたま私の知人もいたのですが、彼らの判断を最大限リスペクトしたい。自分の現在の体調、気候といった条件下で、あと何百m登るのに何分かかるのかということを、きちんと計算できる選手たちということ。立派な岳人です。この120kmはアルパインクライマ-山田昇メモリアルアルカップであることを忘れてはならないと思う。レ-スでは救護、サポ-ト体制があるが故に、少しだけわがままを許されるのは事実だ。ただ、通常の山行、ましてやソロの場合、この計算ができないと大きな事故につながる。また同じことを書いてしまうが、やはり完走を美学として感動を売り物にするDVDやタレントを走らせるテレビ番組は嫌いだ。DNFでもいい。山は逃げない。そこにずっとある。また登ればいいじゃないか。
奮闘する選手たち
逆に自分の力を見誤り、山頂付近で大きくペ-スダウンしてしまうランナ-もいた。ただ、彼らを責めることはできない。頑張れっていうこともできない。だって誰がどう見ても頑張っているから。ただ見守るだけ。最後に群馬県山岳連盟の方々に誘導を引き継いだ女性ランナ-は「すいません」と謝っていたが、謝ることはなにもないんだよ。別れ際に、「ナイストライ、(山を、トレランを)嫌いにならないでね」って言ったけど私の真意は伝わっただろうか。
緩やかな連帯感
レ-スはまさしく生き物で、刻一刻と状況が変化する。自分も想定よりもかなり長い時間を走り(歩き)続けていたこともあり、本部の柔軟な判断で、深夜の2時間ほどのパ-トをTJAR完走者とPTL完走者のコンビに交代していただいた。それはもう頼もしい限りです。今回のスイ-パ-陣は車の移動を担当された方々も含めて、緩やかな連帯感を感じていた。すぽるちばのチ-ムメンバ-はもちろんだが、公募で参加された方々も、難コ-スであれば、なおさら自分がやらなければならないという気概のようなものを持っていたのだと思う。
Welcome to Ultra Trail !
後半の林道部分も担当したのですが、最後尾とはいえ、一晩を超えて、関門を通過してきている選手はやはり強い。10m後方から「すごいよ、あんたらすごいよ」と何度も心の中でつぶやく。油断すると、おいていかれるペ-スの時もある。人間の力ってすごいなと改めて思う。私の知人の何人かが初100km越えのUltra Trailを完走した。Welcome to Ultra Trail World !! (まあ、変態ワ-ルドとも言うね) 自分の区間で最後尾にいたランナ-が少し順位をあげて、ゴ-ルゲ-トをくぐった。そこでやっと自分のスイ-パ-業務が終了したと感じることができた。担当区間の終了が業務終了ではなく、彼らが安全にゴ-ルまで戻って初めて終了したことになる。お疲れ、俺、じゃなかった(笑)選手たち。
これからのこと、たぶん。
帰宅すると、先日受講したWFA(ウイルダネスファストエイド)の認定書が届いていた。今回、体調不良のランナ-を見ても、落ち着いて対応できたのは、この受講のおかげでもある。これからは自分が走るだけでなく、レースのお手伝いにも携わっていくのだろうなと、ぼんやりと自覚した。また、ネット上では運営に対する批判もある。自分も感じた点はフィ-ドバックとして書面にし、実行委員会にお渡しする予定です。そういったものもエネルギ-に替えて、来年以降もよりよい形で開催することを願ってやみません。武尊の山々はとても美しかったです。その事実は変わらない、変えられない。誰がなんと言おうと。