Pod Cast、 You Tubeといった音声、映像コンテンツが大人気だ。私も長い時間ジョグする時、通勤ランの時はポッキャスを聴いている。ブログに目を通す人がどれぐらいいらっしゃるのかわからないが、自分のブログが有名You tuber や人気ポッドキャストと異なるのは、走力的にアベレージであること、そのアベレージなランナーが歳を重ねた時、走り続ける事ができるだろうか?という問いに、答えにもならない答えを書き綴る事はできる。未だ続くコロナ禍の中で、仕事環境が変わったり、メジャーレース中止が相次ぎ目標を失った方も多いのではないだろうか。
11月に2年ぶりのトレランレースとなる甲州アルプスオートルートチャレンジのリリィルートチャレンジを走った。特徴あるレースなので、レース紹介ともに、自分が走った動機と今の心境を備忘録として記しておく。
2017年にアメリカでの200マイルレースを終えてから、仕事環境が変わり、トレイルランニングレースからは足が遠のきながらも、なんとかエントリー、そして完走できたのが2019年の甲州アルプス、リリィルートだった。正直、トレーニング不足とはいえ自分の脚が50kmで終わるはずがない、気持ちよく走ってレース再開へのきっかけとなればいいと考えていた。ところが序盤の登りで脚は攣るわ、中盤以降の下りでは全く走れず、終盤では大腿四頭筋の痛みで、下りで立ち止まってしまった。完走はしたものの、心理的に不完全燃焼のレースとなった。甲州アルプスは正式開催以前に、試走で看板レースのオートルート(68.8km D+4,130m) を走り、シュミレーターとして手伝わせていただいたり、正式開催後もボランティアとして参加していた。これからも選手として、あるいはボランティアとして何かしら関わっていきたいと思う。だからこそ、前回のリリィルートのイメージを払拭したい思いがあった。
<リリィルートチャレンジコースプロファイル>
53.9km D+3,010m ITRA Point 3、Mountain Points 7
距離の割にD+がしっかりあるが、感覚的にはその数字以上だ。紅葉、落ち葉のフカフカトレイルだけでなく、甲州アルプスの堅く乾いた尾根、テクニカルな岩稜の登り、海外のような長ーい登りと長ーい下りがランナーの脚を痛めつける。ハセツネの細かいアップダウンとは全く違うタイプの山岳耐久レースだ。ウエブサイトにはトレイルランニングレースではなく、山岳耐久レースとして自らを位置付けている。レースディレクターの小川壮太選手がヨーロッパで活躍できるのも、こういった環境背景があるからだと思う。
<ポールの使用が可能> 日本のレースではポールの使用が可能なレースが減ってきているが、ヨーロッパ、あるいはアメリカでも北西部のオレゴン州、ワシントン州のロングレースを目指すのであれば、ポールを使ったランニングの実践経験となる。
<完走率> 2021年、今年の完走率は82%、ただし、2019年は66% 、男子50歳以上にいたっては49%と半分以下である。これは今年度はスタート時間を早くし、制限時間を伸ばしたことで、バランスのよい関門設定が可能になったからだろう。またこの完走率の低さから自信のないランナーが敬遠した、あるいは2019年当時はまだUTMF、UTMBの参加資格になっていたITRA ポイントを稼ぎたいランナーが、試走やプランニングを十分にせずに走ったからだろうと推測できる。
<渋滞無し>多少パックで登ることはあるが、渋滞のない魅力は大きい。人数、序盤のコースレイアウト、両方に工夫があり渋滞は皆無。渋滞を意識して、スタートから突っ込むようなレースはもういい。他のレース主催者もウエーブスタートの採用や、序盤のロードを長くしてでも、積極的な渋滞緩和を行ってほしい。
<構成>
序盤、スタート直後、公園遊歩道とロードで6.5km、運動公園裏山のアップダウンと、トレイルヘッドまでのロードがある。自分は舗装の下りは細かいピッチで走り、できるだけ脚を使わない工夫をしながらも気持ちよく走る。
前半-1、源次郎岳までの長い登り、最後の急登はワールドクラス、途中切れ落ちている個所もあり、足場注意。大会開催前の試走では、復路もこの部分を使ったが、「ここを下りで使用するのは危険かも」と小川壮太さんに話した記憶がある。だからだろうか、復路は手前で一旦降下し、登り返して危険個所を回避するルートで開催されるようになったのかもしれない。つらい後半の登り返しは俺のせい?
前半-2、上日川エイド(20km地点)までの下り基調、小さなアップダウンを繰り返しながら、しらかんばと笹原の走れるトレイルがしばらく続く。源次郎岳をすぎるとパックもばらけるので、気持ちよく走れる。
前半-3、狼平までの天狗の抜け道、一般登山地図には記載なし。ゴロゴロとした岩の登り、登山用語でいう「ゴーロ」である。明確な道ではないためリボンでマーキングしてある。
中盤-1 、最高地点、小金沢山(2,014m、秀麗富岳12景)までは、高低図では大きな登り下りはなく、イージー区間に見えるが、苔むす岩のトレイルで、スピードは上がらず時間がかかる。
中盤-2 、絶景の富士山と気持ちの良い笹原、牛奥ノ雁ヶ腹摺山(うしおくのがんがはらすりやま)で、オートルートチャレンジのコースと分岐する。雁が腹をすりながら飛んでいくように見える意味が由来らしい。
中盤-3 、すずらんエイドまでの長い下り。2019年はここで飛ばしすぎて大腿四頭筋が終了した。すずらんエイドにトイレあり。ここのペンションすずらんはプライベートで泊まってもアットホームなよい宿です。
中盤-4、深沢エイドまではロードの登り、上位選手は走れるだろう。ほどなくエイドに到着すると、シャインマスカットが食べ放題という名物エイドがある。
終盤-1、ここから、一旦沢まで降下、そして往路で使用した尾根まで登り返す。沢には水があり、美しい広葉樹林が広がる。熊さんが多いというのも納得できる。
終盤-2、登り返した尾根から、塩山フルーツライン(今年のエイド位置)まで下る。長く急な下りもあり、四頭筋をやられてしまうとこの下りがつらい。制限時間ギリギリの選手はこのエイドでライトを装着してしまうのがよいと思う。
終盤-3、もう一度往路で使った尾根(恩若ノ峰)まで登り返す。この登りが精神的にきつく、登っていると尾根線のように空が見えるが、そこは尾根ではなく、また登りが始まる、といったことを数回繰り返す。恩若ノ峰からはまた塩山フルーツラインまで一気に下る。
最後、ロード4km 、ゆるやかに登ったり下ったりのロード、ここを走れるか、歩くかでレースの後味が大きく変わる。後方の選手でもここは走ろう。
さて、今年の自分はどうだったか。2019年よりは、下りを丁寧に脚を温存した分、最後のロードもゆっくりだが全部走ることはできた。2019年より16分ほど早く、ヘッドライトをつける前にゴールすることもできた。だが、やはり山での練習が不足しており、上記終盤-2の下りでは後方からの選手に譲りっぱなしとなった。基本的な有酸素能力は街中のロードでもトレーニングできるが、こういった山岳耐久レースに対応できるような脚づくりはやはり別物だと改めて感じる。たとえ100マイルレースや、海外レースのエントリーできる環境でなくても、こういった本格的な国内のミドル(50Km/50Mile)を目的をもって走り続けたい。 The mountains are calling ( and I must go) というフレーズはアメリカの環境保護活動家、John Muirのコラムをまとめた本のタイトルなのですが、山々が呼んでいると感じたならば、やはり私は行きたい。そう思うのです。